毎年3月8日は、国連が女性の地位向上・社会進出推進のために定めた「国際女性デー」です。DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)を推進するマクニカでも、社員一人一人が「性別を問わず働きやすい環境」について改めて考える1日となるよう、2024年3月8日(金)にマクニカ初の社員向けイベント「Macnica Diversity Fes」を開催しました。マクニカ本社ビル1階ショールーム「MET Valley」を使用したリアル会場と、オンライン会場のハイブリッドで実施し、総勢約440名の社員が参加しました。その様子をレポートでお伝えします。

Macnica Diversity Fes
Macnica Diversity Fes

レポート目次

第1部:特別対談「Know Our Macnica‘s Diversity」

1部では、ダイバーシティ経営を唱える早稲田大学 大学院 教授の入山 章栄氏と、理系メディアアーティストとして世界で活躍するスプツニ子!氏をゲストに迎え、マクニカの原社長・榊原執行役員とともに、ダイバーシティ経営や、女性活躍のために必要な視点について議論()しました。

38日当日は、会場で事前収録した動画をパブリックビューイングしました。

動画視聴はこちらをクリック↑

登壇者

  • 入山 章栄 氏(早稲田大学 大学院 教授)
  • スプツニ子!氏(アーティスト/東京藝術大学 准教授/株式会社Cradle 代表取締役社長)
  • 原 一将(株式会社マクニカ 代表取締役社長)
  • 榊原 美紀(株式会社マクニカ 執行役員/ジェネラルカウンセル)

対談より概略のご紹介

■マクニカの DE&I の現状について

対談冒頭では、「個性や多様性を尊重することで、最大限のパフォーマンスを社員一人一人が発揮することができ、企業価値向上にもつながる」というマクニカのDE&I推進に対する考え方が改めて榊原役員より共有され、ハラスメントやLGBTQ、ジェンダーエクイティの研修など、マクニカがこれまで取り組んできたDE&I活動を振り返りました。

「ここ12年で急激にいろんな啓発・研修を行いましたが、元々マクニカのカルチャーが変化に強く成長意欲が高いということもあり、どんどん吸収して理解が進んでいっていると感じています」と榊原役員。

■DE&I の重要性について

入山さんからは、「なぜいま多様性が重要視されるのか」についてお話いただきました。

入山さん「僕自身はよく経営学者として、ダイバーシティはイノベーションのために不可欠という話をしています。イノベーションというのは離れた知見と知見の組み合わせで生まれるもの。その離れた知見を誰が持っているかというと、当然我々人間が持っているわけです。男性・女性、LGBTQの方、外国人の方、障害者の方など、バラバラな人間がいるほうが当然バラバラな知見が集まるので、会社がどんどんイノベーティブになって新しいことができる。これからの時代はイノベーションが起きないとしょうがないわけで、そういう意味でもダイバーシティは経営の本質として重要な課題です。」

新卒入社・中途入社満足度ランキング
出典:転職・就職のための情報プラットフォーム「Open Work」

マクニカでは、歴史的に見ても中途社員の割合が高く、社内でも中途社員と新卒社員の間の壁がないことで知られています(参考:OpenWork作成「新卒入社・中途入社満足度ランキング」。マクニカは新卒入社と中途入社の満足度差の小ささで1位を獲得)。特に中途社員に関しては、同業にこだわらず、様々な業種から採用しているため、多様性に対してはポテンシャルのある会社である、と原社長は語りました。
一方で、現実問題として社員の男女による職種の偏りや、管理職率について、当社でも課題視されています。理系企業で働く女性について、スプツニ子!さんから、日本女性の理系進学率に関するデータ等をもとに、現状分析していただきました。

OECD諸国の男女の大学・大学院進学率の差

スプツニ子!さん「先進国の中では、女性の大学と大学院の進学率が男性を上回っている国がほとんどですが、日本はいまだに女性の進学率が低いんですね。なぜかというと、残念ながら、女性は知的じゃないほうが良い、女性に理系は向かない、というバイアスがいまだに存在するためです。男性脳女性脳と言った考え方は科学的根拠がないという研究が出ている一方で、実際のデータでは日本の大学進学率は他国と比較するとこれだけの差がある。どこに違いが出るかと言うと、“社会”なんですね。社会のジェンダーギャップや思い込みの力はあなどれません。日本は自動車やテクノロジーで経済を立てる『理系の国』なので、理系女性の母数が増えないことは次の大きなネックになるだろうと思っています。」

■マクニカでさらなる DE&I を進めるために

次のパートでは、企業のDE&Iを促進するために具体的に意識すべきことについて、ゲストのお二人に伺いました。

入山さん

入山さん「僕は、日本で一番変わらなきゃいけないのは管理職だと思っています。多様性の高い組織というのは、多様な意見が出ることに価値があり、だからこそ会議が揉める。だから組織にとって重要なのは、旧来型の全会一致の会議ではなくて、ファシリテーションなんです。管理職の人たちは、自分に反対する意見や変わった意見が出てきても、カッとなってはいけない。『なるほど!』と言って、『みんなこういう考えはどう思う?』とみんなに返す。他の人の意見を引き出すのがこれからの管理職の仕事なんですよね。」


スプツニ子!さんからは、ご自身の所属する東京藝術大学での会議の事例から、「構造的な差別」について解説いただきました。「構造的な差別」とは、差別意識が当人達に全くなくても、社会や企業全体の構造の偏りによって、特定のジェンダーや人種、セクシュアティ、障がいなどの属性を持つ人にとって不利な状況が生まれ続けてしまうことを指します。

