SONiC 実践ハンズオンセミナー 講演レポートPart1 ~ホワイトボックススイッチで学ぶ、オープンネットワーク OS の基本操作~

はじめに
本記事は、2025年8月26日に開催された SONiC 実践ハンズオンセミナーで講演した内容です。
SONiC の基本アーキテクチャーからコマンド体系まで、初心者の方でもわかりやすくご紹介しています。
プレゼンテーション資料をご希望の方は、下記よりダウンロード可能ですのでぜひご参照ください。
Broadcom SONiCについて
SONiC概要
SONiCは、Software for Open Networking in the Cloudの略称で、複数ベンダーのスイッチやASICで動作するLinuxベースのオープンソースネットワークOSです。
Microsoft社が開発し、2016年にオープンソースとしてコミュニティに公開されました。
SONiCの特長は、スイッチ抽象化レイヤー(SAI)によりハードウェアとソフトウェアを分離できる点で、これにより最先端の800Gスイッチにも柔軟に対応可能です。また、ソフトウェアを複数のコンテナ化されたコンポーネントに分割することで、機能追加やアップデートを迅速に行える構造となっています。
SONiCは毎年5月と11月にリリースされており、その都度新しい機能追加やバグ修正が行われています。
さらにSONiCはBroadcom・Intel・NVIDIAなどのASICベンダー、Celestica・Edgecore・Micasなどのスイッチベンダー、Google・ Microsoftなどのクラウドベンダーが参加する活発なエコシステムのもとで進化を続けています。
最新のユースケースに対応するための開発が加速することで、ここ数年の採用事例が急増し、データセンターネットワークの主要なOSになりつつあります。
その背景には、BGPやRDMAなどのフルセットのネットワーク機能を提供できることと、複数の大手クラウドサービスプロバイダーによるデータセンターでの長年の運用実績があります。
また、オープンソースであるため特定企業による買収や独占の心配がなく、監視ツールなどのサードパーティ(3rd Party)の製品との親和性も高いという特徴もあります。
SONiC基本アーキテクチャー

SONiCの主な3つのバージョン
Community版:最も多くのASICとスイッチベンダーに対応。ただし、サポートはコミュニティベースとなるため、保守サポートが懸念と考えるお客様向けに、Community版SONiCのサポートを行っている会社もあります。弊社取り扱いAvizNetworks社もそのうちの一社です。
Broadcom版:Broadcom ASICを搭載した多くのスイッチベンダーに対応。サポートは各スイッチベンダー経由で提供されます。
Edgecore版:BroadcomやIntelのASICを搭載したEdgecore製スイッチに対応し、Edgecore自身がサポートを提供しています。
その他の主要な3つのネットワークOS
OcNOS:Broadcom ASICを搭載したCelestica, Edgecore, Ufispace製スイッチに対応。開発元のIP Infusion社がサポートを提供しています。
Beluganos:Broadcom ASICを搭載したEdgecore, Ufispace製スイッチに対応。NTT社がサポートを提供しています。
Cumulus:以前はBroadcom ASICにも対応していましたが、NVIDIA社による買収後はNVIDIA ASICおよびNVIDIAスイッチ専用となり、サポートもNVIDIA社が提供しています。
※今回開催したハンズオンセミナーでは、Broadcom SONiCを取り扱いました。
コミュニティ版と商用版の違い
次に、無償で使えるコミュニティ版のOSS SONiCと、Edgecore 版SONiCとの違いについて説明します。
Community版SONiCは、Microsoft社が公開した後は、世界中のコミュニティ参加者によって継続的に機能開発されています。
Edgecore版SONiCも、このCommunity版SONiCがベースとなっており、Edgecore社はCommunity版SONiCのVersion 202211をベースに、自社スイッチ向けの独自機能を追加し、安定した動作を実現するよう開発を行っています。
なお、どちらも共通リリースとなっており、データセンター用やサービスプロバイダー用といったユースケース別の専用パッケージは用意されていません。

