人やモノの動きを検知するマイクロ波センサー
マイクロ波センサーは、赤外線センサーの課題を克服するセンサーです。さまざまなシーンでの活用を可能にします。赤外線センサーではできなかった長距離の検知や、熱を発しない動体の検知、カメラのような見た目の問題もクリアし、温度変化のある環境でも使用できます。また、ソフトウェア(パラメーターの設定)での精度の調整が可能なため、用途に応じてさまざまなカスタマイズが手軽にできます。
穴あけ不要!温度の影響なし!メンテナンス不要!
[利用シーン] 高天井、自動ドア、トイレ、キッチン、玄関灯、防犯灯・街灯、線路脇や道路脇(動物侵入検知)など
マイクロ波センサーを使って開発したいけれど、自社ではできないという方はぜひご相談ください。
マイクロ波センサーの特徴
マイクロ波センサーは赤外線センサーの課題を克服できる製品です。下表に各センサーの特徴をまとめました。
ポイント |
マイクロ波センサー |
赤外線センサー |
---|---|---|
原理 |
マイクロ波を送信し、対象物に反射された電波との周波数の差分を取ることで物体検知・移動速度を検出します。 |
温度を持つ物体が発する赤外線を検出し、人の存在を検知します。(人体温の波長は9.4µm付近) |
見た目 |
筐体に穴などは不要です。 |
赤外線をセンサーで受光するための窓(穴)が必要です。隠しカメラのように見えます。 |
温度による影響 |
影響ありません。熱源による誤動作もありません。 |
熱放射により赤外線が放出されるため、温度の高い環境では異常検出することがあります。熱源があると誤動作します。 |
メンテナンス有無 |
特に必要ありません。 |
センサー受光部の窓(穴)などが汚れた場合、精度に影響がでるため定期的な清掃が必要です。 |
センシング精度 |
ソフトウェア(パラメータ変更)の処理で調節が可能です。 |
受光素子や応用回路のスペックに依存するため、ハードウェア側での調整が必要です。 |
パラメータ設定によって用途に応じたカスタマイズが可能
マイクロ波センサーは、パラメータ設定によって用途に応じたカスタマイズができます。以下のパラメータ調整により、使用するシチュエーションに応じた最適なセンシングモードを設定できます。
- 動体検知の粒度:同じくらいの速度で動く複数の動体を”分離検知”するか”統合検知”とみなすか
- 強度閾値:動体として検知する信号強度の閾値(強くすると遠くの動体まで検知可能)
- 動体速度の最低・最高閾値(接近および離脱):微動を検知するかなど
マイクロ波の長所を活かせるシーン・活用例
省エネ目的、カメラが設置できない場所での使用など、たとえば以下のようなシーンで活用できます。
活用例① 高い天井に取り付けられた照明
『センシング範囲が広い』ため、倉庫や工場などの天井が高い施設で、照明のON/OFFの自動化を可能に。
活用例② 自動ドア
動きがあれば『熱を発しない物体でも検知』できるため、ベビーカー・手押し車・ショッピングカート利用時の検知も可能に。
活用例③ トイレ
『壁を隔てても』センシングできるため、照明用に使用されている『複数の赤外線の集約』が可能に。※壁の材質によります。
活用例④ キッチン
ガスコンロのような『熱源がある場所』でも『誤検知することのない』センサーとして使用可能。
活用例⑤ 玄関灯
『太陽光などにより誤作動の可能性がある』玄関灯などでも、ON/OFFを自動化に。
活用例⑥ 防犯灯・街灯
常に点灯させておけない屋外に設置する防犯灯や街灯は、広範囲・高精度にセンシングすることで、ON/OFFを自動化に。
活用例⑦ 動物侵入センサー
『広いセンシング範囲』と『太陽光などによる誤作動がない』という利点を活かし、線路脇や道路脇に設置する動物侵入センサーとしても活用可能。動物忌避装置との連動により、事故防止にも。
活用例⑧ 在室確認用センサー
『物体の微動も検出』できるため、トイレなど『外から中が見えない』建物・空間の在室状況を確認するためのセンサーとして利用できる。
