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高精度モーター制御に、Allegro MicroSystems 低ジッタースイッチ (APS12203) / ラッチ (APS11203)

精密モーター制御における課題

モーター制御の精度は、製品の性能や信頼性に直結する重要な要素です。特に、回転位置の検出においては、センサーの出力タイミングがわずかにズレるだけでも、制御信号に誤差が生じ、動作の不安定さやノイズの原因となることがあります。

この“タイミングの揺らぎ”は、ジッターと呼ばれ、精密なモーター制御を実現するうえで見過ごせない課題です。高速回転や微細な位置制御が求められる用途では、ジッターの影響が顕著に現れ、制御精度の限界を左右する要因となります。こうした背景から、センサーのジッター性能は、モーター制御における設計品質の鍵となっているのです。

ジッターとは?—センサー出力の“揺らぎ”が制御精度を左右する

本記事では、ジッターを以下のように定義します。
BOP (Operate Point) / BRP (Release Point) の感度変動および信号経路ノイズ等に起因する、センサー出力のサイクル間変動を「ジッター」と呼びます。

センサーが磁場を検知して出力を切り替える際、理想的には同じ条件下で常に同じタイミングで出力が変化するべきですが、実際には温度変化やノイズ、設計上のばらつきなどにより、出力の切り替えタイミングに微細なズレが生じます。このズレがサイクルごとに異なることで、モーターの位置検出において回転角度の誤認識や制御信号の不安定化を引き起こす可能性があります。特に高精度な制御が求められる用途では、このジッターが制御性能の限界を左右する重要な要因となります。

APS12203 では、このジッターを極限まで抑える設計が施されており、安定した出力タイミングと高精度な位置検出を実現します。

図1:センサー出力のサイクル間変動(ジッター)

1:センサー出力のサイクル間変動(ジッター) ※Allegro MicroSystems 社より提供

ジッターが制御精度と製品品質に与える影響

モーターの回転位置を正確に検出することは、制御の安定性と応答性を確保するうえで不可欠です。特に、回転方向の検出やステップ位置の認識など、タイミングの精度が求められる制御では、センサー出力のばらつき(ジッター)が大きな課題となります。ジッターが大きいと、センサーが磁場の変化を検知するタイミングがサイクルごとに異なり、回転角度の誤認識や制御信号の遅延が発生します。

これにより、モーターが意図した位置に到達しない、あるいは振動やノイズが発生するなど、システム全体の精度と信頼性に悪影響を及ぼす可能性があります。APS12203 は、BOP/BRP の感度変動や信号経路ノイズの影響を最小限に抑えることで、サイクル間の出力タイミングを安定化します。これにより、モーターの位置検出精度を高め、高精度な制御を実現するための基盤となります。

APS12203 のような低ジッターセンサーを採用することで、モーター制御の精度向上だけでなく、製品全体のコストや品質にも好影響をもたらします。まず、ジッターが少ないことでエアギャップの許容幅が広がり、磁石やセンサーの配置精度に対する要求が緩和されます。これにより、低コスト磁石の使用や製造工程の簡略化が可能となり、トータルの製造コスト削減につながります。さらに、センサー出力の安定性が高まることで、システムの堅牢性が向上し、顧客からの品質クレームの減少にも貢献します。モーターの動作面でも、ジッター低減は動作効率の向上に寄与します。出力の安定化により、低速トルクが向上し、消費電力の削減が可能になります。

また、発熱の低減によってモーターの寿命が延びるだけでなく、システム全体の熱特性の改善にもつながります。加えて、モーターの消音性が向上することで、最終製品のユーザー満足度を高める効果も期待できます。

図2:モーター構造と制御精度の関係

2:モーター構造と制御精度の関係 ※Allegro MicroSystems 社より提供

Allegro MicroSystems の低ジッターセンサー技術— APS12203/APS11203 の特長と他社比較

APS12203/APS11203 の技術的特長と使い分け

Allegro MicroSystems の APS12203(ラッチ)および APS11203(スイッチ)は、いずれも低ジッター性能に特化した磁気センサーであり、BOP/BRP の感度変動や信号経路ノイズの影響を最小限に抑える設計が施されています。両製品は、用途に応じて選択できるように設計されており、それぞれ以下のような特長があります。

 ・APS12203(ラッチ) :磁場の方向に応じて出力状態を保持するため、回転方向の検出や位置保持に適しています。
 ・APS11203(スイッチ):磁場がしきい値を超えるとオン/オフが切り替わるため、瞬間的な状態検知や通過検知に適しています。

APS12203:ジッター性能比較

APS12203 では、独自のチョッパー安定化技術を採用することで、温度変化や外部ノイズに対する耐性を高め、センサー出力のばらつきを抑制します。その結果、ジッター値は 375ns と非常に低く、精密なモーター制御において高い信頼性を発揮します。

以下の図は、APS12203 と他社製品とのジッター性能比較を示したものです。APS11203 についても同様の設計思想に基づいており、用途に応じた選択が可能です。

