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こんな方におすすめの記事です

  • 人工知能学会全国大会(JSAI)2019について知りたい方
  • データサイエンティスト、機械学習エンジニアの方

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はじめに

お久しぶりです。マクニカ AIリサーチセンターの土屋です。

実は今年2019年の6月4日~6月7日に開催された人工知能学会全国大会(JSAI) 2019に参加してきましたので、
少し遅れてしまいましたが、
リサーチャーの目線から、日本のAI技術の最先端のまとめを行わせていただきます。

今回はそんな分析があるのか!と思ったような面白い話もおりまぜながらブログを書いていきますので、
データサイエンス好きな人も必見です。
ちなみに、内容については、数式が出てくるのは避けながら、楽しく読める内容になるように心掛けました。

ぜひ、最後まで読んでいただきたいです(^^)

JSAI 2019の概要

JSAIは日本最大級のAI系の学会の一つです。
毎年、5月~6月の数日間で開催されていますが、一昨年は愛知、昨年は鹿児島、今年は新潟で開催されました!

以前は理論的な内容も多かったようですが、産業出身の浦本直彦氏が人工知能学会会長になったこともあるのか、近年は応用的な内容が増えてきているようです。
たしかに、応用的な技術開発に関するセッションが実際に多くありましたし、セッション終了後の質問コーナーなども、教授陣などからの羽交い絞めでなく、産業で働く人からの質問などが多かったのが印象的でした。 

ちなみに、今年も参加者は2000人越えで、年々参加者数は多くなってきている模様です。
海外の学会もチケットはすぐに売り切れてしまいますが、日本でも昨今のAIブームで需要は多そうですね。

産業が注目するAI

今回、JSAI 2019に参加して思ったことは、
AIの最先端情報を知る手法の一つとして、人工知能学会全国大会は非常に有効的ということでした。
JSAIの会長が産業出身ということもあり、産業でニーズの高い研究内容が採択されています。

特に、今回の学会の中でも、「XAI(Explainable AI: ディープラーニングの説明性)」についての研究への注目度が非常に高かったです。
実際に、すべての基調講演や招待講演の中で必ず「XAI」に関する話が出てきたのは印象的でした。

「ディープラーニングの説明性?」となった方のために、簡単に説明をさせていただきます。 

例えば、人が猫を猫と判断するには何かしらの理由があります。
猫を見た時に猫を犬と判断しないのは、犬と違う特徴を人間が捉えているからです。
例えば、角張った耳があるとか、長い髭があるとか、まん丸のお目目があるとか。
近年、AIでも上記のように「なぜAIがその判断をしたのか」について説明をするための研究が盛んに行われています。

産業では、XAIの研究のニーズも多いので、私も日々論文でキャッチアップし、実装をしております。

また、強化学習の熱も学会では冷めないですね。個人的には、強化学習のニーズはこれからどんどん伸びてくるのではないか、、、
とちょっと期待しています。

JSAI 2019で惹かれたセッション

今回、惹かれたセッションはいくつもあるのですが、文量の問題もあり、ここでは発表された二つの論文についてのまとめをさせていただきます。
紹介する論文は下記の二つです。

  • 高級焼肉店における時系列注文データ分析による顧客分類
  • 良品率予測と装置組合せ最適化による生産性向上


一つ目は、目を付けたところに面白みがありました。
二つ目は、データ分析方法自体がなまはげでした。

高級焼肉店における時系列注文データ分析による顧客分類

出典:人工知能学会全国大会論文集 セッションID: 2H1-J-2-02「高級焼肉店における時系列注文データ分析による顧客分類」
図1:クラスター分析による注文パターン可視化1(クラスター3)

[ ひと言で言うとどんなものか ]

高級焼肉店における注文データを分析することで、注文パターンを明らかにし、顧客の分類をする

[ 先行研究と比べて何がすごいか ]

飲食業界の人手不足問題に関する研究は数多く存在するが、飲食店経営で最も大切な“顧客構成”に注目をした研究は少ない

[ 技術や手法の肝はどこか ]

基礎的だが、詳細な分析に肝がある

  1. 57分類されている570商品を、12クラスターにする
  2. 12分類された商品をPCAによって、第七主成分まででデータの説明ができることがわかる
  3. ランチとディナーでの主成分得点の差異について
  4. クラスタリングで算出したクラスターの意味づけ
  5. クラスターごとの主成分得点の比較

良品率予測と装置組合せ最適化による生産性向上

出典:人工知能学会全国大会論文集 セッションID: 2H1-J-2-04「良品率予測と装置組合せ最適化による生産性向上」
表1: Results of production scheduling

[ ひと言で言うとどんなものか ]

実データが少ない状態での、良品率の向上・メイクスパンの短縮を同時に行う装置組み合わせ最適化

[ 先行研究と比べて何がすごいか ]
  • 実用実績のない装置組み合わせにおける良品率予測のためのアルゴリズム精度向上
  • メイクスパン向上だけでなく良品率を考慮するディスパッチングルールの提案
[ 技術や手法の肝はどこか ]
  • 実用実績のない装置組み合わせでの良品率予測を行うために、入力変数をいくつかのフィールドに分割したうえで、入力変数間の関係を表現するField-aware Factorization Machinesの開発を行った
  • ジョブを期待良品率が最も高くなる装置に割り当てるHighest Expected Yield Rate, 全ジョブを処理可能時刻が早い順に並べ、手工程ごとにスループットが最大になるようにジョブの処理装置と処理順序を決定するThroughput Multiple Insertion(TMI)、左記を組み合わせたHybridルールの開発を行った

まとめ

今回は、リサーチャーの目線から人工知能学会全国大会(JSAI)2019 のまとめを行わせていただきました。
いかがでしたでしょうか?

JSAIには他にも「なるほど!」という感じの理論的な内容、応用的な内容のものもありますので、ぜひ原文も見てください。

 

■ 本ページで掲載した論文の出典元
 一般社団法人 人工知能学会 主催 2019年度人工知能学会全国大会(第33回)
 ・セッションID: 2H1-J-2-02「高級焼肉店における時系列注文データ分析による顧客分類」
  辛 郷孝*1, 瞿 雪吟*1, 菅 愛子*1, 山下 泰央*1, 高橋 大志*1
 (*1慶應義塾大学大学院経営管理研究科)
 ・セッションID: 2H1-J-2-04「良品率予測と装置組合せ最適化による生産性向上」
  鈴木 慶昭*2, 加納 学*2*2京都大学), 曽我 朗*3, 柳町 武志*3, 村尾 了*3, 髙木 雅哉*3*3東芝)
  [敬称略]