脳波を計測し人の持つ"感覚"をデジタル化、匠の判断・「エモい」をAIに学習させる ~AI・人工知能EXPO 2022春 講演レポート~


5月11〜13日の三日間にかけて、東京ビックサイトで日本最大の人工知能専門のイベント「AI・人工知能EXPO 2022春」が開催された。
新型コロナの影響がまだまだ残る中、各ブースは人に溢れ、コロナ禍であることを忘れさせてくれるイベントだった。

「脳波計測を活用し、匠の技や人間の持つ感情をAIに学習させる」、マクニカからはAIの専門家でもある楠貴弘が登壇。
人工知能、引いてはITの未来を感じさせる講演を行った。

AIと人が併走することでAIの活用範囲は広がる

ディープラーニング技術が一歩進んだ2015年、人工知能への注目度、期待度が急速に高まった。
マクニカは独自の人工知能ブランド「macnica.ai」を立ち上げるなど、日本のみならず海外も含め、人工知能の研究者、企業との接点を作り、IT変革を推し進めている。

AI・人工知能EXPO 2022春」でマクニカは、販売代理を含めたパートナー契約を結んでいるイスラエルのInnerEye社、CEOのウリ・アントマン氏と共同で講演。前半はウリ氏が自社の紹介および技術、そして後半はマクニカの楠がAI技術を活用したソリューションについて語った。

InnerEye社 ウリ・アントマンCEO



InnerEye
社は2016年にウリ氏と2人の人工知能研究者が創業した、イスラエルのブレインテック企業です。

AIには可能性があります。しかし現在まだ『様々な企業で採用されている』とは言い切れません。それはなぜか。
AIはミスが許されない。人はミスをする、受け付けることができます。AIを採用するには100%ミスをしないことを保証しなければなりません」(ウリ氏)

一方でウリ氏は調査機関の資料を示し「大企業の50%AI導入への移行を示している」と話した。しかし、実際に市場、現場を見ているとAIが事業に使われているという感覚は「みなさんにとっても薄いのではないか」と続ける。

(参考「Artificial intelligence in EU enterprises ,
https://ec.europa.eu/eurostat/web/products-eurostat-news/-/ddn-20210413-1」 )



AI
の採用は世界でも加速はしていない。一方で、調査機関によると大企業の50%は「AIを採用したい」という意向を持っている

AIを使えるようにするには、人とAIの併走が必要です。人とAIが一緒にいるからこそ信頼、信用ができる。人間も誰かの失敗を受け、学び学習をする。AIもまた、失敗を受けて学習するのです」(ウリ氏)

先にウリ氏は「AIはミスが許されない」と語ったが、AIは学習をするベースとして世の中に生まれる。
人と比べてAIの記憶力、計算能力は膨大だが、人が歴史や学習で得た感覚をAIは採用された瞬間から期待されてしまう。
その結果、学習ができないまま「期待外れ」と評価されてしまうことにウリ氏は警鐘を鳴らす。

InnerEye社はEEG技術も使い、人の感覚処理、意思決定のプロセスをデジタル化。AIの意思決定精度、範囲を高めることでAIの活用範囲を広げている。



「人とAIが共に歩んでいく。協業をするためには、AIがくだした決定を人が直して行く。
最後のプロセスに人が介在するべきだと私は考えています。決定をくだすには膨大なデータが必要ですが、データが多いから『正しい』判断ができるという訳ではありません」(ウリ氏)


ここでウリ氏はElectroEncephaloGraphyEEG)や神経サイエンスについて解説。例えば、脳の何十億とある神経細胞、ニューロへのアクセスを試みて、感覚処理をAIに学習させることができるのではないか?


InnerEyeはブレインテックで人の感覚処理をデジタル化する研究を行っています。
決定や判断をしているときに脳で何が起きているのか、この情報をAIに提供し学習させる。AIと人間の知能を融合することができる、と信じています」(ウリ氏)

人の感覚をデジタル化することで応用範囲は広がる

続いてマクニカの楠が登壇。
ウリ氏の講演を受け、「InnerEyeの技術を受け、マクニカが何を行っているのか」を語った。マクニカは半導体事業とネットワーク事業を軸に、自動運転技術などを新規事業として研究している。

株式会社マクニカ BRAIN-AI Innovation Lab.フェロー 楠貴弘



2021
7月には「macnica.ai」は「AI」に関する専門家と技術の接点としてブランドを立ち上げるなど、AIに未来を感じ、さまざまな研究、取り組みを行っている。


マクニカはAI実装で350プロジェクトを手掛けた実績を持つ



「ウリ氏の語ったEEG、人の脳の中で何が起きているのかを拾うことで例えば熟練者、匠の技をAIに学ばせることができるのではないか?判断するプロセスではなく、判断した際の脳波、つまりは脳の電気信号を拾い、AIが学習することでAIが匠の判断をできるようになるのではないか」(楠)


