検証レポート!Coherent社のハイパワー版400G-ZR+でどこまで飛ばせるのか?

Coherent社(旧II-VI社)から、400G-ZR/ZR+の光トランシーバーモジュールがリリースされました。一般的な400G-ZR/ZR+の製品は、シリコンフォトニクスでの製造を考慮され、光の送信パワーは-10dBmと低めに設定されていますが、Coherent社の400G-ZR/ZR+は違います。光の送信パワーが0dBm程度まで出力でき、通常の製品と比較し高出力であるため「ハイパワー版400G-ZR/ZR+」と本記事では記載します。Coherent社製は、アンプを使わなくてもより遠くまで飛ばせること、大きい光入力パワーを要求するROADMに直接つなぐことができること、がメリットとして挙げられます。

 

今回は、このCoherent社「ハイパワー版400G-ZR+」を使ってどこまでの距離を飛ばせるのか社内で実験した様子をご紹介します。尚、本記事の内容は動画での解説もご用意しており、記事末尾の簡単なフォーム入力でご覧いただけますので、是非併せてご覧ください。

 

結論はズバリ、以下の通りになりました。

・80kmのベアファイバーを使った1対1通信を確認したところ、エラーフリーで通信可能でした

・簡易的なアンプを使ったWDM通信で確認したところ、ベアファイバーであれば192kmまで、ダークファイバーであれば77kmまでエラーフリーで通信可能でした

 

それでは、詳細な実験結果をご紹介します。

1.80kmのベアファイバーで1対1通信できるのか?

Coherent社ハイパワー版400G-ZR+光トランシーバーモジュールの送信と受信を、80kmのベアファイバーでループバックさせて、エラーフリーで通信できるかを確認しました。

1.1 測定系

図1-1 測定系
図1-1 測定系

ハイパワー版400G-ZR+光トランシーバーモジュールから送信された光信号は、80kmのベアファイバーを通って、光トランシーバーモジュールの受信に返ってきます。この80kmのベアファイバーの損失は、15.6dBでした。

  

ハイパワー版400G-ZR+光トランシーバーモジュールはCoherent社の評価ボードに搭載されていて、この評価ボードは、専用のGUIがインストールされたPCとUSBケーブルでつながっています。

GUIでは、光トランシーバーモジュールから送信する光信号の制御や、受信した光信号の解析が可能です。

図1-2 測定に使用した機器
図1-2 測定に使用した機器

1.2 測定結果

図1-3 実測結果
図1-3 実測結果

GUIに出ている解析結果を見てみると、Pre-FEC BER = 2.07E-04、Post-FEC BER = 0、つまりエラーフリーとなりました。

 

PreFEC-BERというのは、エラー訂正する前のビットエラーレートのことです。また、PostFEC-BERは、エラー訂正後のビットエラーレートのことで、0はエラーが無いことを示しています。

  

400G-ZR+では、O-FECというエラー訂正をおこなっており、FECリミットは2E-02、つまり0.02と決まっています。このFECリミットを超えると、エラー訂正ができなくなってリンクが不安定になり、場合によってはリンクが切れてしまいます。

  

今回測定の結果、Pre-FEC BER = 2.07E-04は0.000207ですので、FECリミットの0.02に対してはまだ、2桁くらいの余裕がある結果となりました。

1.3まとめ

80kmのベアファイバーを使った1対1通信で、エラーフリーで通信できることを確認できました。さらに、FECリミットまでまだまだ余裕があることが分かりました。

 

2.光アンプを使ったWDM通信でどれだけ飛ぶのか?

