Eコマースやオンラインでの商品購入が急速に普及し、消費者の購買活動の形が変わっています。また、オフィスワーカーはリモートやハイブリッドな新しい働き方へとシフトしています。商業施設に求める価値、オフィスに求める価値が変化しています。

本記事では、サービスロボットが他テクノロジーと連携することで、売上アップ、管理コスト削減の2つの側面から、スマートビルの価値を高めるソリューションをご紹介します。

最先端のセンサー技術を活用してデータを取得、AIで分析・解析して、ロボットがアクションを実行する。マクニカでは、部分的な単一ソリューションだけでなく、テクノロジーを連携させることで新しい価値を創造し、お届けします。

コストダウンへの貢献~必要十分で効率の良い施設管理を実現~

サービスロボットと人、センサー、AI、外部システムの連携によって、スマートビルにはどのような価値がもたらされるのでしょうか。
その1点目は「コストダウンへの貢献」です。
施設管理は、現在労働力不足やエネルギー価格の上昇といった環境にあり、持続可能な仕組みの構築が求められています。安心・安全・清潔の確保は常に求められます。多種多様な要望に応えるフレキシビリティも必要です。

そこで提案したいのが、施設の状況に応じて、必要十分な業務を効率的に行うことです。具体的には、施設管理における清掃、警備、設備点検を「時間基準(TBM:Time Based Maintenance)」から「状態基準(CBM:Condition Based Maintenance)」に転換することが挙げられます。

TBMでは、例えば「月に1回の定期点検」「3時間ごとの巡回警備」「1日1回のトイレ清掃」のように、時間基準でメンテナンスを実施します。作業計画が立てやすいメリットがある一方、過剰品質や品質不足になる可能性があります。
CBMでは、施設や設備の状態を監視しながら「障害の予兆や異常を検知したら即時対応」「利用者が累積100人に達したらトイレ清掃」のように、利用状況や状態に合わせてメンテナンスを実行します。品質基準に基づいて過不足なく業務を行うため、常に安心・安全・清潔な状態を維持できます。

CBMの実現には、施設の利用状況や状態の監視、異常の迅速な検知、業務プロセスの最適化が必要です。ツールとデータを活用して、見直しを行いながら、業務プロセスを継続的に最適化する必要があります。

マクニカは、多様なセンサーを使って、施設管理のCBM化を支援します。最適な精度・粒度・頻度でデータ取得し、AIによる分析・可視化を行って、必要な対応を判断します。空港やショッピングモールで採用例の多い清掃ロボットやドローンを活用して、現場対応を効率化します。人も含めて、業務プロセスを最適化します。

売上アップへの貢献~新しい購買体験の提供~

ロボットと人、センサー、AI、外部システムの連携が、スマートビルにもたらす価値の2点目は「売上アップへの貢献」です。

ECの普及によって、リアル店舗に求める価値が変化しつつあります。コロナ前は「Webで情報収集して実店舗で購入する」「休日は繁華街、帰宅時は駅周辺でショッピングを行う」といった行動が多く、店舗には「品ぞろえや便利さ」が求められていました。
アフターコロナでは「実店舗で試して、ECで購入する」「日常的な買い物は自宅周辺で済ませる」といった行動が増えると考えられます。わざわざリアル店舗に行く場合、「非日常」を求めるようになります。リアル店舗に足を運んでいただくための理由付けが必要です。

そこで、マクニカでは接客ロボットをはじめとする多彩なテクノロジーを活用し、お客様が知らなかった情報を知る「驚き」、商品に感じる価値の「増幅」、各種サービスの利用で得られる「快適」や「便利」、新しい商品と出会う「喜び」といった新しい購買体験の提供に取り組んでいます。
お客様の視点に立ち、嗜好や環境に合わせて最適化したアクションを実施。フィードバックに基づき、有効な施策へと継続的に改善します。マクニカではこうした取り組みを、店舗やテナントだけでなく、施設やデベロッパーの方々と一緒に推進したいと考えています。

施設自体のスマート化によって、施設やデベロッパーにはどのような価値があるのでしょうか。
テナント売上が向上すれば、施設側は歩合賃料の増収が見込めます。またテナントに対する付加価値を向上できるため、空室削減や固定賃料の増収にもつなげられます。そして、テナントとの共創により、新たな売上機会を創出できます。

施設やデベロッパーの皆様と一緒に取り組むことで、テナント単独ではアクセスできない施設全体のデータを活用し、テナント単独では実施できない、効果的な施策を実行できます。施設とテナントの新たな共創モデルの創出に、一緒に取り組んでいきましょう。

それでは、具体的にどのような顧客体験を届けられるのでしょうか。ショッピングモールでの実現イメージを紹介します。

<デジタルサイネージ>
ショッピングモールに入ると、デジタルサイネージによるウエルカムボードが迎えてくれます。セール情報、新規オープン店舗、当日のイベントなどが掲載され、知らなかった情報を知るきっかけになります。検温やマスクのチェックも行います。

<混雑予測>
イベントの混雑予想やフードコートの混雑時間の予測を案内します。スムーズにショッピングを楽しむために役立つアドバイスを提供します。

<体験型店舗>
期間限定の体験型店舗に入ると、量販店にはない、こだわりの商品が展示されています。

<接客声かけ>
商品を手に取って見ていると、ロボットが近寄ってきて、商品についての案内を始めます。POPだけではわからなかった、作り手の思いやストーリーを説明してくれます。

<プロフェッショナルな接客>
遠隔にいるメーカーの担当者が、ビデオ通話で詳しい情報を説明してくれます。また、ファッションのプロが、遠隔からコーディネートを提案してくれます。カリスマ店員による接客も容易に受けられます。海外からのお客様は、リモートから多言語でお手伝いします。

