なるほどブレインテック第3回 ~VIE STYLE様が描くブレインテックの未来~ 講演レポート


2023年8月9日(水)に、なるほどブレインテック ”第3回 VIE STYLE様が描くブレインテックの未来” のウェビナーを開催いたしました。

今回は、エンターテイメント、e-sports、医療利用など幅広い分野で様々な新しいことを手掛けているVIE STYLE株式会社 茨木様 をお迎えし、ニューロフィードバックを活用した感情分析の事例をご紹介していただきました。

左より:[ファシリテーター]株式会社マクニカ 堀野、 [ゲスト] VIE STYLE株式会社 茨木様、[パネリスト]株式会社マクニカ 村田


本記事では、当日行われたウェビナーの内容をレポートにまとめております。以下動画と合わせて、是非ご覧ください。

VIE STYLE様のご紹介

2013年設立。各方面でのプロフェッショナル9名で構成されており、ここ2,3年でニューロサイエンス事業に注力し、ヘルスケア事業からメディカル事業まで長期的な事業領域を見据えて様々な市場開拓や事業開発に取り組まれています。

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EEG最新動向と脳波分析の手法

ニューロサイエンスの3つの柱

茨木様:まず、“ニューロサイエンス”に関する、3つの柱についてご説明します。
まず1つ目は、脳がこういう活動をしているときは、人はこういう状態にいる、といったように外部から脳の状態/脳の情報処理をセンシングして読み取っていく。その読み取った情報を“何かに役立てよう”、というのが “ニューロテクノロジー(略:ニューロテック※)”と呼ばれ、ニューロサイエンス(神経科学)の応用分野の第1の柱です。

※ブレインテックが、脳神経科学に特化したテクノロジーに対し、ニューロテックは脳以外の神経系も含んだ神経科学の応用分野となります。

そして第2の柱が“ニューロフィードバック”です。脳の情報表現を外部から読み取ること(リードアウト)ができれば、外部から書き込むこと、つまり外部から脳の情報を変える(ライトイン)技術もいろいろ出てきています。

最後に、第3の柱が、“仮想化”です。脳が行っている情報処理を“コンピューターで再現”する、いわゆる“人工脳”という分野です。

“読み取り”、“書き込み”、“仮想化”、この3つがニューロサイエンスの3つの柱になります。

堀野:映画やアニメの世界だった話が、どんどん実装が進んでいっているのですね。

茨木様:そうですね、この分野の研究はすごく進んでいてそれを“医療分野”や“一般向け”に応用しています。


医療向け

茨木様:今、臨床用の研究が一番進んでいます。

“ブレインインターフェース”と言って、頭蓋骨の中に電極を埋め込み、脳の活動を取ることで話すことや動くことができない患者さんとコミュニケーションが可能になってきています。どんどん精度が良くなってきており、意思の疎通が問題なくできている状況です。

先述した、“読み取り技術”は、脳の状態を推定し、アダプティブにその状態を改善するような製品の開発などに使用されています。また、“書き込み技術”においてもいろいろ技術が進化しており、人工視覚や人口内耳に適応されています。

失ってしまった能力を、ニューロテクノロジーを活用することで取り戻す、手に入れる、そういうことがどんどん実現してきています。


一般向けEEG

茨木様:一方、医療向けではなく一般向けにおいても技術的に進んでいます。

堀野:そうなのですね。だんだんこういうテクノロジーがコモディティ化していくと、我々の生活にどんどん普及していきますね。

ニューロテクノロジーは2020年頃から、人工知能や実験心理、神経科学、精神医学などが融合され、応用領域として注目されてきた印象がありますが、じつは歴史はもっと古く、1924年ハンスベルガ―(注)が人の脳波を発見してから100年たっています。
しかし論文や研究実績は2008年以降が半分以上を占めていて、PCが出てきて研究が急速に進んだものと思われます。

注:https://journal.jspn.or.jp/jspn/openpdf/1100020134.pdf

日々感じているのは、ニューロテクノロジーに必要なのは民主化することです。
そのためには広めるための何かが必要で、その一つに誰もが使えて装着にハードルが高くないデバイスが必要だと思っています。

例として、VIE STYLEVIE ZONEを紹介します。
こちらは、半年くらい前から北米を中心に販売しています。目指しているのは、日常生活に溶け込めるスマートウォッチなど、日々身に着けられるものです。イヤホンならみなさまの抵抗なく身に着けることができるかと思い、この形にしました。



ただし、古典的な脳波計測計に比べると信号量が2/3くらいになってしまうのは理論研究でわかっていますが、頭皮の上おでこや後頭部で取る信号と同等の信号が取れていることが東京大学との共同研究からわかりました(下部事例参照)。