ここで「自動車部品開発における検品作業」を紹介。
馴れない作業員と熟練者それぞれの脳波を計測し、差分を注出。この差分に該当する部分がいわゆる「属人的」とも言える分野。
熟練者の気付き、判断をデジタル化しAIに学習させることでAIは熟練者の作業が行える。


「想像してみてください。『この作業をどう文章で伝えるか』、日々みなさんも仕事で経験していることだと思います。
AIに文章や口頭で伝えるのではなく、脳波の動き、判断のパターンを学習させることで熟練者、匠、エキスパートの作業を可能にするという考えかたです」(楠)


この技術は応用範囲が広い。
例えば空港のセキュリティチェックはAIに任せることができる。「実際に海外の空港では採用されている」と楠は続ける。
ほかにも医療、流通、製造など、匠、熟練者のいる作業に応用ができる。


「この技術を使い、例えば『適性検査』、人事にも応用することができます。テストでの脳波、集中度を計測することで本人さえも気づいていない興味関心を見つけ出すことができるかもしれない」(楠)


脳波を計測、分析することで、自動車の「乗り心地」など、本人にしかわからない「感覚」をデジタル化できる。
これまでアンケートの回答を見て拾っていた感想も、実際に脳、身体が動いたことを頼りに次の一手を考えることができるのではないか、と楠は語った。


意識する前に脳活動は始まっている!?人間の無意識行動の関係性をこちらの記事で解説しています!

乗り心地やヒヤリハットなど「人の感覚」をデジタル化し、自動運転でどう補うか、人とAIが併走する足掛かり



「高校生に協力いただき、新しい文具の持った感じ、観た感じの脳の動きを計測しました。
これにより『エモい』という感覚、感情を摑む。従来アンケートから感じとっていた満足度を、脳波から摑む。こうしたニューロマーケティングも注目を集めています」(楠)


※ニューロマーケティングで、顧客の好みを見極める方法をこちらの記事で解説しています!


脳波計測で得た気付きを文房具にフィードバックして生まれたのがプラス社と協同で開発した「coe365」。
ユニークな点は、色やイラストが異なる文房具にQRコードを記載し、それぞれのシーンに合わせた「エモ音」が聴けること。

マクニカブースではノベルティとして「coe365」を提供



最後に「気に入ったイラスト、色にリンクする、気持ち良いと感じる音を提供する。
マクニカのブースで実際に提供しているほか、実際に脳波の計測も体験できますのでぜひお越し下さい」と語り、講演を締めくくった。

体験者から「未来を感じるIT」と言われた技術

マクニカのイベントブースではウリ氏、楠が語った「脳波計測」を使った「匠の技のデジタル化」、「感情、感覚のデジタル化」のデモンストレーションを用意した。

例えば、画面に次々に映し出されるレモンの画像から「腐っているレモンが表示されたら頭の中でカウントする」など。
人間が「気付く」際の脳波を計測し、実際の数と比べるほか、また、可愛い動物の映像やナイフを持った男のシルエット映像など、感情を動かす映像を見せたときの脳波の変化から感情を特定するなど。


「怖い」の感情を引き出す映像を観ている際の脳波の変化を測定する
脳波の動きにより集中力を把握することもできる


「体験いただいたかたに『退屈な映像を流します』とネジの映像を流したところ『楽しい』という感情が検出されました。
お話しを聞くと、趣味で機械いじりをやっていらっしゃるそうでネジを見ることで楽しい気持ちになったようです。
こうした人それぞれの感覚の違いも見えるので応用範囲は広いと思います」(マクニカブース)

もっとも注目を集めていたのがドライブシミュレーターを用意した「運転時の脳波の動き」。
運転に集中しているとき、スマートフォンが鳴ったときなど、人間の脳はどう反応するのか。この反応に合わせて、車側、自動運転でどう補えば事故を回避できるのか。


運転時やトラブルが起きた際に脳はどのような動きをしているのかを計測、同時に「乗り心地」などの感覚的な情報も把握でき応用範囲が広いソリューションのひとつ



「これらはソリューションとして提供していますが、私たちも声をかけられてから『その分野で生かせるのか!』と気付くことがあります。興味をお持ちでしたらぜひマクニカへ声をかけて欲しい」(マクニカブース)


全三日間の「AI・人工知能EXPO 2022春」だったが、予想を超える来場者、体験者に恵まれ大盛況の内に終了。
脳波計測を体験いただいたかたからは「未来を感じるIT技術」など温かい声もかけていただき、ITの可能性を広げるべくこれからもマクニカは研究開発、提供を続けていく。


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