InnerEye Ltd.

インナーアイ

USER PROFILE

株式会社荏原製作所様
1912年に創業以来、産業機械メーカとしてポンプをはじめ、送風機や冷凍機、コンプレッサ・タービン、廃棄物処理施設、半導体製造装置など、「社会・産業・くらし」を支えるグローバルな事業を展開。荏原のコア技術を強みに持続可能な社会と進化する豊かなくらしの実現に貢献している

荏原製作所本社 口径1140mmの渦巻きポンプ「熱と誠」モニュメントの前にて

サマリー

背景
●荏原グループ「ありたい姿」の実現と社会課題の解決・改善を達成するため、データドリブンを行うことを目指す

●従業員の資質や適性データを可視化し、効率・効果的な人材計画や人材配置の実現
課題
●本人の申告では主観が入り、データに確信がもてない

●客観的に判断ができる「生体情報」の取り入れ
目的

●生体反応を利用することで客観的に自分の特性を理解し、働く人のウェルビーイングにつながる
取り組み


●タスクにおける集中、興味・注意度、疲労度などのパラメーターを計測
今後
●反復的に計測することで起こる“慣れ”に対応するための閾値設定

●工場の従業員に脳波計測機器をつけながら脳波計測することで、技術継承への期待

●仮想空間、メタバース、アバターなど新たな可能性

背景

効率的かつ効果的な人材計画・人材配置の実現

荏原製作所は、2020年に10年後の2030年度に向けた長期ビジョン「E-Vision2030」を策定した。
E-Vision2030では、「技術で、熱く、世界を支える」というスローガンを掲げ、荏原グループが2030年にめざす「ありたい姿」の実現と事業を通じて社会課題の解決・改善を目指し5つのマテリアリティ(重要課題)を設定している。「E-Vision2030」の目標達成に向け、全社最適な経営判断を *データドリブンで行うことを目指し、データストラテジーチーム データストラテジー&アナリシス ディレクター 兼 HR Techシニアデータサイエンティスト 三隅光氏率いる、データストラテジーチームが20227月に発足した。

データドリブン=経験や勘などではなく、様々な種類と膨大な量の情報を蓄積するビックデータとアルゴリムによって処理された分析結果をもとに、ビジネスの意識決定や課題解決などを行う業務プロセスのこと

また、「E-Vision2030」の実現では、データドリブンな経営判断だけでなく、人材の活躍促進を重要課題の1つとして掲げ、「競争し、挑戦する企業風土」を醸成し、企業価値向上のために自ら考え行動することで変革を起こす人材の育成が欠かせないと考えている。

 三隅氏:今後イノベーションを起こす、ブレイクスルーを起こすためには、いろいろな人材が必要であり、母集団が均一化してしまうとそれに立ち向かえなくなる。世の中の様々な困難に立ち向かうためにはヒト・モノ・カネのうちの人が重要であり、人に磨きをかける必要があります。そうでなければ、やりたいことができなくなってしまうことでしょう。

従業員の資質や適性を可視化し、より効率的かつ効果的な人材計画・人材配置を可能にするため、2021年に三隅氏率いる「HR tech専門チーム」を立ち上げ、HRテックに本格的に着手し始めた。客観的なデータに基づいた情報を収集・分析することで、荏原製作所が求める人材の戦略的なデザインを行ってい

課題

データに客観性を持たせたい

現在、荏原製作所独自のピープルアナリティクスを導入し、人材の活躍促進に向けてデータドリブンで、より良い人事戦略・施策を検討しているが、本人の申告するデータは主観的という欠点がある。

データストラテジーチーム
データストラテジー&アナリシス ディレクター
HR Techシニアデータサイエンティスト 三隅 光 様



三隅氏:
本人の申告では、主観が入ってしまいそれが本当なのかが、いまいち確信が持てなかったため客観的に判断できる要素を取り入れたく検討していました。


人間の生体情報を取り入れれば、人の判断に客観性が生まれるのではと思い、何か生体情報が取れるソリューションがないか探していたところに、脳波を扱っているマクニカに出会いました。

目的

働く人のウェルビーイングを目指して

三隅氏:自分の特性を理解して、キャリアを決めることって難しいのではないか、一体どれくらいの人が自分を理解してキャリアをめているのだろうかという疑問を常々感じています。

