
汎用型AIとは?
AIは「汎用型AI」と「特化型AI」の2種類に分類し定義されることがあります。まずは我々が実生活で使用しているAI、例えば、製造業で品質管理や、ECサイト上でのファッション提案といった限定的な課題に特化して自動的に学習、処理を行うAIを「特化型AI」と呼びます。そしてもう1つはSF映画の中で見られるような「汎用型AI」と呼ばれるものです。「汎用型AI」は、人間のような思考と推論の機能を備えたAIであり、SF映画の中では人類を追い抜いてしまうようなヒューマノイドロボットです。人間のような見た目で話し、映画の中では人間と間違えられる事もあります。
しかし、この「汎用型AI」が日常生活で見られないのには理由があります。専門家にとって昨今のAI開発のアプローチから考えると、こういったAIの作成は極めて難しいと考えられています。例えば、暴動対策強化ロボットである上海の 「Anbot」、ミュンヘン空港で案内係を務める人型ロボット「Josie Pepper」、ソウルの情報ロボット 「Troika」など、ニュース等でご存じかもしれない「ヒューマノイドAI」について考えてみましょう。これらのロボットには共通点が1つあります。それは、ある特定の機能を実行するようにプログラミングされている点です。「Josie Pepper」にフライトやバゲージクレームとは関係のない質問をしても答えられないのは、こういったロボットは「汎用型AI」ではないからです。
これらのロボットには、人間のような知性や、プログラミングされていない事柄について「考える」能力がありません。AI専門家にしてみれば、現在の機能でこれを達成するのは、「飛行機で月に行こうとするようなもの」なのです。コンピューターに精密な技術を身に付けさせる事は可能です。現在、コンピューターに複数のスキルを組み合わせて、より複雑なタスクをこなせるようになりました。これは確かにMachine Intelligenceの増加を意味しますが、これもまた「汎用型AI」ではありません。今回は、その理由を探りながら、最終的にどうやって「汎用型AI」にアプローチしていくか探ってみましょう。

今、AIはどのように開発されているか
「汎用型AI」がまだ開発されていない主な理由は、前述のファッションの提案や、製造品質の評価のように、我々が概して意識的に、非常に精密に特定の目的を遂行出来得るAIの作成に焦点を合わせて取り組んできたからです。構築するモデルが狭ければ狭いほど、学習は容易になり、高い精度を達成できる可能が高くなります。これは多くのモデルが、表示された数百または数千のサンプルを見せられ、それらを区別したりカテゴリー分類することを教えられて学習しているためです。例えば、画像内の動物の種類を判別するようにトレーニングされるアルゴリズムには、何千もの動物の画像が表示され、そこからそれらの画像を認識するよう徐々に学習していきます。数十匹の動物を判別するモデルの学習は、単に猫と犬の画像を判別するだけの場合と比較すると、より困難で時間を要します。前者ははるかに多くのサンプルを必要とし、故にかなりの時間を要します。 AIにおいて、特異性とはスピードと精度を意味する傾向があります。
様々なタスクを実行できる「人間のような」モデルを構築する事は当然効率が良いので、今までにも何度も試みられてきましたが、これまで成功した事例はありません。
GPT-3は、「汎用型AI」の試みの一例であり、機械学習の進歩を示すものであることは確かです。GPT-3は"対話型AI"の一例です。ディープラーニング技術を使用して「人間のような」テキストを生成し、2020年9月にガーディアンがAIによって書かれた記事を公開したことで広く知られるようになりました。それ以来、GPT-3の「apparent applicability(見かけ上の適用性)」が高まっていることが話題になっていますが、これはほぼ、システムに投入されるデータの増加によるものです。要するに、GPT-3は、より多くの情報と言語を「認識」して処理するように常にトレーニングされているので、ますます応用力が増しているのです。現在のGTP-3は1つ前のバージョンの100倍のデータを保有しています。AIの進歩は、独自の機能や固有の機能によるものではなく、上記の動物分類の例のように、投入されるデータ量が増えているからです。
