みなさんこんにちは!2025年度入社、新卒FAEのパワーちゃんです。
大学時代は生物系の専攻で、高校時代も物理基礎すら未履修という電気電子知識ゼロの私が挑んだ、3か月でロボットを作る製作実習。ゼロベースからの3か月間の奮闘と新人らしい失敗談を本ブログでお届けします!
第2話である今回のテーマは「電源の設計」についてです。
ユニバーサル基板で電源を作る??
いきなりですが、みなさんはユニバーサル基板で電源を作製したことはありますか?
第1話でさらっと触れましたが、私が今回のロボット作りで最も苦戦したのが、このユニバーサル基板での電源作製でした。
(まだご覧になっていない方はぜひこちらをご覧ください! 【赤面ブログ】見た目に騙されるな ~アノード・カソード編~)
もちろん私にとって、電源作製は初めての経験であり、そもそも電源を作るってどういうこと??という状況からのスタートでした。
今回の実習では「アナログ・デバイセズのDC/DC(スイッチング・レギュレーター)」を使って電源を作製する」といった課題が課されたのですが、なぜ電源を作るんだろう?電池やUSBケーブルを繋げば電源供給できるんじゃないの??といった疑問がわきました。そこで調べてみたところ、電池は使用していくうちに電圧が降下するため、安定して電力を供給できなかったり、USBはノイズが多かったりとそれぞれ課題があることが分かりました。
また、それぞれの部品によって必要とする電流・電圧などが異なり、電池やUSBからの供給では仕様に合わないことがあるため、電源回路によって調整し、安定した電力を使用する部品に供給する必要があるということがわかりました。この電源回路でよく使用されるものがDC/DCコンバーターです。これは電圧を変換するICで、例えば12Vから5Vを作る降圧や、逆に5Vから12Vを作る昇圧をすることができます。これによって使用する部品が正しく動作するための安定した電源を作ることができます。
つまり、「電源を作る」というのは、ただ電力を供給するのではなく、必要な電圧・電流に整え、安定した電源供給ができるようにするということになりますね。
電源を作るイメージ
DC/DCコンバーターの選定
今回私がロボットを動かすために選定したモーターは、4.8V~6Vの電圧で駆動するものだったため、電池の電圧降下を考慮し、9V電池の電圧をDCDCコンバーターで5Vに降圧させ、電力供給をすることにしました。
仕様は決まったものの、膨大な製品の中からどのように仕様に合った製品を選定するの??たしかアナログ・デバイセズって約7万5000種もの製品があるって聞いた気が、、、と途方に暮れていたところ、先輩がアナログ・デバイセズのホームページにあるセレクションテーブルの存在を教えてくれました!こちらに入力電圧、出力電圧、出力電流やパッケージの情報を入力することで、部品をかなり絞り込むことができました。
セレクションテーブル
この中からなるべく簡単に設計できる製品がいいな~とそれぞれの製品ページを見ていたところ、なんと1本の抵抗で出力電圧を設定できるLTC3600という子に出会いました。
このLTC3600という子は、一般的なDC/DCコンバーターの電圧フィードバック制御とは異なり、電流フィードバック制御をおこないます。内部にある高精度の電流源を利用することで、1本の外付け抵抗で出力電圧を設定することが可能です。この方式では分圧抵抗を用いなくても出力電圧設定ができるため、電圧フィードバック方式と比べて、抵抗を1本減らすことができます。
LTC3600の外付け抵抗
すこしでも外付け部品を減らしたかった私はこれだ!!と思い、LTC3600を採用しました。
このような安直で軽率な考えがのちの自分を苦しめることになるんですよね。
LTC3600大量破壊
先に結論をいうと、私はLTC3600を6個破壊してしまいました。なんと過去最高破壊数だそうです。生まれてはじめて、”破壊神”という称号をいただきました。
対応するDIP変換基板を選ぼう
LTC3600のパッケージは12ピンのMSOPです。12-MSOPのピンピッチは0.45mmで、これはユニバーサル基板のピッチよりもはるかに小さいため、実装するためにはDIP変換基板というものが必要になります。変換基板を通してピッチをユニバーサル基板に合わせるということですね。便利なものがあるんだな~と思い、対応するDIP変換基板をECサイトで購入しようとしたところ、なんと「販売終了」の文字が。私は泣く泣く会社にあった20ピン用の変換基板を、8ピン分余らせて使うというゴリ押し戦法で勝負しました。
8ピン余りのDIP基板
結果、変換基板上で無駄に配線が引き伸ばされ、ICのピンと周辺部品までの距離が遠くなってしまい、うまく出力電圧を出すことができませんでした。いくら、DIP変換基板のピン直下に周辺部品を構成しようと、変換基板上での配線が長くなってしまえば意味がありません。DIP変換基板の場合は一見、大は小を兼ねそうに見えますが十分に注意が必要です。
また、今回使用したLTC3600は電流フィードバック方式のため、方式のものと比べ、よりノイズに敏感で影響を受けやすかったのだろうなと考えています。楽をしようとしたことが裏目に出てしまいましたね。目先の利益にとらわれてはいけないという良い教訓となりました。
電圧フィードバック方式(FB抵抗は省略)
電流フィードバック方式(FB抵抗は省略)
