ギャンブルで脳波が振れる?FRNについての紹介!

ギャンブルと脳波

脳波や神経科学の世界において、認知における脳波や、脳波から集中力や興味度合いの測定をするなど、言葉にせずともヒトの脳活動の測定や分析、
それの活用法は近年広がっています。

そこで、今回はギャンブルにおいて反応するといわれている脳波「FRN」について、弊社で実施した脳波測定の内容とあわせてご紹介いたします。

ERPのP300とFRN

ERPEvent-related potential, ※事象関連電位)」は、内的・外的刺激に対してヒトが認知をする結果として発生する脳の反応です。
例えば、※P300という事象関連電位は、ターゲットの事象に対して認知をしてから300ミリ秒後に脳波が上昇することが様々な事象で観察されていて、神経科学の世界では広く認知されています。

 参照:事象関連電位とは?https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E4%BA%8B%E8%B1%A1%E9%96%A2%E9%80%A3%E9%9B%BB%E4%BD%8D

参照:P300とは?
Sutton, S., Braren, M., Zubin, J., & John, E.R. (1965).
Evoked-potential correlates of stimulus uncertainty. Science (New York, N.Y.), 150(3700), 1187-8. [PubMed:5852977] [WorldCat] [DOI]


今回ご紹介するERP1種の「FRNFeedback-related negativity, フィードバック関連陰性電位)」は、ポジティブな結果を期待する状況下においてネガティブな結果や、ネガティブな感情を引き起こす事象に対する脳の反応です。

FRNの「ネガティブな情動」が発生する状況として広く取り上げられているのがギャンブルです。

これまでの研究ではFRNは金銭的報酬や損失に対して反応することが認められおり、通常好ましくない結果では陰性の脳波振動が増加するといわれています。つまり、リターンを求めるギャンブルにおいて、期待より低いリターンや、ロスが発生した場合に、ヒトの脳反応としてFRNが発生するといわれています。

ギャンブルゲームによるFRN測定

まず、弊社ではギャンブルゲームを用いてFRNの測定を行いました。

ゲームの内容は、2枚のカードから1枚を選択し、選択したカードがリワードありであればポイントが加算、リワードなしであればポイントが減算されるというシンプルなもの。
カード選択を繰り返して一定のポイント数に達すれば実際にギフトカードをプレゼントすることを条件に、数名の被験者の脳波測定を行いました。

図1:ギャンブルゲームによるFRNの脳波測定結果

このギャンブルゲームから、右図の脳波が測定されました。
これらの7つのグラフは脳波測定に活用した各電極から得られたもの脳波の加算平均で、青線はリワードありのカードを選択した際の脳波で、赤線はリワードなしのカードを選択した際の脳波を示しております。

これらから、主に後頭部にあたる(上図下方側の)PO7、Pz、PO8において、400ミリ秒前後にリワードありに対する強い反応が見られました。
これはいわゆるネガティブに振れるFRNとは異なる観点の示唆になりますが、青線と赤線を比較するとリワードの有無に対する脳波の違いが見て取れます。

画像評価によるFRN測定

続いて、弊社では画像評価によるFRN測定を実施しました。

画像評価では、ある高画質の元画像に対してコントラストを2段階悪化させたもの用意し、被験者は2つのボタンのうちどちらかのボタンを押すことで良いコントラストの画像を表示するか推測しボタンを1つ押す、というゲームを行いました。仮説としては、コントラストを1段階悪化させた画像より、2段階悪化させた画像が表示される際のFRNが大きく振れると推察しました。

図2:元画像とコントラストを2段階悪化させた画像に対する脳波比較
図2:元画像とコントラストを2段階悪化させた画像に対する脳波比較
図3:元画像とコントラストを1段階悪化させた画像に対する脳波比較
図3:元画像とコントラストを1段階悪化させた画像に対する脳波比較

上図2つが画像評価による脳波測定結果になります。どちらも図1と同様に、7つのグラフは脳波測定に活用した各電極から得られたもの脳波の加算平均を示しており、青線は高画質の元画像が表示された際の脳波、灰色線は低画質の画像に対する脳波で、図2は2段階画質を悪くした画像、図3は1段階画質が悪い画像に対する反応を示しております。

この評価から、図2も図3も後頭部にあたるPzにおいて、200ミリから300ミリ秒時点にかけて低画質の画像に対する脳波が高画質の画像よりネガティブに振れていることがわかります。これは前述のとおり、高画質の画像を期待しているのに反し、低画質の画像が表示されたことによるネガティブな情動が引き起こした脳の反応だとわかります。
また、図2では低画質の画像に対して、ERPのP300が図3より大きくポジティブに振れていることがわかりました。これは図2で比較している低画質の画像が、図3のものよりコントラストの悪化が明らかなため、低画質な画像へのヒトの認知が明確だったことが起因しております。

この画像評価により、これまでの研究で認められていた「金銭的報酬や損失」が発生しない場合においても、ネガティブな情動反応によるFRNの反応が発生することが検証できました。

まとめ

今回はFRNについてご紹介しました。今までの研究で認められていた金銭的損失に起因する情動反応においてFRNが発生することは、弊社の簡単なギャンブルゲームでも明確となりました。それに加えて、弊社独自の画像評価により、金銭的損失がなくとも、高画質の画像への期待に反して低画質の画像が表示されたという、ネガティブな感情においてもFRNが発生し得ることがわかったかと思います。

この脳活動の利活用として、例えば、ヒトがどのタイミングで製品の機能や品質改善を期待しているかを評価する際に、製品に対する情動反応をFRNを測定することによって評価するなどの可能性が考えられます。

このように、情動反応と認知からの脳反応を測定することで、製品などターゲットに対するヒトの評価を、言語を使わずとも測定可能な未来も遠くないでしょう。以前の研究ではギャンブルでの反応として認められていたFRNが、製品の品質向上への材料として活用されることに期待が高まります。

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