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2025年の崖まであと1年!-IT大国インドの力で進める日本のDX-

※本記事は、2024年10月開催の「Macnica Data・AI Forum 2024 秋」の講演を基に制作したものです。

はじめに

みなさん、2025年の崖という言葉を覚えていますか?これは、2018年に経済産業省が発表したDXレポートの中で初めて使用されたもので、日本のデジタルトランスフォーメーション(DX)が進まない場合の危機を指しています。2025年までに急速なDXを実現しなければ、日本の経済や産業に大きな影響を与える可能性があるという警告です。今回は、その「2025年の崖」が目の前に迫る中、IT大国インドの力を借りて日本がどのようにDXを進めるかを探るパネルディスカッションを振り返ります。

この記事では、IT大国インドから見た日本のDXの現状、データテクノロジー、そしてグローバル事例について、インドのテクノロジー会社であるセレバルテクノロジー株式会社の井上氏、川越氏に深堀していきます。

パネルディスカッション

マクニカ 大滝:こんにちは、2025年の崖まであと1年、IT大国インドの力で進める日本のDXについてお話しする本セッションをご覧いただきありがとうございます。私は株式会社マクニカでデータUIプラットフォームビジネス部に所属し、お客様のデータAIの活用の支援を行っています。本日は、セレバルテクノロジーズの井上さんと川越さんとともに議論を進めていきます。井上さん、自己紹介をお願いします。

セレバル 井上:初めまして、セレバルテクノロジーズで営業を担当しております井上です。私は30年にわたりITベンダーでネットワークセキュリティやクラウドソリューションの営業をしてきました。昨年からセレバルテクノロジーズに参加し、データブリックスを中心としたデータプラットフォームの環境構築やマイグレーション支援を担当しています。具体的には、データブリックスを利用する企業が抱える課題を解決するためのコンサルティングサービスや技術支援を行っています。また、これまでの経験を活かして、各種企業への導入支援やクライアントのビジネスプロセスの最適化にも取り組んでいます。

セレバル 川越:はじめまして、川越です。私はセレバルテクノロジーの日本法人立ち上げから参加しており、日本とインドのオフショアチームの橋渡し役として活動しています。また、インドの公用語であるヒンディー語を学び、デリーに留学した経験もあり、その経験を生かしてコミュニケーションと人間関係の構築に努めています。具体的には、日本とインドの文化やビジネスプラクティスの違いを理解し、プロジェクトが円滑に進むようサポートしています。インドと日本の橋渡し役として、文化の違いや業務プロセスの違いを理解し、最適なソリューションを提供することを目指しています。

マクニカ 大滝:ありがとうございます。それでは、セレバルテクノロジーについて簡単にご紹介いただけますでしょうか。

セレバル 井上:弊社は2016年に創立されたインド本社のITサービス企業で、2500名の従業員を擁しています。セレバルテクノロジーは、製造業、金融、エネルギー、ヘルスケアなど多岐にわたる業界のお客様に最新のクラウドソリューションと、機関系のソリューションを複合的に提供しています。我々はクラウドテクノロジーとレガシーシステムの両方に精通しており、それらを統合した最適なソリューションを提供することを得意としています。特に注力しているのは、データブリックスやマイクロソフトとの協業によるデータプラットフォームやAI関連のサービスです。また、データサイエンティストとデータエンジニアを多数抱えることで、クライアント企業に対して高度なデータ分析やAIソリューションを提供しています。我々の目標は、技術とビジネスの両面からクライアントの課題を解決し、競争力を高める支援をすることです。さらに、我々は年間数多くのプロジェクトを手掛けており、それにより得られた豊富な実績とノウハウを活かして、様々な業界のクライアントに対応したソリューションを提供しています。

インドのテクノロジー企業から見た日本

マクニカ 大滝:インドのテクノロジー企業から見た日本のDXに関して教えていただけますか?

セレバル 井上:日本のITインフラは保守的であり、クラウドの利活用や新技術の導入が遅れています。インドの企業はスピーディーに新しい技術を取り入れる一方で、日本は意思決定に時間がかかる印象があります。また、日本のITエンジニアの技術力は高いですが、特にAIやデータサイエンティストといった領域での人材不足は深刻です。これは、インドのエンジニアリング教育が質と量の両面で充実している背景も一因です。インドでは、幼少期からプログラミング教育が義務付けられており、高度なスキルを持つエンジニアが大量に排出されています。