細長すぎるGND
破壊の原因はさまざま考えられますが、最初の3つは確実にGNDの配線を細長く引き伸ばしてしまったことが原因であると考えています。
今回安価なユニバーサル基板を使用していたことで、1度付けた部品を外す際にビアのメッキも一緒に外れてしまい、再度はんだ付けができないといった大きな欠陥がありました。そこで、ICを壊してしまった際のリスクヘッジとして、ピンソケットを利用しDIP変換基板を取り外し可能にしました。我ながらナイスアイデアじゃん!と思っていたのも束の間、このピンソケットのせいで電源ICを3つ破壊しました。
細長すぎるGND
当時の私は何がいけないのかわからず、この基板を握りしめてベテランの先輩にアドバイスをもらいに行ったところ、「これは壊れちゃうよ~ どう見てもGND配線が細長すぎるもん」と、にっこにこの笑顔で言われました。配線が細くなると寄生インダクタンスが大きくなり、電圧スパイクが発生することでIC破壊につながる恐れがあるそうです。
みなさんも電源設計をする場合は、とにかくGNDを太く短く配線することを心がけましょう。
慣れてきた時こそ要注意
先輩からもらったアドバイスをもとにGNDを太く短く設計し、基板を作り直したところ、無負荷の状態で5Vの出力に成功しました。しかし負荷を700mAほど引くと、出力電圧が0Vに落ちるという課題がありました。ICを壊すことを恐れていたため、一度すべてのプローブを外して結果を記録し、原因を探るために、他のピンからの波形を確認しようと再度プローブを繋ぎ直したところ、「ぱちっ」という音と共にICがアツアツになりました。
??と思いながら配線を見てみると、電子負荷の入力を誤ってGNDのチェックピンに繋いでいたのです。はじめて5V出力に成功していたにも関わらず、人為的ミスでICを破壊してしまったことで、ICだけでなく私の心にも大きなダメージを食らいました。このあたりから電源設計が頭から離れなくなり、ついには夢の中でも電源設計をおこなうようになりました。実質24時間労働ですね。当時の気分は最悪でした。
この気分を二度と味わうことのないよう、手慣れた作業でも確認作業は怠らないようにしようと心に誓いました。
はんだごての温度
人為的にICを破壊してしまったものの、5V出力はできたのだから同じように回路を作成すれば、今度こそ電源回路が完成するだろう!と思い、気持ちを切り替えて再度電源回路を1から作製しました。この時に、負荷も十分に引けなかったことから、せっかく回路作り直すならコンデンサーやインダクター、抵抗をチップ型に変更し、よりレイアウトを小さくしよう!と回路に変更を加えました。これで負荷も引けるようになるだろうし、今度こそ電源が完成させられるぞ!と思っていましたが、現実はそんなに甘くありませんでした。
残りの2つのICでは、全くスイッチングしておらず、5V出力されないといった課題がありました。SWピンの破壊によるものだと考えられますが、壊れかたに関してははっきりと原因がわかっていません。ただ、原因となりうる要因の一つとして、はんだごての温度が高すぎて定格を超えてしまったことが考えられます。
はんだごての温度が高いほうが、すぐに溶けてはんだ付けしやすい!と思い、なんと温度を400℃ぐらいに設定していました。データシートを確認してみると、絶対最大定格の欄に300℃で10秒までと記載されていました。圧倒的に定格オーバーですね。定格を超える熱によって各ピンにダメージが蓄積し、ICを動かしていくうちに破壊につながったのではないかと考えています。
実際に回路は変えず、はんだごての温度を250℃に変更して再度電源を作成したところ、スイッチングしていることを確認することができました。しかし、ISETピンで5V生成が出来ておらず、VOUTピンを確認してもわずか2V程度しか出力できませんでした。この原因もはっきりとは分かっていませんが、DIP変換基板のところで述べたようにノイズが原因ではないかと考えております。
ついにIC変更を検討
改良に改良を重ね、電源回路を7つ作成してもなお安定して5V出力できる電源が作成できず、課題完成までのスケジュールにも影響が出ていたため、対応するDIP変換基板が存在し、電圧フィートバック方式のLT8609という型番に変更しました。
LTC3600の電源設計で学んだことを生かし、GNDの配線を太く短くし、レイアウトも可能な限り小さく設計することで、1個もICを壊すことなく5V出力の電源を完成させることができました。
まとめ
ユニバーサル基板で電源を作成することはおすすめしません。時間とお金がかかっても、プリント基板を作製しましょう。
やはりユニバーサル基板での作製となると、なかなか理想的なレイアウトで作製することが難しいため、ノイズの影響を受けてしまい、安定した電源を作ることはかなり難しいのではないかと思います。それでもユニバーサル基板で電源を作製したい!というチャレンジャーがいらっしゃいましたら、電圧フィードバック方式のデバイスをおすすめします。そして、GNDはとにかく太く短く設計してください。不注意でのショートにもお気を付けください。以上が夢の中でも電源設計をしたパワーちゃんからのアドバイスです。
次回、最終回です!お楽しみに~!!
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・目先の利益にとらわれるな ~電源設計編~