icetana Limited

アイセタナ

警備人材の不足や高齢化、安心・安全へのニーズの高まりなど、昨今、施設警備に求められるものはより複雑化してきている。
AI画像解析を活用して、それらの課題解決の糸口を見つけたい―。
三菱地所株式会社の「新たな警備体制」構築の取り組みを取材した。

本事例のポイント:icetana で実現する警備の効率化・高度化

  1. 労働力人口減少の社会課題への危機感、人手に頼る施設管理からの脱却
  2. AI 画像解析で通常と異なる状態を常に検知、現場の警備隊も導入効果を高く評価
  3. 導入後も現場の声を反映し、より価値あるソリューションに進化

お話を伺った方

次世代の異常検知ソフトウェア「icetana」が支える三菱地所の挑戦
左から、株式会社マクニカ 小川 雅央/三菱地所株式会社 渋谷 一太郎 氏/
三菱地所株式会社 釜地 梨王 氏/株式会社マクニカ 山田 悠祐

三菱地所株式会社
運営事業部 兼 DX 推進部 兼 関西支店
統括 渋谷 一太郎 氏

運営事業部 管理企画ユニット 兼 DX 推進部
副主事 釜地 梨王 氏

「次世代型施設運営モデル」で目指す 新しい警備のビジョン

 東京駅前、丸の内エリア。東京の玄関口であるこの街には、オフィスワーカーや観光客など多くの人々が集まる。そのランドマークとしてそびえるのは三菱地所株式会社が所有・管理する丸の内ビルディング、新丸の内ビルディングだ。

三菱地所は東京の大手町・丸の内・有楽町、通称「大丸有エリア」を筆頭に、オフィス、商業施設、ホテル、空港といった様々なアセットタイプを全国に展開している総合不動産デベロッパーである。住み・働き・憩う人々にとって魅力あふれる街をつくる。この基本使命実現のために、三菱地所はより付加価値の高い「次世代型施設運営モデル」に注力してきた。「これまでにない新しい管理スタイルを追求することで、来街者やオフィスワーカーに今まで以上の安心・安全や快適さを提供したい」。三菱地所 渋谷氏は、ここ丸の内エリアで新たな領域にチャレンジしていると語る。

 三菱地所が新しい施設管理体制の構築に乗り出した背景には、労働力人口の減少という社会課題があった。「警備や清掃の分野で人材採用はますます難しくなってきている。管理面積も増えていく中で、このまま人手に頼る管理を続けて今後、街は立ち行くのだろうか」。渋谷氏は当時の課題意識をこう振り返った。
特に警備分野の業務効率化と高度化は重要なテーマだった。「我々が所有している大丸有エリアや全国的な拠点は非常に多くの人が行き交い、モノや企業など、様々な資産が一堂に会する場所。それらの安全管理のための警備は本当に重要なこと」だと、同じく三菱地所の釜地氏は話す。

施設運営で核となる警備の領域で、人員不足にいち早く手を打ちたい。来街者へさらなる安心・安全を提供したい。そのためにはAI をはじめとしたテクノロジーの導入が不可欠である。そう考えた三菱地所は次世代型カメラシステムのAI 画像解析を活用した「新たな警備体制」を組むことに着手した。そしてAI 画像解析ベンダーと協業、複数のテクノロジーを導入した。その一つが株式会社マクニカが提供する、異常やその予兆を防犯カメラの映像から検知するソリューションicetana(アイセタナ)である。

現場の声で進化するicetana

[新丸の内ビルディング 防災センターで活用されるicetana]
[新丸の内ビルディング 防災センターで活用されるicetana]

 三菱地所がicetana の存在を知るきっかけとなったのは、実は警備会社からの提案だったという。「実際にシステムを使用する警備員がいい技術だと思うものを採用したかったので、ありがたい申し出だった。当時は画像解析ができるソリューションは聞いたことがなかったので、ぜひ試したいと検証させていただいた」(渋谷氏)。警備レベルを引き上げたいと考えていた商業施設を選び、2021 年6 月から7 カ月に及ぶ実証実験を開始。「館内のどこで、どのカメラを使い、何を検知するのか」や、機能に合わせ「何をどのように解析すると有効に活用できるのか」などの観点から検証を行った。その結果、実証実験中に違法駐輪の防止など効果を実感。翌年にはそのノウハウを持ってくる形で丸ビル、新丸ビルへのicetana 導入に踏み切った。

 丸ビルは地上37 階・地下4 階、新丸ビルは地上38 階・地下が4 階の大型ビルだ。さらにオフィスと商業の複合ビルのため、警備のハードルは商業施設に比べ一層高い。「オフィスワーカーや観光客、ベビーカーのお子様など多種多様なお客様が集まっている。歩くスピードも来館の目的も異なり、転倒やエスカレーターでの危険行為など様々な問題が起こる。そのためAI 画像解析を活用した新しい警備体制がより生きてくるのではないかと思った」(渋谷氏)。

