また、プロセス・マイニングが注目され広まった理由として、組織のデジタル・ツイン(DTO: Digital Twin of an Organization)に対する興味関心の向上も挙げられます。プロセスの可視化が可能なプロセス・マイニングは、より柔軟かつ動的でレスポンシビリティの高いプロセスを作り出す組織のデジタル・ツイン実現の重要な要素となっています。
このような限界を克服するために、プロセス・マイニングの世界で権威のあるドイツのアーヘン工科大学PADS(Process and Data Science)研究グループの『Text-Aware Predictive Monitoring of Business Processes』という論文では、自然言語モデルと時系列データを扱える再帰型のモデルを組み合わせた新しい手法が提案されました。これまで自然言語処理とプロセス・マイニングの分野が交差された手法はめずらしく、かつ有用性が示されています。
出典:Text-Aware Predictive Monitoring of Business Processes キャプション:Fig. 2: Overview of the text-aware process prediction model. https://arxiv.org/pdf/2104.09962.pdf
ビジネスプロセスの最適化
ビジネスプロセス管理(BPM:Business Process Management)という言葉は昨今よく耳にするようになり、BPMの一つの側面を担うプロセス・マイニングよりも一般的になっているかもしれません。
AIの専門学部を持ちポーランドのAI研究の中核を担うワルシャワ工科大学より発表された『Deep Reinforcement Learning for Resource Allocation in Business Processes』では、ビジネスプロセスにおけるリソース配分を目的として、深層強化学習を二重に適用した手法を提案しています。 リソースの配分を目的とした自動化では、これまでルールベースのアルゴリズムやLSTMといった時系列に対応したAIモデル、そして近年は価値を最大化するような行動を学習できる強化学習モデルが活用されてきました。
出典:Deep Reinforcement Learning for Resource Allocation in Business Processes キャプション:Fig. 1: Training architecture diagram. https://arxiv.org/pdf/2104.00541.pdf
IBMのAIの研究所が発表した『A Unified Conversational Assistant Framework for Business Process Automation』では、自律型エージェントに構成できるスキルの種類と、これらの自律型エージェントをどのように自動化するかを議論し、さらに自然言語によるデータ検索、ビジネスプロセスにおけるタスクの自律的な実行、アラート通知など、複数の機能をサポートする会話型アシスタントを開発するためのマルチエージェントフレームワークを紹介しています。自律型エージェントの普及が進むことで自動化できない、人の創造性や頭脳が必要なタスクにフォーカスできるようになるため、バックエンド業務でも、よりビジネスプロセスの最適化に繋がります。
出典:A Unified Conversational Assistant Framework for Business Process Automation キャプション:Figure 1:Multi-agent Orchestration Overview https://arxiv.org/pdf/2001.03543.pdf
この提案を行ったIBMの『A Unified Conversational Assistant Framework for Business Process Automation』では、このようなフレームワークをベースに、出張旅費の事前申請・承認プロセスをSlack内で簡略化するアシスタントの実装例などが紹介されています。 この出張事前申請・承認についてはチャットボットを組み込んだビジネスプロセス管理ソフトウェアとして活用しています。申請者や承認者を判断し、それぞれに対応した申請・承認フェーズのうち今はどのプロセスかも判断し、申請・承認業務がシンプルになるようなサポートを実施しています。
Jonas Cremerius, Mathias Weske,Hasso Plattner Institute, University of Potsdam, Potsdam, Germany,“Data-Enhanced Process Models in Process Mining ”,Fig. 1.: Main process mining steps [5], https://arxiv.org/pdf/2107.00565.pdf
Marco Pegoraro, Merih Seran Uysal,David Benedikt Georgi, and Wil M.P. van der Aalst,Process and Data Science chair, RWTH Aachen University, Aachen, Germany,“Text-Aware Predictive Monitoring of Business Processes”,Fig. 2. : Overview of the text-aware process prediction model., https://arxiv.org/pdf/2104.09962.pdf
Kamil Zbikowski, Micha l Ostapowicz, Piotr Gawrysiak,Warsaw University of Technology, ul. Nowowiejska 15/19, 00-665 Warsaw, Poland,“Deep Reinforcement Learning for Resource Allocation in Business Processes”,Fig. 1: Training architecture diagram., https://arxiv.org/pdf/2104.00541.pdf
Yara Rizk, Abhishek Bhandwalder, Scott Boag, Tathagata Chakraborti, Vatche Isahagian, Yasaman Khazaeni, Falk Pollock, Merve Unuvar, IBM Research AI ,“A Unified Conversational Assistant Framework for Business Process Automation ”,Figure 1: Multi-agent Orchestration Overview, https://arxiv.org/pdf/2001.03543.pdf