セレバル 川越:その通りです。例えば、インドでは幼少期からプログラミング教育が義務付けられており、高い競争力を背景にエンジニアのレベルが非常に高く、次々と優秀な人材が排出されています。また、インドのIT企業は、技術の進展に迅速に対応し、最新の技術を積極的に取り入れることでグローバルな競争で優位性を保っています。このような背景から、日本のDXの遅れは大きな課題となっており、インドのような柔軟かつ迅速なアプローチが求められています。さらに、インドの企業はイノベーションを促進する文化が根付いており、新しい技術やプロセスを積極的に採用する傾向があります。これにより、非常に高い競争力を維持しています。

セレバル 井上:具体的に日本の企業が抱える問題として、レガシーシステムの維持に多くのリソースを費やしていることが挙げられます。既存のITインフラに依存し、クラウドやAIといった新しい技術の導入に対して消極的な姿勢が見受けられます。このような状況では、多くのビジネスチャンスを逃してしまうリスクがあります。日本の企業がDXを成功させるためには、インドのような先進的なアプローチを取り入れることが必要不可欠です。たとえば、クラウドインフラを迅速に導入し、データ駆動型の意思決定をサポートするためのデータプラットフォームを構築することが重要です。

グローバル事例のご紹介

マクニカ 大滝:それでは、グローバルで実施されたDXの成功事例を教えてください。

セレバル 川越:まず一つ目の事例は、インドの大手消費財メーカーによるものです。この企業は需要予測と在庫管理がうまくいっておらず、無駄な在庫や出費が問題でした。そこで我々は機械学習を活用した需要予測システムを導入しました。このシステムは、履歴データや市場動向、お客様の好みを詳細に分析し、より正確な需要予測を可能にします。導入後、需要予測の正確性が70%向上し、在庫管理の状況も大きく改善されました。結果として、サプライチェーンの効率が向上し、運用コストの削減につながりました。
具体的な数字で見ますと、需要予測の正確性は70%増加し、リソース配分の最適化も35%向上しました。また、サプライチェーン全体の効率も60%改善されました。この事例は、データ駆動型のアプローチがいかに効果的であるかを示しています。さらに、このプロジェクトでは、従業員教育にも力を入れ、システムの運用と分析結果の解釈に必要なスキルを向上させることにも成功しました。これにより、企業全体でデータを活用した意思決定が定着し、持続可能な改善が続いています。

セレバル 井上:もう一つの事例として、エネルギー産業のお客様の取り組みをご紹介します。この企業は文書管理の効率化が課題で、情報や書類の検索に多くの時間を費やしていました。そこで、GPT技術を活用したナレッジマイニングBOTを導入しました。このBOTは、膨大な文書から必要な情報を迅速に検索し、従業員がより効率的に業務を遂行できるようサポートします。導入後、意思決定のスピードと正確性が向上し、業務全体の生産性が大幅にアップしました。
このプロジェクトも1年以上前に導入され、GPT-3.5 Turboを活用した高度なソリューションとして非常に成功した事例です。このシステムにより、以前は手作業で行われていた多くの業務が自動化され、従業員が本来注力すべき戦略的な業務に集中できるようになりました。また、このプロジェクトの成功は、他の部門にも波及効果をもたらし、全社的な効率向上とコスト削減に大きく寄与しました。

インドIT企業によるオフショア開発の効果・価値

マクニカ 大滝:インドのIT企業によるオフショア開発の効果や価値について教えてください。

セレバル 井上:オフショア開発の最大のメリットは人材の確保です。インドにはスキルの高いエンジニアが非常に多く、英語や日本語に堪能なエンジニアも多いです。また、インドのエンジニアは新しい技術や言語の習得が早く、日本企業にとって非常に価値のある人材です。加えて、インドのIT教育は質と量の両面で充実しており、幼少期からプログラミング教育が行われているため、高いスキルを持った人材が豊富です。そのため、日本で不足しているAIやデータサイエンス、クラウドコンピューティングなどの専門スキルを持つ人材を迅速に確保できるのです。

セレバル 川越:さらに、インドの文化は新しい言語の習得に非常に適しています。インドのエンジニアは会話を中心にコミュニケーションを取るため、日本語の上達も早く、日本のプロジェクトで大いに役立ちます。また、技術革新に対する柔軟性が高く、最新技術を積極的に取り入れる姿勢があるため、急速に変化する市場のニーズに対応する能力があります。特に、インドの技術者は英語が公用語であるため、グローバルなチームとのコミュニケーションもスムーズに行うことができます。

セレバル 井上:オフショア開発のもう一つの価値はコストメリットです。インドのエンジニアリングリソースは高品質でありながらコストが比較的低いという利点があります。これにより、日本企業は高いクオリティを保ちながらコストを抑えることが可能となります。例えば、日本国内で開発を行う場合に比べて、同じ予算でより多くのリソースを割り当てることができ、プロジェクトのスピードアップや品質向上に寄与します。また、時差を利用した24時間体制のプロジェクト運営も可能で、効率的なプロジェクト進行が実現します。
さらに、インドのオフショア開発チームは高度なセキュリティとコンプライアンス対策を実施しており、日本企業が懸念する情報漏洩やセキュリティリスクに対しても適切な措置を講じています。これにより、データの安全性を確保しながら安心してプロジェクトを進めることができます。このようなオフショア開発の利点を最大限に活用することで、日本企業のDX推進が加速されることが期待されています。