GPT-3はまだAIの狭い応用例です。 Yann LeCunは、「汎用型AI」としてではなく、オートコンプリートのバージョンとして紹介しています。 彼は「GPT-3は、実際に世界がどのように機能しているかという知識はなく、その知識が分析テキストに存在していれば、ある程度の背景知識を持っているように見えるだけ」と指摘しています。それは人間に教わらなければなりません。一般知識の欠如こそが、「汎用型AI」との違いかもしれません。 GPT-3はリアルタイムで人間のような会話をすることはできないでしょうし、言語処理以外のタスクを実行することはできません。
「汎用型AI」の近年の進歩は、GPT-3で利用可能なデータ量といった計算インフラストラクチャによってもたらされたものであり、実際に「人間のようなAI」を実現するための進歩ではありません。興味深い前進ではありますが、実際には「汎用型AI」を達成するという目標に向かって進んでいるものではありません。
「汎用型AI」への道のり
「汎用型AI」はまだ願望であり、本物の人間のように機能するAIを作り上げるという目標を、いつ、どのように達成できるか、誰も知り得ません。しかし私たちは、「汎用型AI」の創造に向けて別のアプローチを提案したいと思います。
人間と機械の知能が同じ、または類似しているという発想には根本的に欠陥がありますが、開発者はAIを単に拡張するだけで人間の知能に近づけるかのように、AIにアプローチし続けています。ですので、たとえGPT-3をより大きく、より良いバージョンに作り変えたとしても、「汎用型AI」には辿りつけないのです。
人間は抽象的な言葉で考えることに優れています。それらは創造的、理論的、革新的であり、実際、これらの抽象法が、楽譜や絵画、自動運転車や超高層ビルに至るまで、人間が物を創り上げる事を可能にしています。AIは情報処理に長けていている一方、抽象的な思考能力は持っていません。AIがタスクを完了させるには、人間がそのタスクをデータに分割する必要があります。これはAIに幾つものレイヤーの追加や、プログラムされたパラメーター内でAIが独自の動作を幾つも進化(例:画像又は数字のどちらが正しいか判断する等)させたとしても、AIはデータに基づいてしか学習し得ないからです。AIはデータに書き込まれていない事を推測する事は出来ません。
AIの最良の用途は、人間が行っている業務を我々に代わって行う事ではなく、我々の作業負荷を減らし、「人間の知性を最大限に引き出す」事なのです。もしAIが、日常的で、反復的な、更には危険なタスクの大半を処理出来るなら、私たちは創造的な可能性を最大限に発揮できるかもしれません。
「汎用型AI」の創造を実現する為には、開発者はこれらの目標と違いを常に念頭に置く必要があるでしょう。AIは、人間が持つレベルの知能を獲得し得るかもしれませんが、これは単に同じタイプの知能の実現することではありません。アルゴリズムは、仮説や原因を考え、推論したり、特定するようには設計されていません。学習済みモデルは、統計を使用して具体的な相関関係を特定し、特有のパターンを見つけますが抽象的な操作はできません。
そこで、CrowdANALYTIX/マクニカは、「汎用型AI」の創造に、モジュール式のアプローチを提案します。AIが人間と同じように「考える」ことができると想定して、単一のモデルで複雑な問題を一般化しようとするのではなく、複雑な問題を解決する多くの特定のモデルを組み合わせて、組み合わされたAIが複数のタスクをこなせるようになるのです。このアプローチは、個々のレイヤーを慎重に構築すれば、より複雑な問題に対処するためのレイヤー化は簡単になるというAIの仕組みを利用しています。「汎用型AI」はまだ理論的なものであり、人間の願望にすぎませんが、きっとこの方法で、我々は掲げたゴールに辿りつける事でしょう。
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出典:https://www.crowdanalytix.com/is-general-ai-achievable/
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