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放送ネットワーク用スイッチ ハンズオンセミナー 講演レポートPart2 ~ホワイトボックススイッチで学ぶネットワークの基礎と放送ネットワークの特徴 放送ネットワーク編~

はじめに

本記事は、2026210日に開催された、放送ネットワーク用スイッチ ハンズオンセミナーで講演した内容です。
OcNOSの基本アーキテクチャーからコマンド体系まで、初心者の方でもわかりやすくご紹介しております。

Part1では、ネットワーク通信の基礎や、仮想シミュレータGNS3の操作、OcNOS基本操作まで、初めての方でも理解しやすいように体系的にご紹介しました。
今回のPart2では、マルチキャスト、PTPなど放送ネットワークの特長について詳しく解説します。

プレゼンテーション資料をご希望の方は、下記よりダウンロード可能ですのでぜひご参照ください。

放送ネットワークの特長

放送ネットワークの概要

従来のSDIベースの放送システムでは、映像・音声・ANCなどの信号が1本のケーブルに多重化され、物理的な配線を中心にシステムが構成されていました。
一方、IP化された放送ネットワークでは、これらの信号を映像(ST 2110-20)・音声(ST 2110-30/31)・ANC(ST 2110-40)・同期(ST 2059-2)・冗長(ST 2022-7)といった要素ごとに分解し、ネットワーク上で再構築します。

この「分解と再構築」により、必要なストリームだけを選択して受信したり、制御系とメディア系を分離したり、といった柔軟な設計が可能になります。

また、放送ネットワークは一般的に、A 面(Amber)、B 面(Blue)、制御面(Control) 3系統で構成され、メディア系は A/Bの完全二重化、制御系は独立したネットワークとして運用されます。

Routed Port・Dynamic Routing (OSPF)

一般的な企業ネットワークでは VLAN を用いて複数端末を同一セグメントに収容しますが、放送ネットワークではRouted Portを採用するケースがほとんどです。

・VLAN 方式
VLANインターフェースにIPを設定し、複数端末が同一L2セグメントに所属

・Routed Port 方式
物理ポートに直接IPを設定し、各デバイスをL3で分離

ルートの経路設定について

次にルートの経路設定についてです。

放送ネットワークのメディア面では、Spine-Leaf間でOSPFを用いたDynamic Routingが一般的です。
Static Routingでは、デバイス追加のたびに全スイッチへ手動でルートを追加する必要がありますが、OSPFを用いることで新規デバイス追加時のルート伝搬や、経路障害時の自動切り替えが自動化されます。
特に、ST2110のように多数のデバイスが接続される環境では、Dynamic Routingによる自律的な経路管理が大きなメリットとなります。

放送ネットワークで押さえるべきOSPFのポイントは以下の通りです。

Router ID
OSPF内での識別子

Area
OSPFの設計単位(放送ネットワークではArea 0が一般的)

・隣接経路を張るセグメント
OSPF Helloを交換するセグメント

redistribute
直接接続ネットワークをOSPFに載せる設定

OSPFの用途について

次に、ここまでご説明したOSPFの用途についてご紹介します。

放送ネットワークでは、SpineLeafのスイッチ間でOSPFのやり取りが発生します。
制御面についてはポートのVLANを設定する形になります。

設定・確認コマンドについて

最後に、設定・確認コマンドについてご紹介します。

Routed Port設定・確認コマンド

Routed PortへのIPアドレス設定
(config)#interface IFNAME
 - Interface modeへ移行

(config-if)#ip address <IP Address>/<Mask>
 - <IP Address>は使用するIPアドレスを指定
 - <Mask>は使用するマスクを指定

OSPF設定・確認コマンド

Loopbackアドレス設定
(config)#interface lo
 - Interface mode (loopback)へ移行

 (config-if)#ip address <IP Address>/<Mask> secondary
 - <IP Address>は使用するIPアドレスを指定
 - <Mask>は使用するマスクを指定
 - secondaryアドレスとして設定

OSPFルータIDを設定
(config)#router ospf <OSPF Process ID>
 - <OSPF Process ID>は 0-65535の範囲で使用する番号を指定

(config-router)#router-id <Router ID>
 - <Router ID>はIPv4アドレス形式で使用する値を指定


OSPFのやり取りをするセグメントを指定
(config-router)#network <Network Address>/<Mask> area <Area ID>
 - <Network Address>/<Mask>:OSPFのやりとりをするセグメントのネットワークアドレス・マスクを指定
 - <Area ID>:対象セグメントが所属するエリアのエリアIDを指定(指定可能範囲は0~4294967295)

OSPFで再配布する経路情報設定
(config-router)#redistribute connected
 - connected:直接接続経路をOSPF再配布対象に指定


※具体的なコマンドの設定例をさらに見たい方は、下記資料をご参照ください。
参考資料はこちら

マルチキャストとPTP

マルチキャスト通信とは?

