なるほどブレインテック 第1回 ~ブレインテックでマーケティングとは~ 講演レポート



2023
315()に、なるほどブレインテック1回ブレインテックでマーケティングとは?のウェビナーを開催いたしました。

記念すべき第1回目となる今回は、株式会社SandBox CEO菊地様をゲストにお迎えして、マクニカの楠、村田の3名により、ニューロマーケティングについてお話しいただきました。


左:株式会社マクニカ 楠 中央:株式会社SandBox 菊地様 右:株式会社マクニカ 村田


本記事では、当日行われたウェビナーの内容をレポートにまとめておりますので、是非ご覧ください。

株式会社SandBox様のご紹介

まずは、今回のゲストとしてご登壇いただいた、株式会社SandBox CEO菊地様から、会社概要についてご紹介いただきました。

菊地様は、元々はeスポーツのプロ選手として活動しており、自分自身のパフォーマンスを向上させたいという思いから生体情報の道に入ったそうです。

その中でも、脳の情報を扱う「ブレインテック」という分野に大きな産業的可能性を感じ、国内外のエンジニアと共に株式会社SandBoxを立ち上げ、2017年に創業後、2021年前後に感性分析のサービスを立ち上げ、これまでにさまざまなメーカーや広告代理店の支援を行ってきたとのことです。

Sandbox社の感性分析サービスは、モニターとなる被験者が、脳波計と呼ばれる人間の脳を計測するためのデバイスを付けながら、さまざまなタスクをこなしていくという流れで行われます。

人間の感情自体は約1000種類あると言われるほど豊富に存在していて、サービス内で取得できる感情の指標は、好感・興味・ストレス・飽きなどさまざまで、感性分析での応用範囲は、人間の5感を思い浮かべていただくと分かりやすく、特に、触覚以外の4つの領域にフォーカスしています。

例えば、視覚の領域であればパッケージやCMといったデザイン周り、嗅覚領域であれば香り、また音楽などの聴覚領域や、商品の味などの味覚領域、といった部分の商品開発をサポートしていらっしゃいます。

マーケティングにおけるブレインテック活用

ここからは、今回のウェビナーのメインコンテンツである、事例を交えたニューロマーケティング活用方法についてご紹介いたします。


―SandBox社の事例―

ブレインテックをマーケティングに活かす大きなメリットは、商品開発の段階で、仮説通りの結果が出ているかどうかを検証しておくことで、商品をさらに価値のあるものに仕上げていけることだと考えられます。

この「ニューロマーケティング」と言われる手法は、商品開発や設計のフローにおいて、実際どのような検証を行うものなのか、具体的な事例を交えて菊地様にお話しいただきました。

最初にお話しいただいたのが、当社が某食品メーカーと共同で行ったプロジェクトの事例です。

こちらの食品メーカーは、睡眠に関わる商品の開発段階において、食品に含有される成分のリラックス効果が発揮されるまでにタイムラグがあるという課題を抱えていたそうです。

この課題の解決策として、食品に香料を付け加えることで、香りによるリラックス効果を与えられないかと考え、効果の検証のためプロジェクトがスタートしました。

従来のようにアンケートを取るだけでは、結果の信憑性に疑問が残ってしまうことから、まずは候補となる香りを複数用意し、当社のニューロマーケティングサービスを使って検証を始めました。

検証では、EEGと呼ばれる非侵襲型のデバイスを利用し、約20名のモニターが香料を嗅いでいる時の脳波を測定しました。

その結果、候補であった5つの香料のうち、4つの香料は特にリラックス効果がなく、むしろ覚醒効果があるということが検証されました。

寝ている時、リラックスしている時の脳波の波形については、古くから研究されている領域であり、特定の脳波の成分がリラックス効果に直結していることが判明しているため、その結果を用いて分析を行うことができたそうです。

この検証結果をもって、こちらの食品が実際の商品化に向けて動き出すことになったため、ニューロマーケティングを商品開発に活かした事例の1つとなりました。

脳波測定の手間を考えると、100~200名といった数のモニターに検証してもらうのはハードルがやや高そうですが、20名程度の検証で有益な結果が出るというのは非常に取り掛かりやすいですね。(楠)

次にご紹介いただいたのが、某電気メーカーと行ったプロジェクト事例です。

こちらの電機メーカーは、従来とは異なる新型の照明を開発しており、ビジネスパーソンや学生がオフィスや書斎で集中力を発揮できるようなユースケースを想定して、商品の開発を進めていました。

実際に照明を使っている時に、集中力アップ効果が出ているのかを検証するため、当社の感性分析サービスを利用されたとのことです。

検証では、この照明を付けて作業を行っている際のモニターの脳波を測定しました。結果として、集中効果ではなくむしろリラックス効果が強く出ていたということが検証されました。

この結果を見たお客様は、商品開発の段階で、最初に立てた仮説が本当に正しいのか検証することができたと評価しており、検証結果から、オフィス・書斎向けではなく、よりリラックスできるようなスペース向けにユースケースを変更することで、販売戦略を事前に切り替えることができました。

商品を使うお客様だけでなく、開発者のニーズにも応えることができた事例となりました。

最初は集中力アップ効果での商品開発を進めていたところ、実際は全く逆のリラックス効果であった、ということを知らずに商品が世の中に出てしまった場合、コンセプトの違う商品となってしまうため、事前に脳波を使った検証で本当の効果を知ることができるというのは、今後の商品開発に相当なインパクトを与えそうですね。(楠)

このように、自分たちの仮説通りに結果が出るのかどうかを商品販売前に検証しておくことで、商品を本当に価値があるものに仕上げていくことができるのが、ブレインテックをマーケティングに活かす大きなメリットの1つです。

