脳波から読み解いた感情や思考をビジネスに活かすために

株式会社マクニカ フィネッセ カンパニー
第4統括部 第2推進コンサルタント下山 剛史

脳科学の研究成果をビジネスに応用する動きが盛んになっています。簡単に装着できる機器で脳の反応を読み取り、感情や判断を可視化することで、これまで困難だった課題の解決が図れます。

本記事では、マクニカ フィネッセ カンパニーの下山が、熟練者の暗黙知のモデル化や、社員の集中力や興味度合を可視化した人材適所の実現など、ブレインテックの活用法を紹介します。

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企業が抱える「暗黙知の形式知化」と「人材の定着化」の課題

事業を継続するにあたって、多くの企業が感じているのが、人材に関する課題でしょう。下山は代表的な2つの課題について、次のように説明します。

「団塊世代の引退期を迎えていますが、熟練技能者の技能継承が思うように進んでいません。長期的に企業を成長させるには、計画的なOJTを通して若い世代に教えていくことが重要で、そのためには熟練技能を形式知化していかなければなりません。

大転職時代と言われる近年では、優秀な人材が流出しやすくなっています。昔と働き方の常識が違うため、若い人が精神的に病んでしまい、人材が定着しないことも課題です。適切な職種配置を行ったり、社内のコミュニケーションを円滑にしたりすることで定着を図ると同時に、高い生産性を維持できる施策が必要です」(下山)

ビジネスの現場で進む「脳データ」の活用

上述した人材課題を解決するための新しいアプローチとして「ブレインテック」があります。今日、脳科学は研究や医療の域を超え、ブレインテックがビジネスの世界に適用されるようになりました。一例を挙げると、テスラの創業者であるイーロン・マスク氏が率いるニューラリンク社では、脳内に埋め込むニューラルチップを開発しています。アメリカのファーストフードチェーン店では、新作ピザのプロモーションイベントにおいて、脳波をインターフェースにして、思念の強さでピザをカットするゲームコンテンツを作り話題となりました。

「最近では国内にもブレインテックの波が押し寄せています。例えば、日本のあるタイヤメーカーでは、脳データを用いて運転時のストレスレベルが低いタイヤであることを実証し、『疲れにくいタイヤ』としてアピールする取り組みを行っています。また、製品開発時の官能テストや自動運転車の研究でもブレインテックの活用が始まっています」(下山)

脳データの主要な測定方法

では、どのようにして脳データを測定するのでしょうか。「脳計測における主要な技術は5つあり、その中でビジネスではNIRSとEEGがよく使われるように思います。EEGはデバイスを装着し、大脳皮質から発せられる電気信号の周波数を取得するものです」と下山は説明します。

「脳波は周波数で表されることが一般的で、安静時にはだいたい10ヘルツ帯のアルファ波が出ています。興奮するとベータ波と呼ばれる高周波になり、軽い睡眠状態に入っているとシータ波のような低い周波数になると言われています。こうした特徴を用いて、集中度や興味度、視覚情報や聴覚情報に対しての反応を測定することができます」(下山)

暗黙知の形式知化に脳波を活用

では、熟練者の技能継承には、脳波がどう役立てられるのでしょうか。暗黙知は判断と作業が混合している状態であることが多く、「うまく言語化できていないだけ」というケースもあります。

「暗黙知の約90%は再現できるものと言われています。業務の内容を紐解いてみると、50%は選択的判断で、ある程度パターン化することができます。40%は作業や技巧であり、やり方さえ学べば別の人でも再現可能です。そして最後の10%、これこそが本当の暗黙知であり、本人の価値観に基づいた判断と言われています」(下山)

暗黙知を形式知化するには、まず「自分にしかできない業務」を、できる限り因数分解していきます。おそらく判断と作業の組み合わせで成り立っているはずです。そのうえで、さまざまな要素の中でもっともボトルネックになっており、改善が経営的にインパクトを与えるものが何かを考えてみます。

「例えば、職人の目で行っている検査工程では、コストの問題だけではなく、担当者の仕事が荷重になりやすいことや、急な増産やライン拡大に対応しにくいといったデメリットがあります。もし注文が増えても、それに対応して検査工程の生産性を上げることができないため、会社全体の利益構造にとって大きなボトルネックとなります。これをモデル化してAIによる自動化を図れば、会社の利益構造が一気に変わります」(下山)

ボトルネックになる暗黙知を見つけて、それをモデル化し、AIで自動化させることで企業の利益構造が大きく変わることでしょう。
ボトルネックが明らかになれば、次にその作業をモデル化していきます。暗黙知を形式知化する方法は、画像解析、自然言語解析、音響・振動解析、そして脳波解析と複数存在しますので、対象に合った最適な方法を検討します。

「脳波解析のためにEEGデバイスを用いる場合、微弱な電気信号を捉えるために、正しく装着されていることを確認します。脳波には個人差がありますので、基準点となる通常時の脳波を取得し、個人の特徴点などを判定します」(下山)

ここからは、脳波を使ってAIの学習モデルを生成します。熟練者による検査工程の場合、視覚情報に関する異常か正常かの認識を脳波で判断し、異常と感じた際の脳波をその時の画像データと組み合わせて学習させます。

精度についても実用レベルまで至っていると下山は話します。例えば、ネジの欠陥を判定するAIモデルの実証実験では、通常の手法より高精度のAIモデルを構築できたといいます。このとき、通常の画像認識の手法と比べて必要な教師データ量が少なくて済みました。また、写真の意味づけをするラベリングでは、マウスやキーボード操作が不要で、非常に短時間で作業することができました。

「これが脳波による画像識別AIの実力です。脳波だけで見ていますので、傷の状態や位置まではわかりませんが、アイトラッキングなどの技術と組み合わせることでカバーできます」(下山)

脳波を活用すれば、通常の手法と同程度以上の精度を少ない負担で実現できます

脳波を活用して人材の定着化と最適な職種配置を実現

離職や人材の未定着に関する実態や、適切な職種配置に関しても、ブレインインテックは有効です。一般的に転職理由は、人間関係や仕事内容の悩みが多いようですが、心理状況を数値化することができれば、最適な職種配置を行い、人材離れを防止できます。

「現在、社員の適性を見つける研究的な取り組みを人材会社と共同で行っています。作業中の集中度や興味度、疲れなどを分析して、その人が向いている業務の種類や休憩を入れるタイミング、どんな上司の下で働いてもらうのがよいかなどを分析しています」(下山)

現在、マクニカでは、リアルタイムに感情を可視化する製品を開発しています。小型のデバイスで運転中に見える広告に対して、どれだけ興味を示すか、感じている危険レベル、集中度などを見える化しています。これは、人材業界以外にも物流業界や建設業界におけるヒヤリハットのシーン判定、マーケティング業界における消費者の興味度判定などにも応用することができます。

小型デバイスでリアルタイムに感情を可視化・分析できる製品を開発中です。

最後に下山は、「ご紹介したユースケース以外にも、いろいろなご相談を受けています。ブレインテックでは視覚情報だけでなく聴覚情報にも対応できます。興味がある方は一度ご相談いただければと思います」と呼びかけました。

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