座学と実践で学んだ、AIの利便性と“人ならでは”の良さ
──ヤマハファインテック株式会社様
カーパーツ事業部では高級車内装用加飾パネルを、FA(ファクトリーオートメーション)事業部では検査機・加工機などの生産設備や装置を、それぞれ開発・製造・販売しているヤマハファインテック株式会社。最新技術の導入に注力しつつ、社員同士のコミュニケーション活性化を目指している同社は、AIのもつ可能性を模索するなかで、タミヤ社とマクニカが共催しているAIワークショップに着目しました。今回は実際にご参加いただいた方のうち、風口様と吉田様にワークショップの開催を希望した背景や感想などを伺いました。
本インタビューの参加メンバー
ヤマハファインテック株式会社の方々
- カーパーツ事業部CP営業部営業グループ 主事 風口 千尋 様
- FA事業部FA技術部LTグループ 社員 吉田 楓佳 様
会社の成長を見すえて参加 社員交流の目的も
――今回のAIワークショップには、何名が参加されましたか?
吉田様:企画・運営の私とは別に8名でした。営業・購買・生産など、さまざまな部署の部長に選ばれた方が参加し、当日は4人ずつで2グループを組んでもらいました。今後は参加者の皆さんを通じて、ワークショップで得た学びを各部署に共有していただく想定です。非常に和気あいあいとした雰囲気だったのが印象的でしたね。
――なぜ開催をご希望いただいたのでしょうか。
吉田様:理由は2つあり、1つは最新技術に興味があること、もう1つは社員交流のためです。弊社では社員の活力向上を目的としたプロジェクトを推進しており、今回のワークショップもその一環となります。ほかには、会社の食堂で飲み会を開いたりもしています(笑)。風通しのよい会社にすることで、より成長していきたいと考えています。
風口様:弊社にはカーパーツ事業部とファクトリーオートメーション(以下、FA)を専門とする2つの部門があるのですが、それぞれまったく違う製品を扱っているため、普段は交流がありません。そのため、社員交流を深めつつお互いに新しい文化を採り入れるためのプロジェクトを推進しています。
AIと人の違いを改めて認識
――当日のプログラムで、特に印象的だったものはなんですか?
風口様:最初にマクニカ様から「AIとは」の説明があり、次にタミヤ様の「自律走行AI体験」をしました。その後、生成AIの可能性の説明や生成AIを使ったアプリ「おまとめ忍者」の実践をマクニカ様に行なっていただきました。
全体を通して印象に残っているのは、やはり自分たちで実践した部分です。自律走行AI体験では小さいロボットが移動するためのコースを撮影し、AIにルートを学習させるなどの手順がありました。それを体験して、「何かを学ばせるときは、人もAIもイチから始めないといけないのだな」と改めて実感しました。AIは確かに便利ですが、使う人間の知識や指示によってアウトプットがまったく違ってくることを学べてよかったです。
――座学の方はいかがでしたか?
風口様:私は普段の業務でChatGPT-4を使っているので、説明の内容は頭に入りやすかったです。ただ、画像生成ができるAIの存在は初めて知りました。AIの歴史も教わったのですが、AIの用途や目的についてはまだ社内で浸透していない部分があります。今回の座学を受けたことで、今後の業務に活用しながら効率化していくイメージがつきました。また、最後の方に自分の業務をふせんに書いてボードに貼るというプログラムがあり、そこで「この業務はなくなってしまうかもしれない」「では、どう効率化して自分なりの価値を提供すればよいか?」といった議論ができました。
――ちなみに、ChatGPTはどのように使われていますか?
風口様:私はカーパーツ事業部所属で、北米企業向けの営業担当として新規の製品販売や展示会の企画などをしているのですが、その素案づくりなどに活用しています。自分の知識の範囲では使える言葉が限られる場合もありますが、ChatGPTは「コピーライターとして」「作家として」などと指示すればそのように書いてくれるので、パターンを出しや語感の違いの確認などに活用できます。かなり頻繁に使っていますね。
――グループディスカッションではどんなお話をしましたか?
風口様:当日は初めてお会いする方が多かったので自己紹介から始まり、「こんなことができたら、私たちの仕事って本当になくなるね」といったことを話していました。ただ、「人の心を動かすことは、AIではできないかもしれない」という議題も挙がり、今後どのように業務価値を提供していけばよいかを考えるきっかけになりました。たとえば見積書などは人が作らなくてもよい時代が来るはずですが、何かを決断するのは人でなければなりません。「そのときの話し方などによっても人に伝わる価値は変わるので、より感動を伝えられる人間になれるといいよね」という意見もありました。
――人に感動を伝えるためには、どんなことが必要だと思いますか?
風口様:感動の伝えかたや伝わりかたは人によって違うのでとても難しいことではありますが、自分が仕事に誠実であることが大事ではないでしょうか。仕事における誠意は、人に伝わりやすい部分だと思っています。
――誠実さは人にしかないものですからね。ところで、風口様は自律走行AI体験でコースをちゃんと一周できたときに、飛び跳ねて喜んだそうですね(笑)。
風口様:(笑)。今回は、分からないことを分からないなりにチームで頑張って考えました。そこでよい結果を出せて一緒に喜べるのも、人間ならではです。
使う側に求められること
――全体を通してどんな学びがありましたか。
風口様:今後は業務の中心にAIが入ってきて、私たちが手がけるファクトリーオートメーションなども含め、どんどん効率化が進むと思います。完全にAIで管理される時代になるかはまだ分かりませんが、人間がどのように頭を使い、どのように指示を出すかはきっと重要になります。普段話している言語も含めたコミュニケーションツールや、業務を早く正確にこなすためのツールを使いこなすことも求められるのではないでしょうか。一方で、AIには悪用される可能性もあり、人間の良心と理性が問われます。今後は、自分たち使う側も注意しなければならないことはひとつの学びでした。
――具体的に、どんな業務に活用できそうですか?
風口様:私の現在の業務は英語がメインですが、展示会で多言語での対応が必要になった際にはAIによる同時通訳が便利そうです。ほかにも、工場で湿度と温度を入力すると最適な塗装のパターンを出してくれたり、その日ごとの生産条件をAIが導き出してくれたりとさまざまな用途が想定されます。あとはマクニカ様に見せていただいた、喋った内容が自動で要約される「おまとめ忍者」は本当に便利だったので、ぜひ使いたいです(笑)。
――今回のワークショップを、社内のほかの方にもおすすめしたいですか?
風口様:はい。私は自分の視野が広がるとともに非常に勉強になりましたので、ぜひおすすめしたいです。今回、私は営業という立場で参加させていただきましたが、生産現場で改善をお考えの方や実際に作業されている方、AIにあまり馴染みのない世代の方にも、業務の可能性を広げるためにも受講してみてほしいなと思いました。安全第一な現場をAIで効率的に作れるなら、それはとてもよいことです。職種によって色々な観点があるので、「自分の職場ならこれが使えそうだな」といった発見もあるかなと。
――最初におっしゃったように、職場の交流が広ればやり取りが増え、そうした輪も大きくなっていきそうですね。
ヤマハファインテック株式会社
- 事業内容
- カーパーツ事業部 : 高級車内装用加飾パネルの開発・製造・販売
FA事業部 : 検査機・加工機等の生産設備・装置の開発・製造・販売 - 創立
- 1987年2月14日
- 従業員数
- 315名(2023年6月期)
- ウェブサイト
- https://www.yamahafinetech.co.jp/