放送ネットワークでは、マルチキャスト通信が広く利用されています。
ユニキャストが「11」でストリームを複製しながら配信するのに対し、マルチキャストは「1対多」を前提とした仕組みです。
この仕組みにより、配信サーバー側の負荷を抑えつつ、多数のクライアントへ同時に映像を届けることが可能になります。

マルチキャスト通信の動作概要

1.初期状態
配信サーバーは、受信者が存在しない段階でも、最寄りのルーターまでは映像ストリームを送信しています。
ただし、ルーターはクライアントからの要求がない限り、ストリームをどこにも転送しません。

2.受信要求(IGMP Join)
クライアントが視聴を開始すると、IGMP Joinメッセージを送信します。
これを受けたルーターは「このクライアントにストリームを届ける必要がある」と判断します。
また、IGMP (Internet Group Management Protocol)は、クライアントがどのマルチキャストグループを受信したいかを通知するためのプロトコルです。

3.ルーター間の経路確立(PIM)
クライアント側ルーターは、上流のルーターに対してPIM (Protocol Independent Multicast)を用いてストリーム転送を要求します。
これにより、配信サーバー側ルーターからクライアント側ルーターまでのマルチキャスト経路が確立され、ストリームが転送され始めます。

4.配信中の維持
配信中、ルーターは定期的に IGMP Membership Query を送信し、クライアントがまだ視聴を継続しているかを確認します。
応答(IGMP Report)が得られない場合、クライアントは離脱したと判断され、ストリーム転送は停止されます。

5.視聴終了(IGMP Leave)
クライアントが視聴を終了するとIGMP Leaveを送信します。
ルーター間ではPIMによる制御が行われ、不要となったストリーム転送が停止されます。

マルチキャストに必要なプロトコル

マルチキャスト配信には、以下の複数のプロトコルが連携して動作します。

・ルーティングプロトコル (OSPF/BGP)
ネットワーク全体の経路情報を把握し、パケットを適切な宛先へ届けるために使用。

IGMP(受信者最初のルーター)
クライアントが受信したいマルチキャストグループを通知。

PIM(ルーター間)
マルチキャスト経路を構築するためのルーティングプロトコル。
PIM-SMPIM-SSMなど複数のモードが存在。

<PIM のモード>
PIM-SM (Sparse Mode)
IGMPv2 と組み合わせて利用される一般的な方式
RP(Rendezvous Point)が必要
一度経路が確立されると、最適なパスへ自動的に切り替わる

PIM-SSM (Source Specific Multicast)
RPが不要で、最初から最短パスを利用
IGMPv3 と組み合わせて使用
(S,G)形式で送信元を明示するため、よりシンプルで放送用途に適している

IGMP/PIMを利用したシステム構成例

放送ネットワークでは、SDI-IP GatewayIPベースのビデオサーバーなど、多数のエンドポイントが存在します。
これらの機器は外部の管理システム(例:NMOS IS-04/IS-05)によって制御され、ネットワークは各エンドポイントからのIGMPメッセージに基づいて自律的に動作します。
ただし、ネットワークが自動で経路を選択するため、実際の転送経路を把握しづらいという課題もあります。

PTPとは

PTP (Precision Time Protocol)は、IEEE 1588に基づく高精度な時刻同期プロトコルです。

放送ネットワークでは、映像・音声のフレーム精度での同期が求められるため、SMPTE ST2059ST2110において必須の技術となっています。
PTPでは、マスターとスレーブ間で複数の同期メッセージを交換し、ネットワーク遅延を補正しながら正確な時刻を配布します。

放送ネットワークでは、スイッチもPTPに対応している必要があります。
スイッチは以下のいずれかの役割を担います。

Ordinary Clock (OC)
単一ポートのPTPノード(例:エッジデバイス)

Transparent Clock (TC)
スイッチ自身の遅延を補正情報として付加

Boundary Clock (BC)
上位から時刻を受け取り、下位へ配布する中継役

特に放送用途では、BC/TCのサポートが重要となります。
以下は、OcNOSを用いたLeafスイッチでの設定例です。

まとめ

本記事では、放送ネットワークにおけるマルチキャスト配信の仕組みとPTPによる時刻同期について解説しました。
どちらもST2110ベースのIP放送システムにおいて欠かせない要素であり、ネットワーク設計・運用の要となる技術です。
これらを理解し、適切に設計・設定・検証できることが、ST2110ベースの放送システムを安定して運用するために重要となります。

本レポートが、皆さまの現場でのネットワーク設計・トラブルシュート・システム更新の一助となれば幸いです。



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