ブレインテック×AIで製造業をサステナブルに 第1回~脳波活用の意義とは~

製造DXの「いま」

製造DXの躍進

近年製造業において働き方改革や少子高齢化の波を受けて、DX(デジタルトランスフォーメーション)への取り組みの必要性が高まっております。
出典:「平成30年版 情報通信白書」第3ICTによる生産性向上と組織改革(総務省)

例えば、長時間労働の対策のため、製造用ロボットの開発を進めることで人手のかからない製造工程の実現などが少し前から進められているかと思います。
なかでも少子高齢化に対する懸念として、技術継承への問題意識は全産業平均と比較して製造業において高くなっております。(図1)

取り急ぎの対応策としては「退職者の中から必要なヒトを選抜して雇用延長、嘱託による再雇用を行い、指導者として活用している」と答える事業所が多いですが、先々の事業を鑑みると、DXでの対策など次世代のみでも企業を支えられるような対策の必要性は明らかです。(図2)
出典:「2022年版ものづくり白書」第4章第2節 ものづくり人材の能力開発の現状(経済産業省)


図1:製造業における能力開発や人材育成に関する問題意識
出典:「2022年版ものづくり白書」第4章第2節 ものづくり人材の能力開発の現状(経済産業省)
https://www.meti.go.jp/report/whitepaper/mono/2022/pdf/honbun_1_4_2.pdf



図2:製造業における技術継承の取り組み内容
出典:「2022年版ものづくり白書」第4章第2節 ものづくり人材の能力開発の現状(経済産業省)
https://www.meti.go.jp/report/whitepaper/mono/2022/pdf/honbun_1_4_2.pdf

製造DXの課題

ICT(Information and Communication Technology:情報通信技術))やIoT(Internet of Things:モノのインターネット化)、さらに近年ではAI(Artificial Intelligence:人工知能)やRPA(Robotic Process Automation:ロボティック・プロセス・オートメーション)など、先端技術を活用しながらソフトウェアやロボットなどのデバイスにより様々なかたちで製造DXへの取り組みが進んでおります。

しかし、それらが活用される目的は生産性の向上が多く、熟練者の技術継承という少子高齢化から直結する課題に対しては未だ対策がなされていません。
出典:「2022年版ものづくり白書」第4章第3節 ものづくり人材に係るデジタル技術の活用状況(経済産業省)

また、技術継承については従来の課題も残っています。

それは技術継承の対象となる熟練者の知識や技術に個人差が存在するということです。
ひとえに「ベテラン」といっても、個人の経験年数が異なれば熟練度合にも差が生じ、どの個人の技能を基準にAIの学習を進めるかによってDX化の精度が大きくかかわってくるというのが現状の課題になります。

これを逆にとらえると、今後DX化が進む先には、現場の個人に頼り続けるのではなく、熟練者のノウハウを継承し様々なヒトが活用できるようになり、サステナブルな製造現場が期待されます。

ブレインテック×AIを活用した製造DXとは

先述の「少子高齢化に伴う技術継承の課題」や「熟練者間での技能の差」については、すでに様々な製造現場に関わる多くの方が問題意識をもっているかと思います。

それではどのようにして技能継承していくか。弊社では、この問題に対して、脳波を活用したAIの画像分類モデルを開発しました。

ブレインテック×AIとは

弊社にて以前から取り組んでいる分野に「ブレインテック×AI」があります。

まず脳波の活用については弊社コラムでも既に紹介しておりますが、近年様々な脳波測定器が開発されています。
測定器によって測定可能な脳波の種類や数は異なり、脳波計測の目的によって測定器の向き、不向きがあります。

なかでも既存の研究で確立されている事象関連電位といわれる誘発電位は、外部からの視覚刺激によって反応するため、その測定によりヒトの判断や選択を読み解くことが可能です。
「ブレインテック×AI」とは、つまりそのような測定された脳波から読み取れるヒトの判断や認知をAIの学習データとして扱うことを指します。

ブレインテック×AIを活用した製造DXのメリット

先述にて「ブレインテック×AI」についてご説明しましたが、ヒトの脳波をAIの学習データとして扱うことによりどのようなメリットがあるのでしょうか。

例えば製造現場において異常物を取り除く作業など、その分野の熟練者ではないと難しい微妙な判断がありますが、多くの場合、それらは熟練者の経験や知識をベースに判断が行われていることがあります。
その経験や知識は大いにして言語化できない場合があり、また彼らのなかでも100パーセントの確度ではなくとも判断を行っていること場合もあります。

そのような微妙な判断や個人の経験をベースにした判断は次世代に伝承することは難しく、技術継承の弊害となります。
そこで、熟練者の脳波を測定し分析することで、そのような事象に判断を行っているのかを読み解くことが可能となり、それをAIに学習させることでその判断をAIが担うことも可能です。
また、通常AIに与える学習データはハードラベルと呼ばれる01のラベルになりますが、脳波という滑らかな波形データ、つまりソフトラベルを学習データに扱うことで、過学習を防ぐ効果もあります。

これにより、技術伝承という観点でも、AIのパフォーマンス精度という観点でも脳波データを扱うことはメリットだということがわかるかと思います。

まとめ

『ブレインテック×AIで製造業をサステナブルに』第1回目の今回は製造DXにおける脳波とAIの活用方法とはどういうものかについてご紹介しました。
少子高齢化が著しい昨今、今ある技能をどのように次世代に伝承していくか、また人手不足による製造現場をどのように改善していくかが課題となります。
またサステナビリティも注目を浴びており、働き方改革が急務となっております。

働く現場が過渡期を迎えているいま、「ブレインテック×AI」によって働く現場がよりサステナブルに変化していくことが期待されます。

次回の第2回目では、より技術的な側面も交えながら弊社の取り組んでいる脳波を扱ったAIモデル開発についてご紹介いたします。


■ 本ページでご紹介した内容・論文の出典元/References


「平成30年版 情報通信白書」第3章 ICTによる生産性向上と組織改革(総務省)

https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h30/pdf/n3100000.pdf


「2022年版ものづくり白書」第4章第2節 ものづくり人材の能力開発の現状(経済産業省)

https://www.meti.go.jp/report/whitepaper/mono/2022/pdf/honbun_1_4_2.pdf


「2022年版ものづくり白書」第4章第3節 ものづくり人材に係るデジタル技術の活用状況(経済産業省)

https://www.meti.go.jp/report/whitepaper/mono/2022/pdf/honbun_1_4_3.pdf

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