先ほどは、Coherent社ハイパワー版400G-ZR+光トランシーバーの送信と受信を、80kmのベアファイバーでループバックさせていました。これをWDMの構成にして、さらに光アンプを足してどこまで飛ばせるかを検証しました。

2.1 測定系

図2-1測定系
図2-1測定系

ハイパワー版400G-ZR+光トランシーバーモジュールから送信された光信号は、波長多重のためのMuxを通り、Booster Ampで増幅されます。このアンプの増幅率は10dBです。

 

なお、Booster Ampともう一つのPre Ampは、QSFPモジュールタイプの簡易的な光アンプを使っています。そのため、一般的なラック型の光アンプよりも増幅率が小さいです。

 

増幅された光信号は80kmのベアファイバーを通り、光アッテネーターでさらに減衰されます。

この光アッテネーターの減衰量を徐々に増やしていき、どこでリンクが切れるのかを調べます。これにより、ファイバーのロスをどこまで増やせるかが分かります。

その後Pre-Ampでもう一度増幅されます。このアンプの増幅率は17dBです。

 

最後に波長多重した信号を分離するためのDeMuxを通って、光トランシーバーモジュールの受信に返ってきます。

図2-2 実際に測定したときの様子
図2-2 実際に測定したときの様子

2.2 測定結果

図2-3 測定結果 リンクが切れる手前のビットエラーレート
図2-3 測定結果 リンクが切れる手前のビットエラーレート

光アッテネーターの減衰量を上げていくと、ビットエラーレートが劣化していきます。より具体的には、OSNRが劣化していくことにより、ビットエラーレートが劣化していきます。

 

図2-3は、そのOSNRの耐力がほぼ限界になって、リンクが切れる少し前になったときの、ビットエラーレートです。Pre FEC BER、つまりエラー訂正前のビットエラーレートは、1.614E-02、つまり0.01614となっています。

これは、FECリミットの0.02までかなり近づいている、と言えます。Post FEC BER、つまりエラー訂正後のビットエラーレートは、ぎりぎりエラーフリーとなっています。

  

そして、この時の光アッテネーターの減衰量は22.8dBでした。

図2-4 リンクが切れる手前のアッテネーターの値
図2-4 リンクが切れる手前のアッテネーターの値

光ファイバーの減衰量が、15.6dBだったので、15.6+22.8で、合わせて38.4dBの損失まで、エラーフリーをキープできていることが分かります。

 

これ以上損失を増やすと、Post FEC BER、つまり、エラー訂正後のビットエラーレートがゼロでなくなります。つまりエラー訂正した後でもビットエラーが発生してしまいます。

そうすると、リンクが不安定になっていき、どこかでリンクダウンしてしまいます。

 

ベアファイバーの損失は、およそ1kmあたり0.2dBですので、この38.4dBというのは、ベアファイバーの長さで192kmに相当します。ダークファイバーの場合、1kmあたりの損失を0.5dBとすると、77kmまで飛ばせることになります。

2.3 まとめ

簡易的な光アンプを使った実験で、ベアファイバーなら192km、ダークファイバー[*]なら77kmまで飛ばせることが分かりました。

[*] 1kmあたりの損失を0.5dBとした場合

本記事のまとめ

Coherent社「ハイパワー版400G-ZR+」を使ってどこまでの距離を飛ばせるのか、実力を知るために2つの検証をおこないました。

1つ目の検証である80kmのベアファイバーを使った1対1通信では、エラーフリーで通信できることを確認しました。Pre-FEC BERにも余裕があるので、さらに長距離を飛ばすことが可能です。

  

WDM構成で光アンプを使った2つ目の検証では、1kmあたり0.2dBのベアファイバーであれば、192kmまで飛ばせることが分かりました。また、この結果は1kmあたり0.5dBのダークファイバーであれば、77kmまで飛ばせるということになります。

  

表3-1 飛ばせる距離の検証結果まとめ

検証条件

ハイパワー版400G-ZR+における検証結果

光アンプなし ベアファイバー 問題なく80km飛ばせることを確認

光アンプあり

ベアファイバー 192km問題なく飛ばせる
ダークファイバ― 77km問題なく飛ばせる

今回はZR+にフォーカスし検証をおこないました。ZR+は消費電力が大きく、対応できる装置をお持ちでない場合もあるかと思います。Coherent社はより消費電力を抑えて使用できるZRも取り揃えております。そんなZRの性能については、次回の記事で解説します。

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