丸ビル、新丸ビルで行った2 回目の実証実験では協業している警備会社であるALSOK 東京株式会社、そしてソリューションを提供するマクニカとの連携が非常に重要だったと渋谷氏は言う。「例えば検知の頻度などについて現場の警備隊がフィードバックをすると、それに対しマクニカの営業担当がicetana 社と調整してくれて、改善が行われる。このような製品改善が常に行われ、icetana の精度は格段に上がっていき管理がしやすくなっていった」。システムを導入して終わりではなく、その
後も各社の連携を深めることが画像解析システムを活用するのに最も大事なことだと体感した。

まるで人の目 icetana の“違和感” を検知する技術

[新丸の内ビルディング 警備の様子]
[新丸の内ビルディング 警備の様子]

 従来の警備は警備員が歩いて行う巡回立哨業務や、複数台設置された監視カメラの映像を目視する業務など、警備員の肉体的、精神的負担が非常に大きかった。AI による画像解析を用いて業務を補助するicetanaの導入で、警備員の業務負担が軽減したと両氏は言う。

また、24 時間365 日動作し続けている監視カメラで事象を覚知できるようになることで、把握できる事案は圧倒的に増加し警備の高度化にも寄与している。「今までの警備体制で質を向上させるためには、巡回頻度を増やしたり100 台以上あるカメラの映像を見逃さないようにしたりするしかなかった。しかしicetana 導入でインシデントに即時対応することができるようになり、警備の高度化の成果も出ている」と釜地氏は話す。

 icetana は検知の定義を事前に設定するのではなく、カメラごとに通常状態を学習し普段の様子との違いを検知する。渋谷氏、釜地氏ともにこれを高く評価している。「特定の動作ではなく“違和感” を検知するというのは、人の目と同じレベルの高度な警備を担保しており非常に優れた技術だと感じる」(釜地氏)。この技術によって、ビル周辺での違法な駐輪や喫煙、館内での転倒事故、またそれらに加えてカラスが人をつつくといった事前に予期できなかった事象も検知が可能になり、警備のみならず周辺の環境整備にも役立っているそうだ。「これまで表面化されなかったインシデントを検知することで施設管理の効率化、高度化、また施設運営の改善にも役立っていくと思う。従来の警備から一歩進んだプロセスに入ってきているのではないか」(釜地氏)。

「警備隊の声を反映してicetana はどんどんアップデートされていく。習熟度が上がるほど使いやすくなるため、現場の警備員が使いこなすことができる点がicetana の一番の評価ポイント。そうでないと本当の警備の効率化や高度化にはつながらない」と渋谷氏。「実際に警備隊の隊長からも業務がしやすくなったという声が上がった。システムの導入を進めた三菱地所として、このような言葉は最もありがたい」(渋谷氏)。

丸の内を起点に 三菱地所のチャレンジは続く

次世代の異常検知ソフトウェア「icetana」が支える三菱地所の挑戦

 人件費高騰や人手不足の問題の深刻さを、今やデベロッパー、警備会社ともに痛感していると釜地氏は語る。「icetana 導入による警備の効率化で余裕ができたリソースは、別のビルやエリアでしっかり活用していくなど、その施設単体ではなくエリア全体や全国的な視点で連携していくことが重要なフェーズになっている」(釜地氏)。さらに渋谷氏は「三菱地所は様々なアセットタイプを所有しており、例えば空港は広大であり巡回の場合はかなり距離が長くなる。このような施設ごとのニーズに応じて、ロボットやカメラを組み合わせ、警備体制を変えることが今後は求められるのではないか」とした。

最後に今回のicetana 導入、活用を通じて次世代型施設運営モデルの深化・拡大を担う渋谷氏、釜地氏に今後の展望を伺った。「AI カメラやロボットなどソリューションは様々あるが、技術の導入がゴールではない。我々が見据えているのは課題解決であり、お客様の満足度向上であり、施設の収益最大化。先見の明を持ち、地に足ついたベストなソリューションを常に見出していきたい」(釜地氏)。「人が多く集まる丸の内エリアで安心安全に資するのであれば、当社の施設のみならず全国の施設で活用ができる。つまり日本全体の社会課題の解決につながる可能性がある。我々は丸の内エリアを大きなイノベーションフィールドだと考えている。東京駅前、丸の内から、新しいテクノロジーの活用事例を広く発信していくことで、世の中の社会課題解決の一助になりたい。パートナーとしてマクニカと一緒に進めていけると期待している」(渋谷氏)。街づくりで社会に貢献し真の価値を創造し続けるため、三菱地所は今後も挑み続ける。

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