Enterprise SONiCで実現するEVPNマルチホーミングとVXLANマルチテナント構成
はじめに
データセンターネットワークにおいて、冗長性 (Active-Active) とテナント分離を同時に満たす構成は、もはや特別なものではありません。
一方で、ベンダーロックインを回避しつつ、実運用を前提とした設計・構築を行うためには、Open Networkingとその実装ノウハウが不可欠です。
本記事では、Broadcom SONiC (Enterprise SONiC by Broadcom) を用いて、EVPN/VXLAN (EVPN マルチホーミング)+ VRFベースのマルチテナント を実際に構成・検証した内容をもとに、以下3点を、構成情報と検証結果を交えて解説します。
・どのような設計パラメーターで
・どの機能を組み合わせ
・どこが設計上の要点になるのか
なお、Broadcom SONiCについては、こちらの記事で解説しております。
全体構成概要
全体構成は上記の通りですが、細分化すると以下の4層で整理できます。
1. Underlay (L3ネットワーク)
・Spine:2台 (Spine1 / Spine2)
・BorderLeaf:2台
・Leaf:4台
BGP構成では、SpineをRoute Reflectorとして配置しています。
2. Overlay (EVPN Control Plane)
・BGP EVPN (address-family l2vpn evpn)
VNI情報の集約にはadvertise-all-vniを活用し、各ノードのLoopbackをVTEPとして配置しています。
3. VXLAN Data Plane
VLANとVNIは1:1で対応させ、各VRFにはL3VNI (VLAN1000 / 2000)を割り当てます。
これにより、VTEP間でのスムーズなVXLANトンネル形成を実現しています。
4. Edge冗長 (EVPN Multi-homing)
・BorderLeaf–Router間:LACP + EVPN Ethernet Segment
・Leaf–Server間:LACP + EVPN Ethernet Segment
Active-Active構成を採用することで、片系に障害が発生した場合でも通信を中断させることなく継続できます。
設計の要点①:EVPN マルチホーミング (ESI-LACP)
BorderLeaf側
BorderLeaf1/2では、RouterA/Bに対して以下を設定しています。
・PortChannelにsystem-macを設定
・同一のip anycast-mac-address
・evpn ethernet-segmentによるESI定義
これにより、Router側からは1つの論理的なLACP接続として認識され、BorderLeaf片系障害時もトラフィックは自動的に切り替わります。
Leaf側
Leaf–Server間でも同様に、
・Trunk PortChannel
・VLAN11–13 (Tenant A)、VLAN21–23 (Tenant B)
PortChannel単位でESIを割り当てを行い、サーバー収容部でもActive-Active冗長を実現しています。
設計上のポイント
system-mac/anycast-macは全ノードで統一し、ESIは接続単位で設計しています(PortChannel単位)
Router収容部とServer収容部のどちらにおいても、設計の基本方針や考え方は共通です。
設計の要点②:VRF+L3VNIによるマルチテナント
本構成では、2テナントを想定しています。
・Tenant A:Vrf10010
・Tenant B:Vrf10020
各VRFに対して、
・L2VNI(例:VLAN11 → VNI10011)
・L3VNI(VLAN1000 → VNI11000)
を割り当て、VXLAN VTEP上で以下のように紐づけています。
例:
map vni 10011 vlan 11
map vni 11000 vlan 1000
map vni 10011 vrf Vrf10010
map vni 11000 vrf Vrf10010
Anycast Gateway (.254/24)を各VLANに設定することで、Leaf間移動時もデフォルトGWは変わりません。
検証結果
検証結果①:冗長構成の動作確認
以下の障害シナリオを検証しました。
・BorderLeaf片系ダウン
・Leaf片系ダウン
・複数ノード同時ダウン→復旧
検証の結果、長時間の通信断を発生させることなく処理が行われ、障害復旧後も自動的にEVPN マルチホーミング動作へ復帰することを確認しました。
また、トラフィックがBorderLeafやLeafに適切に分散されることも実機上で実証できています。
検証結果②:マルチテナントの分離確認
異なるVRF間通信
・ServerA ↔ RouterB(異VRF / 疎通不可)
・ping結果:Destination Net Unreachable(期待通り)
同一VRF内通信
・ServerA1 ↔ ServerA2(疎通可能)
・ServerB1 ↔ ServerB2(疎通可能)
いずれも正常に通信可能であり、VRF単位で通信が完全に分離されていることを確認しました。
Broadcom SONiCで実装する際の注意点
本検証から、以下が重要なポイントとして挙げられます。
・EVPN マルチホーミングは、LACP / system-mac / ESI / anycast-mac の整合性が最重要
・VRFとVNIの紐づけは、L2VNIとL3VNIの両方を意識する必要がある
・構成要素が多いため、パラメーターシートによる設計管理が不可欠
まとめ
今回の検証を通じ、Broadcom SONiCを用いることで「EVPN/VXLAN」「EVPN マルチホーミング(Active-Active冗長)」「VRF+L3VNIによるマルチテナント」といった要素を、実運用にも十分耐えうる構成として実装できることが確認できました。
また、構成図・パラメーター・Config粒度まで落とし込むことで、単なる検証ではなく、再利用可能な設計テンプレートとして整理できる点も大きな成果と考えます。
マクニカでは、このような Open Networking / SONiC 環境における設計・構築・検証ノウハウ をもとに、PoCから実導入まで支援しています。
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