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生成AI活用の成功戦略 ~リスクを制するマネジメント術~

※本記事は、2024 年 10月開催の「Macnica Data・AI Forum 2024 秋」の講演を基に制作したものです。

はじめに

昨今、生成AIの進化により、ビジネスの効率化や新たな価値創造が進んでいます。しかしAIの潜在的リスクを無視することは、セキュリティや信頼性の面で重大な問題を引き起こす可能性があります。本記事では、AI TRiSM(Trust、Risk、Security Management)というフレームワークに基づき、生成AI活用時に顕在化するリスクとその対策について紹介します。これにより、皆様のビジネスが安全かつ効率的にAI技術を活用できるよう、具体的なアドバイスを提供します。

LLMに潜むリスク

1.プロンプトに潜むリスク

生成AIのLLM(大規模言語モデル)を活用する際、プロンプトに含まれる機密情報が意図せず外部に漏洩するリスクがあります。特に、ソースコードや内部APIの情報などが、AIチャットボットに送信されることで、外部に漏洩する事例が報告されています。このような場合、悪意のある攻撃者に情報が悪用される可能性があり、法的トラブルに発展することもあります。

2.プロンプトインジェクション

プロンプトインジェクションとは、AIモデルに対して不正な指示を与えることで予期しない動作を引き起こす攻撃手法です。具体例として、秘密鍵の情報を守る設定をしていたにもかかわらず、プロンプトの言語を変更するなどの方法でその制限を回避し、情報が漏洩するケースが挙げられます。

3.ファインチューニングのリスク

ファインチューニングとは、特定のドメインに対する出力を改善するための再学習手法ですが、ここにもリスクが潜んでいます。学習用データに個人情報が含まれていると、その情報がAIチャットボットの出力として漏洩する可能性があります。特に、データが外部と共有される場合、個人情報漏洩のリスクはさらに高まります。

AI TRiSMに基づくリスク対策

AI TRiSMは、ガートナー社が提唱するフレームワークで、AIの信頼性を高めるための重要な概念です。これに基づき、具体的なリスク対策として、以下の最新ソリューションを紹介いたします。

3-1. テキストの匿名化(Private AI)

Private AIは、テキストデータに含まれる個人情報を自動で検出し、マスキングまたは擬似データに置き換えるテキスト匿名化ソリューションです。従来の正規表現ベースの方法と異なり、マシンラーニングを用いて文脈から個人情報を識別し、高精度で対応します。これにより、生成AIのプロンプトに含まれる個人情報が匿名化され、安全な状態でLLMに送信されます。

3-2. Security & Trustプラットフォーム( DeepKeep )

DeepKeepは、生成AIやコンピュータビジョンモデルに関するセキュリティリスクや信頼性の問題を解決するためのプラットフォームです。具体的には以下の4つの機能を持ちます。

  • **リスクアセスメント**
    自動化されたペネトレーションテストでモデルやデータの脆弱性を評価。
  • **予防**
    リスクアセスメントの結果に基づき、具体的なセキュリティ強化策を提示。
  • **検知**
    リアルタイムの脅威検知と異常値の検出により、即座に問題へ対応。
  • **緩和策**
    AIファイアウォールを使って脅威を検知した場合の素早いアクセス制限とアラート発報。

これらの機能により、AIシステムが外部からの攻撃やデータの不正利用に強く、安全に運用されることをサポートします。

まとめ

本記事では、生成AI活用に伴うリスクと、その対策として提唱されているAI TRiSMのフレームワーク、及び具体的なソリューションについて解説しました。AIの導入が進む現在、信頼性を確保した上での運用が重要です。特に、リスクに応じた対策を講じることで、AIシステムの安全性・信頼性を確立し、ビジネスの競争力を高めることが可能です。 企業におけるAIの活用を進めるにあたり、ぜひ本記事の内容を参考にしていただき、リスク管理を徹底しましょう。

株式会社マクニカ ネットワークスカンパニー
データ&アプリケーション事業部データ・AIプラットフォームビジネス部第2課
柿沼 大智

過去には、データ分析プラットフォーム製品を中心とした製品を対象にセールスエンジニア、サポートエンジニア、トレーニング講師を担当。現在は、AI・機械学習・データ活用の分野におけるセールス活動に従事。