<EC購入品の受け取り>
最近増えているのが、ECで購入した品物を店頭で受け取る「BOPIS(Buy Online, Pick up in Store)」と呼ばれるサービスです。店頭にいるロボットで来店のチェックインを行うと、品物の準備ができたタイミングで通知が届き、待たずに受け取れます。

<商品リコメンド>
今までの購入履歴や売れ筋商品に基づくリコメンドを行います。

<体験した商品のEC購入>
リアル店舗で気になった商品は、QRコードから簡単にECサイトのお気に入り登録ができます。ECでの購入とリアル店舗での体験をつなぐことで、お客様とのエンゲージメントが高まります。

<タイムセール>
館内では巡回するロボットがタイムセールを行う店舗の案内をします。イベントの開催時間が近づくと、イベントの案内も行います。

<館内インフォメーション>
館内で困ったことがあれば、巡回しているロボットが答えてくれます。よくある質問にはその場で回答。トイレなどはその場所まで道案内します。ロボットが回答できない質問には、遠隔にいるスタッフが対応します。

<閉館ご案内>
閉館時間が近づくと、移動型サイネージとして巡回していたロボットが閉館案内を始めます。各ゲートの混雑具合を見ながら、比較的スムーズに出られる駐車場出口などをおすすめしてくれます。

いかがでしたでしょうか。こうした来館者の体験は、ロボット、IoT、AIを活用することで実現できます。

価値の増幅を生み出すサイバー・フィジカル・システムとは

本記事をお読みの方の中には、すでにセンサーやカメラによるデータ取得に取り組んでいる方も多いかもしれません。しかし、データ取得、分析、可視化には取り組んでいても、「分析結果を活用し、改善効果を実感できている」という企業は、まだ多くないのが実情ではないでしょうか。
マクニカでは「見える化だけで終わらせない」ことにこだわっています。データの見える化によって得られた示唆から現場のアクションにつなげること。そして、効果測定と改善によって価値を増幅し、目に見える効果を確実に上げることが大切です。ここまで実現できなければ、データの取得は単なるコストアップ要因になります。

この価値増幅を生み出すのが、マクニカが具現化するサイバー・フィジカル・システムです。まず、センサーやカメラ、外部データを活用し、リアル環境からデータ収集を行います。半導体の技術商社であるマクニカは、センサーモジュールを豊富に取り扱っており、用途に合わせて最適なものをご提案します。収集したデータは、AIで解析し、インテリジェンスへと昇華します。それに基づき、現実世界において、ロボットやシステムの制御、人の業務への示唆を実行します。こうしたアクションの結果は、再びデータとして収集されます。
このように、センサー、AI、ロボットの連携によって、価値が増幅します。各段階で先進テクノロジーを活用し、伴走型でプロジェクトを推進します。

それでは、先ほど紹介した活用シーンでは、センサー、AI、ロボットをどのように連携させて顧客体験を届けるのでしょうか。

店舗には、監視カメラ、人感センサーが設置され、過去の混雑履歴データがあります。さらに、イベント情報、新規オープン店舗の情報が、データとして追加されます。こうしたインプットから人流分析を行い、混雑時間や場所を分析。同時に、性別や年齢などの属性分析も行います。分析結果に基づき、お客様の属性・環境に最適化したサービスを提供します。

店舗内では、売上状況や商品情報を活用します。お客様の動線を分析しながら、長時間滞在しているお客様には、ロボットが積極的に声かけを行います。万引などの不審行動が見られた場合にも、声かけによって防犯を行います。
お客様が興味を示した商品についてのご案内を行い、さらに、よく一緒に購入されている商品をリコメンドします。適切なタイミングの接客によって、売上アップに貢献し、お客様に役立つ情報の提供によって、店舗の評価をアップします。

ECで商品購入して店舗で受け取るBOPISサービスでは、商品を受け取るために長い行列に並ぶようでは、お客様の体験の質が低下します。そこで、ECでの購入時にQRコードを発行。店頭の端末に見せると商品が準備され、準備が整ったら通知が届く仕組みによって、快適な体験を提供します。
また、実店舗への来店は、他の商品にも触れていただく絶好の機会です。過去の購入履歴やお客様の動線を分析しながら、関連商品をリコメンドして次の購入へと導きます。ロボットを通じて、過去の購入商品のフィードバックをいただき、リコメンドの質も高めます。利便性を向上させて、売上アップの機会を作り、お客様にファンになっていただきます。

店舗の外では、ロボットが巡回移動しながら、状況やタイミングに合ったご案内を行います。セール情報やイベント情報、タイムセールが始まる店舗のご案内を行い、店舗の入り口でアナウンスをします。もうすぐイベントが始まるタイミングで、まだ席に余裕がある場合には、イベントへの呼び込みも行います。

こうした施策を通じて、お客様がお得に、楽しく、さまざまなお店に立ち寄る機会を増やし、売上機会を増やします。さまざまなご案内を身近かつ手軽に利用でき、閉店・退館が混雑なくスムーズに案内されることで、居心地もアップします。
入館から退館まで、お客様の嗜好や状況に合わせて、快適に過ごしていただくための積極的な情報提供を行い、非日常的な体験をお届けします。お客様には、新たな商品との出会いにワクワクしながら、快適にショッピングを楽しんでいただけます。

本記事では、ロボット、IoT、AIの連携で、スマートビルの価値を高めるソリューションを紹介しました。いずれも、さまざまなデータの活用によって、来店客や施設の状態に合わせた、効率の良いサービスや新しい体験を提供します。
人々がサービスロボットを活用して、より快適で楽しく仕事や生活ができる。私たちマクニカは、そうした世の中の実現に貢献していきます。

お問い合わせ