スプツニ子!さん

スプツニ子!さん「構造的な差別って、実は地味なズレが集まったもの。私は藝大で初めての女性教授だったのですが、2週間に1回ある教授会の開催時間が夕方5時~7時でした。これは私の保育園のお迎え時間と被っていて、時間を調整するのが大変だったんですが、結局会議の時間を変えてほしいと言うまで1年かかってしまいました。1年経って、実は・・・と切り出したところ、『全然気が付かなくてごめん、言ってくれてありがとう、調整しよう』と、すぐに午後2時からに変えて下さったんです。男性の教授陣の経験上、保育園のお迎えと会議が被っているという意識がなかっただけで、私を困らせようなんて全く考えていなかった。たまたま私と言うアンテナが入ったことでその視点が生まれたということなのです。会議時間の変更は、女性に限らず、これから入るかもしれない未来の男性教授たちにとっても働きやすくなったと思います。」

構造的差別というのは、自分が当事者ではないと気づかないことが多いので、社会や企業の働き方の構造自体に偏りがないかというのをしっかり点検して是正していくことが重要だと語りました。

入山さん、スプツニ子!さんのお話を受けて、実際にマクニカ社内で女性社員のヒアリング活動を行っている榊原役員は、「やっぱりこの社会の中で育ってきていると、急にはアンコンシャスバイアスの魔法が解けないというのはあります」と話しました。

榊原役員

榊原役員「マクニカという会社自体は男女や役職関係なく意見を言えたり、昇格したりといったカルチャーはあるものの、女性自身が自分はサポートタイプと決めつけてしまったり、会議では男性の偉い人が喋りがち…という様子は見られて、その辺の意識を変えるのはなかなか難しいなと思います。」

この傾向については、「グローバルで見ても、女性の方が男性と比べて自信を持ちづらい」「男性は打診されたポジションのスキルを60%しか満たしていなくても手を挙げ、女性は100%以上満たしていないと断ってしまう」というデータをスプツニ子!さんより共有いただきました。

具体的な対策方法として、入山さんがご提示くださったのは以下の3点。「上司が的確なフィードバックとポジティブな評価をする」「あなたならできると言ってあげる」「周りに成功例を作り、『あの人が出来るなら私にも出来るに違いない』と思わせる(代理経験)」マクニカも、これらの対策で社員のセルフエフィカシー(=自己効力感)を上げていくステージなのではないか、というご意見をいただきました。

■これからのマクニカに向けて

最後に、原社長がこれまでの対談の振り返りと、20244月から開始したマクニカの「新人事制度」に対する思いを語り、対談を締めくくりました。

原社長

原社長「皆さんの話を聞いていて、やはり重要なのは、一人一人が学習しアップデートしていくということに尽きると感じましたね。バイアスとは常にあるものと理解したうえで、いろんな人たちの話を聞いたりデータを学習することで考えや感覚をアップデートしていかなければ急激な環境変化に適応していけない。そのことを、こういったイベントなどの場を通して繰り返し伝えていくことが重要だと思いました。

その上で今回の新人事制度は、いかに構造的な差別を取り除いてオープン・フェアにしていけるかということが大きなポイントになっています。急激な環境変化の中でイノベーションを起こしていくためには、多様なフォーメーションで挑んでいく必要があり、我々自身をアップデートしていかなければいけない。そのためにも新人事制度は、社員全員が平等に挑戦の機会をもち、自らキャリアを作り上げていける環境を提供することで、皆さんがオープン・フェアにチャレンジできるものにしていきたいと思っています。」

第2部:女性社員によるパネルディスカッション

第2部:女性社員によるパネルディスカッション

2部では、様々なキャリアを持ってマクニカで活躍中の女性社員6名が登壇し、第1部の対談動画を参考に、自身の経験から「働き方の悩みや成功体験は?」「これからマクニカをどんな会社にしていきたい?」についてパネルディスカッション形式で深堀りしました。

登壇者からは、女性としてライフステージが変わっていく中で、「キャリアを諦めずに続けていけるのか」「先端技術を扱うマクニカで、育休取得等によりブランクを空けて復職するのは難しいのでは」といった率直な悩みや不安が投げかけられました。それに対し、先輩ママである他の登壇者から、復職した女性社員へのバックアップ体制が整っている部署の具体例がシェアされた他、変化するライフステージの中でも働きやすいと感じられる制度の提案などがなされました。

あっという間のディスカッションタイムは、立ち見も多く出て活況の中、「もう終わり?」「もっと聞きたい!」という観客の声とともに終了しました。

イベントアンケート結果

イベント後に実施したアンケートには153名が回答しました。

1部、第2部ともに「イベント参加の満足度(5点満点)」「観る前後での意識変化の有無」について回答を求めたところ、

・第1部では満足度が 4.37点、意識変化があったと回答した人が79%
・第2部では満足度が3.89点、意識変化があったと回答した人が51%

という結果でした。

各パートに対するフリーコメントでは、
「男性は6割程度の自信でも手を挙げるのなら、私も思い切ってチレンジしてみようかという気持ちになった。」「会社として社会の変化に迅速に対応していく姿勢に感化された。」「自分と同じ状況の社員を知ることで励みになった。」「このイベントを機に制度が改善されるといいなと感じた。」
といった前向きなコメントが多く寄せられ、特に女性社員からは「背中を押された」と多数のコメントがありました。

マクニカでは今後も積極的にDE&Iの推進と情報発信を行っていきます。