機能面の比較として、Community版SonicとEdgecore版Sonicには特徴的な違いがあります。特に、プラットフォームの違いが重要な要素となります。
Community版SONiC:BroadcomやIntelなどのASICを搭載した、複数ベンダーのホワイトボックススイッチで利用可能
Edgecore版SONiC:Edgecore社製スイッチ専用に設計されており、他社製スイッチでは利用不可
お客様目線でのメリットとして、 Edgecore版SONiCは、メーカーによる正式なサポートが受けられるため、トランシーバーやケーブルなどの周辺機器との互換性検証が済んでおり、安心して導入・運用できます。また、保守対応もEdgecore社が直接行うため、商用環境での信頼性も高く、サポート体制が整っています。
SONiCユースケース
次に、SONiCで具体的にどんな機能が活用できるのか、スイッチのポートスピードの例をまとめた表をご紹介します。

用途別に求められるネットワーク機能とスイッチの構成は、以下のようにご紹介しています。
AI/ML・ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)向け:高速な400G/800Gスイッチで、EVPN/VxLANやRoCEv2などの低遅延・高帯域機能が活用されます。
データセンター向け:25G/100Gスイッチを中心に、EVPN/VxLANやMCLAGなどの冗長性・拡張性に優れた機能が使われます。
エンタープライズ向け:1G/10Gスイッチで、VLANやLACPなどの基本的なネットワーク分離・帯域拡張機能が採用されます。
リテール/キャンパスネットワーク向け:PoE(Power over Ethernet)対応スイッチにより、IP電話や監視カメラなどの機器に電源供給を兼ねた接続が可能です。
海外ではMicrosoft、Alibaba、eBayなどが先行してSONiCを導入してきましたが、近年では日本国内でも採用事例が急増しています。JANOGやSONiCワークショップなどの技術イベントでも、具体的な事例が多数紹介されています。
SONiC国内採用事例

LINEヤフー:CLOSデータセンターにSONiCを導入。マルチベンダー対応、設定自動化、高性能が導入のポイント。
KDDI:データセンターにてSONiCを採用。ZTPによる構築自動化、マルチベンダー化 が導入のポイント。
三井情報(MKI):創薬向けGPUクラスターにSONiCを導入。拡張性、ベンダーロックイン回避、マルチテナント対応が導入のポイント。
NTT PCコミュニケーションズ:監視網ルータにSONiCを採用。安価なサードパーティ製光モジュールとの互換性が導入のポイント。
三井E&Sシステム技研:データセンターの大規模ネットワークにて、Edgecore SONiCとEdgecore製スイッチを約100台規模で導入。自動運転データの収集・転送用途に活用され、PoCフェーズから実際の商用フェーズでもSONiCが使用されるケースとなっている。
※三井E&S様の導入事例詳細はこちら
SONiC入手方法
SONiCの入手方法は2種類あります。
ビルド済みイメージを入手する方法と、コミュニティ版SONiCのソースコードを入力して自分でビルドする方法です。
コミュニティ版SONiCについては、下記のGithubの中からダウンロード可能です。
※ダウンロードはこちら
商用版SONiCについては、各ベンダーのダウンロードサイトにて提供しています。
SONiCインストール方法
次にインストールについてです。
一般的にはホワイトボックススイッチにONIE(Open Network Install Environment)が備わっているため、これを使ってインストールを実施します。
コンソール接続で機器にログイン後、マネジメントポート経由でイメージサーバーからダウンロードする方法や、USBからスイッチにイメージを取り込む方法などがあります。弊社のラボでは、DHCPサーバーから自動でダウンロードする形を採用しています。

※参考資料はこちら
まとめ
本記事では、SONiCの基本アーキテクチャーやエコシステム、各バージョンの違い、ユースケース、そしてインストール方法まで、初めての方でも理解しやすいように体系的にご紹介しました。
SONiCは、オープンソースでありながら商用環境でも十分に活用できる柔軟性と拡張性を備えたネットワークOSです。特に、ホワイトボックススイッチとの組み合わせにより、コスト効率と技術的自由度を両立できる点が、多くの企業に支持される理由となっています。
Part2では、SONiCの操作に欠かせない「コマンド体系」について詳しく解説します。
実際の運用現場で使われるCLI(Command Line Interface)や、設定・監視に役立つ主要コマンド群をご紹介する予定です。
「構築・運用に役立つ知識を身につけたい」とお考えの方は、ぜひPart2もご覧ください。
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