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空気質ブログ 第3回:工場の臭気対策。法令順守だけでは不十分?まだできる悪臭対策とは

工場の臭気は、近隣からの苦情や法令違反につながります。しかし工程によってはどうしても臭気が避けられないため、「どのように対策すればよいかわからない」、「対策しても臭いが残ってしまう」とお困りの工場管理者の方も多いのではないでしょうか。

ここでは、工場の臭気のリスクを整理し、効果的な臭気対策について考えます。

臭気対策と法令順守 ~なぜ悪臭防止法を守るだけでは不十分なのか~

臭気対策を怠ると悪臭防止法違反に

工場で発生する臭気は、「悪臭防止法」によって規制されています。この法律の目的は、近隣住民の生活環境を守ることです。

工場の従業員は、日常的に臭気にさらされることで、その臭いに慣れてしまいます。そのため、自社では気づかない臭いが、近隣住民からの苦情につながることも少なくありません。行政に苦情が寄せられると、工場に対応が求められ、改善できなければ行政指導や罰則の対象になります。

悪臭防止法の基準を守っても苦情が発生

悪臭防止法では、規制手法として「特定悪臭22物質の濃度」または「臭気指数」が使われます。どちらの手法を採用するかは自治体の長によって定められ、地域の実情に応じて、敷地境界線上における規制基準(1号基準)が設定されます。

しかし、この基準を守ったからといって苦情が出ないわけではありません。人によって臭いの感じ方に差があり、また時間帯・風向き・湿度などによって臭気が変動するため、臭いが強く感じられる場合があるからです。

臭気対策は企業イメージに影響

近年、企業の社会的責任(CSR)として重視されているのが「環境への配慮」です。苦情が起きてから対処すると、環境への配慮が不足した企業だと思われる可能性があります。結果的に、企業イメージが損なわれ、企業価値や人材確保にも影響が生じます。

近隣住民と良好な関係を築き、企業イメージを守るためには、法令の基準を満たすだけでは不十分です。より積極的に臭気対策に取り組みましょう。

臭気対策と同時に考えたい「空気質」とその関連法令

空気中の悪臭物質が増えると、臭いが強く感じられます。空気には悪臭物質を含むさまざまな成分が含まれています。効果的な臭気対策には、工場全体の空気環境を総合的に管理する視点が必要です。

空気環境の管理には、さまざまな法令がかかわっています。いずれも、従業員の健康と安全を守ることや環境汚染を防止することを目的としています。以下はその一例です。

空気環境を管理するための主な法令

  • 揮発性有機化合物(VOC)室内濃度指針値

揮発性有機化合物(VOC)は、悪臭の原因となるだけでなく、人体に悪影響をおよぼします。厚生労働省は、VOCのうち13物質について、室内濃度指針値を定めています。

 

  • 労働安全衛生法とその関連規則

悪臭防止法における特定悪臭物質のうち、アンモニアや硫化水素などは「労働安全衛生法」でも規制されています。また、労働安全衛生法の関連規則には、作業場における有害物質の許容濃度、二酸化炭素(CO2)濃度、温湿度の基準などが定められており、2カ月に一度の空気環境測定が義務づけられています。

 

  • 大気汚染防止法とその関連規則

「大気汚染防止法」では、VOCの排出を規制しています。VOCのうち、トルエン、キシレンなどは、特定悪臭物質として悪臭防止法でも規制対象になっています。

法律

目的

規定内容

労働安全衛生法

労働者の安全と健康を確保

作業環境測定、有害物質の管理、換気装置の設置

空気汚染防止法

大気汚染を防止

有害物質の排出基準、装置・方法に関する規定

特定化学物質障害予防規則

化学物質の健康リスクを予防

化学物質の濃度管理、安全対策の実施

有機溶剤中毒予防規則

有機溶剤中毒を予防

換気や保護具の使用基準

産業保健法

労働者の健康を守る

健康診断の実施、健康保持増進の措置

空気質は臭気対策だけでなく、健康や生産性にも直結

近年、空気の成分や状態のことを「空気質」と呼びます。空気質は健康や生産性に大きな影響を与えます。例えば、以下のような影響が実証されています。

  • 健康リスク

空気に含まれる化学物質や粒子状物質(PM)は、頭痛、倦怠感、呼吸器疾患など、さまざまな症状・疾患の原因になります。長期的なリスクとして、発がん性が指摘されている物質も少なくありません。

 

  • 生産性の低下

空気中のCO2濃度が高まると、作業効率が低下します。また、粒子状物質(PM)でも、濃度上昇にともなう生産性の低下が指摘されています。

 

  • 心理的な影響

空気がきれいな職場では、従業員のモチベーションが向上することがわかっています。快適な職場環境はストレスを減らし、心理面に前向きな効果を与えます。

 