そこで、生体反応を利用し、客観的に自分の特性を理解することができれば働く人の *ウェルビーイングにつながるのではないかまた、短期的ではなく長期的、反復的にデータを取っていくことで、条件を均一化しさらに確信度の持てるデータにし、データベース化することができるならば働く人のウェルビーイング=人材の活躍促進という会社の課題解決にも繋がるというイメージを伝えたい。それが人材の活躍促進という経営課題の解決に役立つのではないかと三隅氏。

※「ウェルビーイング」(well-being)とは、身体的・精神的・社会的に良好な状態にあることを意味する概念

結果、生体反応の計測として、脳波データから感情の変化を測定するInnerEyeソリューションであるSense Plus(センスプラス)プラットフォームが採用されることになる。

取り組み

タスクに対する集中・興味・注意度・疲労度を可視化

前述の課題を解決する試みとしてマクニカが提供する脳波ソリューションを利用し、実際の社員の業務の適性を客観的データを取得し分析する。

今回の脳波の測定の検証に関しては、荏原製作所の企画・管理系の社員20名を対象に、行動の特徴を脳波によって可視化できるかを目的に、文章のコピーやデータ入力、作文などを実施した際の脳波を計測し、各タスクにおける集中、興味・注意度、疲労度などのパラメーターを計測した。

20名の総合的な結果としては、
集中の項目では、全ての項目で高い集中力のスコアが記録され、データ入力でのスコアは文章のコピー、作文と比較して少し低く出る傾向が見られた。
興味・注意度の項目では、作文に高い反応を示す結果が一番多く見られた。文章のコピーは作文と作業自体は似ているにもかかわらず、低い反応を示すケースが多く、データ入力は19人が低い反応を示しており、明らかに文章コピー、作文とは違う結果となった。

疲労度の項目では、データ入力と作文で高めに反応するケースが多く見られたが、作文ではより高い反応を示す結果が見られた。データ入力は文章コピーに比べて作業ストレスが高い設計になっているが、結果からもそれが読み取れる。

写真:計測の様子
参考:20人分のデータ傾向の特徴を抽出すると上図となる


三隅氏:
1の脳波計測だけですべてわかるというのは難しいというのが所感ですが、1回目の結果を見て、ある程度特徴が出るのだと実感しました。
反復的に計測は必要と感じていますが、近似的にそのタスクが向いているか向いていないかの指標として使えるのではないかと思います。


データストラテジーチーム
HR Planner
青木 様



「今回初の試みだったので、一体どういったテストで脳波を測定すればいいか知識もなく検討もつかなかったのですが、マクニカがその点において相談にのってくれ、イスラエルのInnerEye社の専門家と緊密にコミュニケーションしながら、しっかり提案をしてくれたことは助かりました。今後も目的に応じて相談させてほしいです。」と青木氏

今後の予定

他職種での活用

今後、同じ被験者で計測していくかは未定だが、ある程度条件が整えられる環境にて、データ入力など何回か計測し、本当にそのタスクがその人に向いているかどうか反復的に計測していきたい。反復的に計測すると人はその作業に慣れてきてしまうので、その慣れの部分をどう排除するかそのあたりの閾値の設定は課題かもしれない。と三隅

また、今回は企画・管理系での実証だったが、これからは他の職種でも動的なデータを使っていきたい。動的に脳波を観察できればなお可能性が広がる。荏原製作所の技術力の要でもある工場での従業員に脳波計測機器をつけて、どういうことに注意がむいているかどうか計測できることで、技術継承にもつながるかと期待しています。

それには、上記人の慣れの部分への対応と、脳波の計測機器の技術革新を求められる。

BrainTech活用の可能性についての所感

今回のプロジェクトを通じて、脳波を使ったBrainTechの可能性について期待を寄せているという。「脳波を含めた生体反応をもとに客観的な判断を人材の配置に活かせる期待が持てた。また、人の意識を仮想空間、メタバース、アバターに移植できないか考え方、人格まで形成できればおもしろい」など三隅氏のアイデアが膨らむ。

荏原製作所の先進的なHRテックxデータドリブンの取り組みは、今後他社へも展開できる内容になることだろう。

終わりに

今回の実験である程度、生体反応として脳波の可能性を実感していただくことができた。
今後も引き続き荏原製作所様の目指すピープルアナリティクスを活用したHRテックおよびデータドリブンな経営判断に活用いただけるようにサポートしていきたい。

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