
※本記事は、2024 年 10月開催の「Macnica Data・AI Forum 2024 秋」の講演を基に制作したものです。
1.はじめに
現代のビジネス環境において、データの活用が企業の成長と競争力強化に不可欠であることは広く認識されています。しかし、膨大なデータが至るところに存在し、その収集と分析は依然として大きな課題となっています。このような課題を解決するための鍵となるのは「エッジ」です。エッジとはデータソースに極めて近い場所を指します。このエッジでのデータ収集と分析が、現代のデータ活用の課題を解決するための重要な手段となります。本記事では、現代のデータ活用における課題、エッジの重要性、および具体的な解決手段について解説します。
2.データ活用における「今」の課題
現在、多くの企業がビジネスの成長と効率化を目指してデータの活用を進めています。データ活用の市場規模は右肩上がりで成長しており、2022年の1.5兆円から2024年には2兆円に達すると予測されています。しかし、データの量と種類の増加に伴い、いくつかの課題が浮上しています。

データ収集の課題
企業が直面する最初の課題は、必要なデータの収集です。データソースは多様化しており、その中には物理的なデータや人体データのように収集が困難なものも含まれています。これにより、従来のデータ収集手法では対応しきれないケースが増えています。具体的な課題として、次のような点が挙げられます。
- データの多様化:IT資産だけでなく、工場設備や人体のような物理的なデータが増加し、収集方法が複雑化。
- ネットワーク接続の制約:インターネットに接続されていないデータソースからは収集が困難。

データ分析の課題
データの量が増えることは一見良いことのように思えますが、実際には多くの問題を引き起こします。以下の点が主な課題です。
- 処理負荷:大量のデータを処理するために分析基盤にかかる負荷が増加し、パフォーマンスが低下。
- データの質:ノイズデータや質の悪いデータが混在することで、分析結果の精度が低下。
これらの課題をクリアするためには、データの収集と分析方法を見直す必要があります。

AI活用において考えると、質の悪い情報やノイズを含んだ状態で学習することで回答結果の品質が下がり、また大量のデータ処理に時間がかかり、リアルタイム性が損なわれる可能性が高くなります。

3.「エッジ」の重要性
データ活用の課題を解決する鍵となるのが「エッジ」です。エッジとはデータソースに限りなく近い場所を指し、エッジでのデータ収集と分析が、これまでのデータ活用の課題を解決する可能性を持っています。
エッジでのデータ収集
従来、データは主に中央の分析基盤で収集されていました。

しかし、エッジにデータ収集機能を持たせることで、収集が非常に困難だったデータを効率的に集めることが可能になります。具体的なソリューションの例としては、以下のものがあります。
- IoTゲートウェイ:センサーやカメラからデータを収集し、インターネット経由で分析基盤に送信。
- ウェアラブルデバイス:スマートウォッチなどを用いて身体データを取得。
例えば、マクニカではSplunk Edge Hubというソリューションを用いて、データ収集の課題を解決しています。このソリューションは手のひらサイズで設置が容易な上、複数のプロトコル、特に収集が困難とされているOTプロトコルにも対応しています。

エッジでのデータ分析
エッジでデータ分析を行うことも非常に重要です。データを中央の分析基盤に送信する前に、エッジで不要なデータを排除し、ラベリングするなどの前処理を行うことで、分析精度の向上と処理負荷の軽減が期待できます。
例えば、Criblというソリューションは、データソースから集めたデータをエッジで前処理し、分析基盤に高品質なデータを提供することで、分析プロセスを最適化しています。

4.まとめ
データの量と種類が増加する現代において、従来の手法ではデータの収集と分析に限界が生じています。今日の課題を解決する鍵は「エッジ」にあり、エッジでのデータ「収集」と「分析」がその解決策です。エッジを活用することで、今まで収集が難しかったデータを効率的に集め、分析精度を高めることができます。そして、これらを実現するための具体的なソリューションとして、Splunk Edge Hub、Criblをご紹介しました。
エッジを活用したデータ収集と分析は、これからのデータ活用の中核となります。興味を持たれた方は、ぜひ弊社にご相談ください。

株式会社マクニカ ネットワークスカンパニー
データ&アプリケーション事業部第1技術部第2課 課長代理
川村 智貴
データ活用に関わる提案やサービス企画・開発等を主業務としている。幅広い経験を基にした課題解決・企画立案を得意としており、過去には新規商材の発掘や、企業向けサイバー攻撃/防御演習の企画運営等の活動を行っている。