空気質は、従業員の健康、生産性向上、職場の快適さに直結します。臭気対策とあわせて、空気質の改善に取り組むことが、企業の発展につながるのです。

工場向け空気質管理の具体策とは? ~臭気対策・空気質改善・法令順守を実現~

工場の臭気対策や空気質改善には、どのような方法があるのでしょうか。代表的なものを紹介します。

工場向け空気質管理の主な手法

  • モニタリングシステム

VOCなどの悪臭物質に加えて、CO2や粒子状物質(PM)の濃度、温湿度などをモニタリングします。常時モニタリングによって、臭気や空気質の変動をリアルタイムで把握し、迅速に対応することが可能になります。

 

  • 空間浄化機器

酸素クラスター噴霧、プラズマイオン噴霧、オゾン噴霧、光触媒、UV-C、次亜塩素酸噴霧などにより、有害物質を酸化分解します。

 

  • 換気システム

有害物質を排出し、新鮮な空気を供給します。

 

  • フィルター装置

有害物質を捕集・除去します。

 

  • その他の脱臭装置

消臭剤、薬液洗浄、物理吸着、直接燃焼、生物分解などが代表的です。

空気質改善と臭気対策のポイント

適切な空気質管理には、以下のポイントを考慮することが重要です。

 

  • 原因を分析し、工場に合った対策を実施

すべての工場が同じ対策で同じ効果が得られるわけではありません。悪臭物質をはじめとする空気質の悪化原因を分析し、それぞれに応じた対策が必要です。

 

  • 見えない臭気・空気をモニタリングで可視化

臭気は慣れると気づきにくくなること、また空気は目に見えないことから、モニタリングによる定量的な管理が有効です。

 

  • 安全な空気環境で、健康と生産性を確保

臭気だけでなくCO2、粒子状物質(PM)、温湿度などを管理することで、空気環境の安全性を確保。従業員の健康リスクを低減し、生産性の向上も実現できます。

 

  • 快適な職場環境で、働きやすさを向上

臭気や空気質の改善によって、職場環境が快適になり、従業員のストレス軽減やモチベーション向上が期待できます。働きやすさが高まることで、離職率の低下も見込めます。

工場向け空気質管理の最新ソリューション ~理想の空気質・臭気対策に向けたマクニカの提案~

マクニカでは、工場向けの統合的な空気質・臭気対策ソリューションとして、「AQ-Factory」を提供しています。工場の施設内や屋外(敷地境界)において、気づきにくい臭気を可視化。安全・快適な空気環境を実現できます。法令順守はもちろん、近隣環境の保全や従業員の働きやすさにも配慮した対策が可能です。

 

主な特長

  • 屋外臭気センサーにより、敷地境界での臭い漏れを常時モニタリング
  • 空気質センサーにより、VOCCO2、温湿度など、作業場の空気環境をモニタリング
  • 作業員のバイタル情報もモニタリング可能
  • 高度な除菌脱臭技術で空間を浄化
  • プラットフォームで統合的に可視化・管理

 

国家資格を持つ臭気判定士とともに、工場の臭気の影響や発生原因を調査・解析。効果的な対策を提案します。さらに、デモテストの実施、導入後の影響予測、継続的なアフターメンテナンスまで、包括的にサポートします。

高性能センサーとさまざまな対策ソリューションを組み合わせて設置することで、臭気だけでなく空気質まで総合的に管理できます。

臭気を改善することで、近隣からの苦情を防げるだけでなく、従業員の働きやすさが向上。安全で快適な空気質を実現することで、生産性やモチベーションが高まり、離職率の低下も期待できます。

屋外臭気センサーで近隣への臭気漏れを常時モニタリングし屋内空気質センサーで作業環境を最適化するクラウドプラットフォーム
著作者:macrovector/出典:Freepik

図:敷地境界に屋外臭気センサーを設置し、近隣への臭気漏れを常時モニタリング。排気ダクトに不燃性セラミック脱臭フィルターを設置し、排水処理槽にスクラバー脱臭装置を導入。作業エリアでは酸素クラスター噴霧により、臭気を抑制する。屋内空気質センサーでVOCやCO2、温湿度などを測定し、作業環境を最適化。測定データを無線連携し、クラウドプラットフォームでの統合管理を実現している。

まとめ

今回は、工場の臭気対策について紹介しました。工場の臭気対策は、近隣住民や環境に配慮するために不可欠であり、企業イメージの維持や人材確保にもつながります。法令順守にとどまらず、積極的に取り組むことが重要です。

また、臭気対策とあわせて空気質改善に取り組むことで、従業員の健康や生産性向上に役立つ、快適な空気環境を実現できます。常時モニタリングを行い、定量的に管理することで、臭気対策と空気質改善を同時に進めることが可能です。

■参照資料:

環境省「悪臭防止法 住みよいにおい環境を目指して」(環境省)
https://www.env.go.jp/air/akushuu.pdf , (参照2025-03-07

シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会「中間報告書-第24回~第28回までのまとめ」(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/001378160.pdf , (参照2025-03-07

厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「有機溶剤を正しく使いましょう」(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/anzen/dl/120815-01.pdf , (参照2025-03-07

厚生労働省 医薬局 医薬品審査管理課 化学物質安全対策室「標準的測定方法の改訂(概要)」(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/10803000/001290011.pdf , (参照2025-03-07

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