活用例⑨ バス停・電停・タクシー乗り場
屋外で使用でき、なおかつ『微細な動きを検知』できるという特徴を活かし、バスや路面電車の停留所・タクシー乗り場などで待っているお客様を把握できます。
マイクロ波センサーのデモ
下記2パターンでデモをおこないました。詳しくは動画をご覧ください。
デモ1:屋外編
センシングを長距離設定にしてテストをおこないました。具体的には、地上から高さ10m前後の位置にセンサーを固定し、地上側をセンシングしました。高天井から床までといった、センシング対象までの距離が長めの状況を再現しています。
デモ2:トイレ編
地下にあるトイレでテストをおこないました。トイレ入口の頭上にセンサーを設置し、トイレ内全体をセンシングできる向きにしました。対象物までの距離は短めですが、ちょっとした動きも検知する必要がある環境です。赤外線センサーが反応しない状況で、マイクロ波センサーは反応するのかという実験をしました。
マイクロ波センサーのデモ動画
動画チャプター [所要時間: 16:41]
00:30 マイクロ波センサーの特徴/赤外線センサーとの違い
03:15 マイクロ波センサーの機能
03:40 利用シーンについて
05:00 [デモ1] 屋外編:地上15m(4F)の位置から地上の歩行者の検知
- 歩行者1名の場合、2名の場合
07:55 [デモ2] トイレ編:トイレ内での動作の検出
- 壁を隔てて検出するか?
- マイクロ波センサーと赤外線センサーとの比較
11:33 デモのまとめ
12:13 まとめ
デモ1:屋外編の結果
- 高さ10m程度の位置から、地上の歩行者のセンシングができました。
- 想定以上に広範囲のセンシングができており、車道を通行する自転車や反対側の歩道を通行する自転車にも反応していました。
- 2つの移動体は別々の大きな波として表示されており、別の移動体として検出できました。また、歩行する際の腕の動きなども検出できていました。
- 晴天でしたが、太陽光による誤作動も発生しませんでした。
倉庫や工場などの高い天井に設置した場合も、地表面・床の高さまでセンシング可能で、距離を取ることで広範囲をカバーできます。太陽光による誤作動も起こりません。
デモ2:トイレ編の結果
- 壁を隔てた個室内での動作も検出できました。
- わずかな動きに対しても、センサーから見たときに横方向の動きであれば検出できました。
- 赤外線では検出できない状況でも、マイクロ波は検出できていまいした。(赤外線の場合、2mくらいまで近づかないと反応がありませんでした。)
- 赤外線センサー5つでカバーしているトイレ内を、今回はマイクロ波センサー1つでまかなうことができました。
壁を隔てたセンシングも可能です。(※)赤外線センサーをマイクロ波センサーに置き換えることで、設置数を削減できる可能性が高くなります。
※パラメータの設定により調整可能です。壁の厚みと材質によります。
まとめ
今回のデモはマイクロ波の特徴が顕著になった結果でした。実験結果から明らかなように、赤外線センサーの弱点・課題を克服できる製品となっています。
- センシング範囲が広く、一定の遮蔽物を超えてセンシング可能
- 熱源や太陽光をはじめとする使用温度環境により誤作動がない
- 赤外線センサーで見られるカメラのような見た目も不要
実験・評価を繰り返し、最適なセンシングパラメータや判定基準を導くことで、さまざまなシーンで活用できます。マイクロ波センサーを使った製品開発にご興味があれば、ぜひマクニカものづくりコンサルティングまでご相談ください。
お問い合わせ
上記活用例にあるようなアイディアの製品化をご検討の際、お困りごとはございませんか?電子機器の設計者様や、デザイナー様がいらっしゃらなくても、マクニカにお任せください。『やりたいコトを実現する方法のご提案から可能』ですので、まずはお気軽にご相談ください!
ものづくりコンサルティングサービス
マクニカ「ものづくりコンサルティング」サービスの詳細は、以下のリンクからご覧いただけます。