ソフトウエアの面においては、先述した“ニューロフィードバック”は一見難しそうなのですが、『これが誰でも使えるようになれば世界が変わるのではないか』という想いで“REC-DECK-BACK(レックデックバック)”というプロトコルを提供しています。

これは、Step1で脳の状態を定義して、Step2で、Step1の脳波(A)とは違う状態の脳波(B)を、ABでどんな脳症脳活動のパターン違いがあるか?を解読する脳情報解読器を機械学習によって作っていきます。Step3では、それをフィードバックするという流れです。

また、VIE ZONEのイヤホンでは、普通のイヤホンのように音楽も聴くことができます。

REC-DECK-BACKの実用例でいうと、運転中の脳波をモニタリングし、眠気を計測したら、眠気覚ましの音楽をかけ、起きたらそのまま継続、あまり効果がなかった場合は違う音楽に変更し、眠気が覚めるかの検証をしていく。それが有効であったらその曲をさらにかけていくというクローズドループ型の制御が可能です。

この場合は、そのドライバーの状態に応じて、音楽や音の刺激を利用し調整していくことができるというところが特徴になります。

マクニカが提供する、簡単に脳波が取れるタイプのEEG

村田:今まで脳波を取るにはMRIに入って取る必要があったり、かなりハードルが高かったのですが、左記のような簡単に脳波が取れる“ドライタイプ”のEEGが出てきています。

これでも簡易化にはなってきていますが、これをかぶって一般社会での適応化というのはなかなか難しいと思っています。
なので、今後は小型化、通常の生活に馴染むデバイスであることは必須であると考えており、“シールタイプ”などの簡単に脳波が取れるEEGも準備しています。



茨木様:
こういったハード側の進化というのが、今後の社会実装に向けて非常に重要だと感じています。導入部分での課題は、ハード面での使い勝手に影響すると実感しております。しかしハード面はあくまで計測するという役目で、ソフトウエアやアプリケーションが重要になってくるとも思っています。

ニューロフィードバックを活用した事例のご紹介

堀野:ここからは、VIESTYLE様が手掛けてきた各方面での様々な事例を紹介していただきます。

東京大学との共同研究

こちらは国際学会で発表をしている事例になります。
ユーザーが認知的に集中している(フロー・ゾーン)状態を計測し、その状態推定に基づいたニューロフィードバックにより、“ユーザーを集中状態に導ける”可能性があることがわかりました。

こちらの研究結果をVIE ZONEというアプリでも使用できるように仕立てまして、北米にて発売しています。

医療向けの事例

医療向けでいうと、手術中に麻酔が覚めないか?脳波をモニタリングし、麻酔が切れてしまう前に鎮静剤を追加するなど、執刀医にも患者にも負担がかからないような手術ができるよう脳波でサポートできることがわかりました。

学習の効率化

プロスポーツ選手のスキルアップの効率化:レーサーの技能向上のため、eスポーツを活用した脳トレーニングで認知能力を高め、実車における“ドライビングテクニックの向上につながるか?”の実証実験をしました。

詳細はこちら

また、ゴルフのチョーキングにおいては、リラックス状態の脳を再現することで、“本番においてもパフォーマンスがよくなること”が見えてきました。

ととのうサウナ:サウナでの“整う“を数値化

サウナにて、リアルタイムにどれくらい脳が“整っているか“を可視化することで、よりサウナの効果を実感することができます。




そのほかにも、化粧品メーカー様と化粧品を使っているときのユーザーの脳波状態を分類したり、電機メーカー様と仕事をしているときの脳波を計測し、ジョブクラフティングの手助けをしたりと、様々な業界や方面での実例があります。

今後の展望

茨木様:自分たちだけでは思いつかないアイデアもあると思いますので、“お客様と一緒に創り上げていきたい”と思っています。今日ご紹介したように、“医療向け”から“一般向け”まで領域問わず、何か人の役にたちそうなことであればなんでも前向きに取り組んでいきたいと思っています。

今後の予定としては、直近でいうと新しいプロダクトもローンチ予定です。また、開発者向けにミートアップイベントも定期開催しています。
ご興味ある方は、ご参加ください。
詳細はこちら

まとめ

今回開催のなるほどブレインテックでは、VIESTYLE様の描く“ブレインテックの未来”について、事例を交えたお話を聞かせていただくことができました。

ブレインテックを社会に普及させるには、『ハード面でのデバイスの簡素化が非常に重要』であり、『ソフト面では実際にどんなことが何に役立つか?』一般社会においてのユーザーの課題にいかに寄り添えるかが重要であると感じます。

この課題を乗り越えるためには、脳科学×AI事業における専門的な知識や経験やアイデアが必要となってくるため、マクニカはこの部分からお客様のサポートをさせていただければと考えています。

本記事をお読みいただき、なるほど!と少しでもブレインテックについての理解を深めていただけましたら幸いです。

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