図3:APS12203と他社製品のジッター性能比較

図3:APS12203と他社製品のジッター性能比較 ※Allegro MicroSystems 社より提供

APS12203:エアギャップ耐性の比較

BLDC モーターにおいて、磁気センサと磁石の間の距離は「エアギャップ」と呼ばれ、センサの動作安定性に大きく影響します。エアギャップが広すぎると、磁場の強度がセンサーのしきい値に達しなくなり、出力が不安定になる可能性があります。逆に、狭すぎると設計や組み立ての自由度が制限され、製造コストが上昇する要因にもなります。APS12203 では、エアギャップを広げた状態でも安定した出力が得られることが確認されており、他社製品と比較して許容幅が大きいという特長があります。

以下の動画では、エアギャップを大きくした状態での BLDC モーターの動作を比較しています。APS12203 は、磁場の検知精度が高く、広いエアギャップでも安定した動作を維持していることがわかります。この特性により、以下のようなメリットが得られます。
 ・設計自由度の向上(磁石配置の柔軟性)
 ・低コスト磁石の使用が可能
 ・組み立て精度への依存度が低下し、製造工程の簡略化
 ・トータルの製造コスト削減

APS12203:モーターノイズの比較

モーターの動作中に発生するノイズは、機械的な振動だけでなく、センサー出力の安定性にも大きく影響されます。磁気センサーが磁場を検知するタイミングにばらつき(ジッター)があると、モーターの駆動信号が不安定になり、電気的ノイズや振動が増加する傾向があります。APS12203 は、低ジッター設計により出力タイミングが安定しており、モーターの動作も滑らかになります。

以下の動画では、APS12203 と他社製品を用いた BLDC モーターの回転時に発生するノイズを比較しています。APS12203 は、他社製品と比較してモーターノイズが明らかに低いことが確認されています。この静音性の高さは、製品の快適性やユーザー満足度の向上につながるだけでなく、ノイズ対策部品の削減やシステム設計の簡略化にも貢献します。また、静音性が求められる家電や車載機器などの用途において、APS12203 は製品価値を高める重要な要素となります。

使用例と導入メリット

使用例:ブラシレス (BLDC) モーターのローター位置検出に最適

APS12203 は、BLDC モーターのロータ位置検出に使用されるラッチ型ホールセンサーです。モーター駆動回路は、APS12203 から出力される正確な位置信号をもとに、各相の通電タイミングを制御します。このセンサーが担うのは、モーターの“心臓部”とも言える制御の起点です。位置検出の精度がトルク制御や回転効率に直結するため、ジッターの少ない信号出力は、モーター性能の根幹を支える重要な要素です。

一方、APS11203 はスイッチ型ホールセンサーで、回転体の検出や位置の ON/OFF 判定など、よりシンプルな制御用途に適しています。ラッチ型と異なり、磁界のしきい値を超えた瞬間に出力が切り替わるため、状態検出やイベントトリガーとしての活用が可能です。

図4:APS12203によるBLDCモーター制御の構成図

図4:APS12203によるBLDCモーター制御の構成図 ※Allegro MicroSystems 社より提供

APS12203/APS11203 が選ばれる理由:設計者が得られるメリット

■ APS12203(ラッチ)のメリット
 ・低ジッターによるトルク・効率向上
 ・高電圧(最大24V)対応で産業用途に最適
 ・ノイズ耐性が高く、過酷環境でも安定動作

■ APS11203(スイッチ)のメリット
 ・シンプルな ON/OFF 検出に最適
 ・コスト効率が高く、量産機器への導入に適する
 ・小型機器や限られたスペースへの実装が容易

活用シーンの広がり

APS12203 は、高精度・高信頼性が求められる産業機器やロボティクス分野に最適です。一方、APS11203 は、回転体の検出や状態判定が求められる民生機器や量産製品において、性能とコストのバランスを取る選択肢として活用されています。

用途例

APS12203(ラッチ)

APS11203(スイッチ)

BLDC モーター制御

△(補助的用途)

ロボットアーム

○(状態検出)

ドア開閉検出

回転体の通過検出

家電製品(ファン、プリンター)

高精度モーター制御を支える、APS12203/APS11203 の詳細

APS12203(ラッチ)とAPS11203(スイッチ)は、高精度モーター制御の実現に不可欠なホールセンサーです。業界最高レベルの低ジッター性能を備え、制御信号の安定性と応答性を両立します。設計の柔軟性とコスト競争力も兼ね備え、産業機器から民生機器まで幅広い用途に対応します。

製品特長

■ 業界最高性能
  ・低ジッター (375ns) でDCモーターの高効率・高トルク制御を実現
  ・高速応答オープンドレイン出力により、制御精度を向上
  ・AEC-Q100 認証取得で、車載・産業用途にも対応可能

■ 設計柔軟性
  ・ラッチ (APS12203) とスイッチ (APS11203) をラインアップ
  ・幅広い磁気閾値 (BOP) 選択肢:10, 15, 20, 30, 50, 95, 150 G
  ・内蔵降圧レギュレーターにより、広い電源電圧範囲 (2.7V 〜 26V) に対応

■ コスト競争力
  ・高性能と小型パッケージの両立により、システム全体のコストを削減
  ・量産用途に最適な価格帯と供給体制

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