最後にご紹介いただいた事例は、某製薬メーカーとの共同プロジェクトで、歯磨き剤を対象とした検証です。

この商品は、歯磨き剤の中でもクセの強い味がする商品であるため、初めて使う方は嫌悪感やあまり好きではないといった感想をもっていたそうです。

しかし、この商品を1週間~2週間継続してモニターに使っていただいたところ、むしろこの味が良いというやみつき感に変わっていくといった、商品の特長が脳波の分析により判明しました。

この検証結果から、やみつき感の要因は性別の違いからなのか、過去に使用していた歯磨き剤の違いからなのか、といった次の開発に活かせるような要素が取得できたとのことです。

感性分析の検証を行うにあたって、好感度や親近感といった感情の指標はかなり明確に出る指標の1つであり、その特徴も確立されていますが、喜怒哀楽のような感情は個人差が大きくなる指標であるため、課題のゴール設定と実験計画を適切に立てておくことが重要です。(菊地氏)


―マクニカの事例―
次にマクニカの事例として、プラス株式会社様と株式会社BLUEとGREEEN様と行った共同プロジェクトについてご紹介いたしました。

本プロジェクトは、高校生をターゲットにした文房具に、具体的なシーンの絵とそれに基づく感情を導き出すような音を付加し、その音を聞いた時の脳波を測定することで、ターゲットとなる高校生がどのような反応を示すのかを検証しました。

モニターの高校生たちは、脳波測定を経験するのは初めてだったため、最初は緊張しながら検証に取り組んでいたようです。

しかし、自分の感情を客観的なデータで見ることで、徐々に緊張がほぐれ、脳波測定も順調に進められたことから、モニターのリアルな感想を知ることができ、正確な効果が導き出せる結果となりました。

このニューロマーケティングを商品開発に活かす取り組みの結果として、お客様の売り上げにも貢献することができたため、今後の可能性を感じられる検証となりました。

検証の際、正確なデータを取るために、事前にコミュニケーションを取るということが重要であり、SandBox社では、実際に瞬きしている時の脳波波形を客観的に見ていただくことで、モニターにリアルな反応をみていただきリラックスしてもらうといった準備を行っています。また、防音室やヘッドレスト付きの椅子を用意することで、リラックスして検証を行っていただけるような環境づくりをしています。(菊地氏)


マクニカでも、脳波測定の前にモニターそれぞれの脳波の出方を測っておくという準備をしており、その上で実際のタスクを行っていただくことで、正確な脳波データを取得するための工夫をしています。また、モニターが汗をかいてしまうと、脳波測定のノイズとなってしまうため、部屋の温度管理も徹底しています。(村田)

このように、脳波測定の前にモニターの緊張感をほぐすことや、測定する部屋や座席環境の事前準備というのも、正確なデータを取るために重要なポイントになるとのことです。


ニューロマーケティングを使った今後の展望

最後に、ニューロマーケティングを使ったビジネスの今後の展望について、3名にお話しいただきました。

現在の技術トレンドとして、デバイスの小型化が進んでおり、最近ではイヤホン型のデバイスもできているため、仕事や日常のタスクをしながらでも、その時の自分の状態・パフォーマンスを客観的なデータとしてとることができるとのことです。

イヤホン型であれば比較的抵抗なくつけることができ、耳の中にデバイスが入っているため動いてもズレにくいといったメリットがあるようです。

また、SandBox社ではデータの透明性と納期スピードを重視しており、取得した脳波データの加工過程をお客様に開示し、流れを理解していただくことで次のステップに進んでいただけるという特徴があります。

筋肉の動きなど余計なノイズデータは、あまり人の手を介さずに自動的に除去するプログラムを構築することで、スピーディーな納品を実現しているとのことです。

このように、ハードウェアの発展と分析ノウハウの蓄積を掛け合わせることによって、AI分野が目覚ましい進歩を遂げているのですね。(楠)

また、近年ニューロマーケティングが注目されている要因の1つとして、商品開発の段階で、人が何をどのように感じているのかを知ることで、より良い商品開発に繋げたいという、企業側でのニーズが高まっていることが挙げられるとのことです。

例えば、自動車メーカーのお客様であれば、運転中のドライバーの感情をリアルに知ることで、どうすれば運転中の気分を変えることができるのかだけでなく、商品を使った時の感想や使い心地の評価、集中力の変化などを事前に知ることができます。

このような技術の発展により、ユーザーにとってより効率的な商品を作っていきたいという考えをもったお客様が年々増えてきているとのことです。

まずは人を知り、そこから商品を良くしていくことで、きちんとマーケットに合致した商品を作り、売り上げを上げていくというビジネスの形が、今後ますます広がっていくのではないかと思います。(村田)

実際に商品を作るのも人ですし、それを買う人ももちろん人なので、その両者を満足させることができるブレインテックによって面白い未来がきそうですね。(楠)


まとめ

今回開催のなるほどブレインテックでは、ブレインテックをマーケティングに応用する「ニューロマーケティング」について、これまでの事例を交えたお話を聞かせていただくことができました。

デバイスの発展や分析ノウハウの更なる蓄積により、ブレインテックのビジネス応用は今後ますます広がっていくと考えられます。

ブレインテックの社会実装を進めていくにあたり、専門的な知識や経験が必要となってくるため、マクニカはこの部分からお客様のサポートをさせていただければと考えています。

本記事をお読みいただき、なるほど!と少しでもブレインテックについての理解を深めていただけましたら幸いです。

次回のなるほどブレインテックでも、みなさまの課題解決に役立つコンテンツを配信していきますので、引き続きチェックよろしくお願いいたします。

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