ITプロジェクトを成功させるための秘訣(オフショア開発)

マクニカ 大滝:オフショア開発でITプロジェクトを成功させる秘訣を教えてください。

セレバル 井上:まず重要なのは明確なコミュニケーションです。細かな定期ミーティングと進捗状況の確認がプロジェクトの透明性を確保し、迅速な対応を可能にします。例えば、週次の進捗報告ミーティングやデイリースタンドアップミーティングを実施し、プロジェクトの現状や課題を共有することで、全チームメンバーが同じ方向を向いて取り組むことができます。また、文化的な違いやコミュニケーションスタイルの違いを理解し、それに応じた情報伝達方法を工夫することが重要です。

セレバル 川越:さらに、技術とインフラの整備、特にセキュリティ対策が重要です。プロジェクト開始前にセキュリティのリスクを確認し、適切な対策を講じることが不可欠です。例えば、VPNやデータ暗号化技術を利用してデータの安全性を確保し、また、リモートワーク環境でもアクセス権限やログ管理を徹底することが求められます。また、時差を利用して効率的にプロジェクトを進めることも有効です。日本とインドの3.5時間の時差を利用することで、作業時間を最大化し、プロジェクトの進行をスムーズにします。このようなタイムゾーンの管理を通じて、24時間体制でのプロジェクト運営が可能となり、効率化が図れます。

セレバル 井上:オフショア開発の成功には、技術的なスキルだけでなく、プロジェクトマネジメント能力も求められます。適切なプロジェクト管理ツールの利用や、効果的なコミュニケーションチャネルの設定が鍵となります。例えば、JIRAやTrelloなどのプロジェクト管理ツールを活用し、タスクの進行状況や担当者、期限などを明確に管理することで、全メンバーがリアルタイムで情報を共有できます。また、定期的な成果物のレビューやフィードバックのセッションを設けることで、品質を保ちながらプロジェクトを進行させることができます。
さらに、文化の違いを理解した上で、チームビルディングを行い、信頼関係を築くことが非常に重要です。これには、オフラインでの交流やチームビルディングアクティビティを通じて、互いの文化や価値観を尊重し合う環境を作ることが含まれます。これにより、お互いの強みを活かしながら、プロジェクトの目標達成に向けて協力し合える環境を作り出すことができます。

まとめ

本記事では、インドのテクノロジー企業セレバルテクノロジーズとともに、日本のDXの現状と課題、そしてグローバル事例やオフショア開発の価値について議論しました。日本のDXを進める上での人材不足や技術導入の遅れといった課題を解決するためには、インドのようなIT大国との協力が不可欠です。

2025年の崖が迫る中、日本企業が成功するためには、新しい技術を迅速に取り入れ、高いスキルを持つ人材を確保し、効率的なプロジェクト運営を行うことが重要です。 セレバルテクノロジーズとのパートナーシップは、その一つの解決策となり得ます。今後も生成AIやAI、データ活用に関する情報を提供し、日本企業のDXを支援してまいります。

井上 吉朗 氏

セレバルテクノロジー株式会社
シニア セールス マネージャー
井上 吉朗 氏

30年以上にわたり、ネットワーク、セキュリティ、ミドルウェア、クラウドの営業を担当。2023年7月よりセレバルテクノロジーに参画し、主にDatabricksを中心としたデータプラットフォームの環境構築支援およびDatabricksへのマイグレーションサービスの営業を担当。

川越 紫乃 氏

セレバルテクノロジー株式会社
アソシエイト コンサルタント セールス
川越 紫乃 氏

インドの言語と文化を学び、デリーへ留学。大手日本企業での勤務を経て、2022年にCelebal Technologiesの日本法人立ち上げに参加。オフショア間とのコミュニケーション・関係構築において中心的役割を担う。本年5月にはDatabricksのウェビナーに登壇し、営業およびマーケティング分野での活動も広げています。

大滝 聡

株式会社マクニカ
ネットワークスカンパニー データ&アプリケーション事業部データ・AIプラットフォームビジネス部 部長
大滝 聡

2000年よりSIerでSEとしてネットワーク、モバイル活用、セキュリティの上流提案から運用までをサポート。2016年よりマクニカで標的型攻撃対策製品のSE、アカウントエンジニアチームをリード。現在はData・AI領域のプロダクトでお客様のデータ活用を支援。