ISC West 2026に見る フィジカルセキュリティ技術トレンド
世界最大級のセキュリティ展示会 ISC West 2026(米・ラスベガス)には、29,000人以上の来場者と750社以上の出展社が集い、フィジカルセキュリティ分野における最新技術の展示と市場の方向性が紹介されました。
本記事では、個別ベンダーの製品紹介や優劣を論じるのではなく、「なぜ今、このような技術が求められているのか」「その変化は、警備・施設運用・経営にどのような影響を与えるのか」という視点から、ISC West 2026の技術トレンドを読み解きます。
マクニカは、セキュリティ業界のトップランナーであるサプライヤーとのコミュニケーションや業界を代表するイベントなどへの参加を通してグローバルな技術動向を整理し、国内市場にとって意味のある形で発信することで、フィジカルセキュリティ市場の活性化を目指しています。
ISC West 2026 概要
会期:2026年3月23日〜27日
会場:The Venetian Expo(Las Vegas)
規模:来場者 29,000人以上/出展社 750社以上/80か国以上から参加
主要テーマ:Physical Security / Cybersecurity / Digital Trust & Identity / AI / Access Control / Detection & Response
ISC Westは、単なる製品展示の場ではなく、今後数年のセキュリティ市場の潮流を読み解くための指標として、その重要性を年々高めています。
セキュリティ技術トレンド①
AI適用範囲の拡大(検知から判断・対応へ ― Agentic AI)
2026年における最も大きな変化は、AIの役割が「検知」から「判断・対応」へと拡張している点です。
・既存のカメラ、入退室管理、各種センサーとの連携
・ノイズを除去し、対応すべきインシデントを自動で抽出
・標準化されたワークフローによる対応の自動化・高速化
警備・監視の現場では、「検知はできるが、人手で対応しきれない」という課題が顕在化しています。その結果、判断や初動対応をAIが担う“Agentic AI”が、現実的な選択肢として語られるようになりました。
Agentic AIは先進的な機能ではなく、今後の警備・監視業務を成立させるための前提条件になりつつあります。
セキュリティ技術トレンド②
他社システムとの連携(オープン性/エコシステム)の加速
ISC West 2026では、単体完結型プロダクトの訴求は明らかに減少していました。
代わって前面に出ていたのは、以下のようなレイヤー横断の統合です。
・統合基盤(VMS/PSIM)による映像・非映像データの集約
・映像 × 入退室によるオペレーション全体の可視化
・AIによる運用自動化と対応フローの標準化
・AI解析機能の後付け・拡張を前提とした設計
VMSはもはや単なる「映像管理システム」ではなく、フィジカルセキュリティ全体を支えるOSとして位置づけられつつあります。
高度化する現場要件に対応するためには、個別最適な製品ではなく、統合と拡張を前提としたアーキテクチャ設計が不可欠であると言えます。
セキュリティ技術トレンド③
NVIDIA関連ソリューションの存在感拡大
AIの社会実装が進む中で、NVIDIAの技術スタックを前提としたソリューションの存在感が一段と高まっていました。
・規制対応を意識したAI学習用映像データ基盤
・GPU・エッジAI・Vision AIを活用した高性能映像解析
・クラウドからエッジへの処理回帰と分散処理
フィジカルセキュリティ分野においても、AIは「試すもの」から「安定して動かし続けるもの」へと位置づけが変わりつつあります。
今後はAIアルゴリズムだけでなく、AIを支える計算基盤・運用基盤の選択が競争力を左右します。
セキュリティ技術トレンド④
ロボット単体よりも「AIソフトウェア/統合/自動化」
ロボット単体の展示は限定的であり、民間施設における警備ロボットの本格普及は、依然としてハードルが高い状況です。
背景には、
・ROIが成立するユースケースの限定性
・物理的接触に伴う訴訟リスク(特に欧米)
・サイバーセキュリティ上の懸念
といった要因があります。
一方で、ロボットを含めた「AIソフトウェア × 統合 × 自動化」という文脈では、実用性の高い提案が増加していました。
ハード単体ではなく、システム全体として価値を提供できるかが重要な評価軸となっています。
セキュリティ技術トレンド⑤
クラウドを前面に押しつつ、主役はオンプレミス
多くのベンダーがクラウドサービスを強調していましたが、現実の主役は依然としてオンプレミス/エッジです。
・規制・コンプライアンス要件
・責任分界点の明確化
・リアルタイム性・レイテンシー要求
といった理由から、全面的なクラウド移行は進んでいません。
今後は、
・管理・分析・AIのみクラウド
・検知・制御はオンプレミス/エッジ
というハイブリッド構成が主流になると見られます。
理想論ではなく、現実の運用要件に即した構成選択が求められています。
今、向き合うべき本質的な問い
ISC West 2026の展示からは、次のような問いが浮かび上がります。
・人が担うべき業務と、AIに委ねるべき業務は整理できているか
・フィジカルセキュリティにおいて、システムが分断されていないか
・セキュリティ投資の価値を、経営視点で説明できているか
これらは、技術の話であると同時に、組織や経営の課題でもあります。
マクニカの取り組み
マクニカは、
・最先端のAI技術を的確に取り込みながら
・Genetecを中核とした統合ソリューションを基盤に
・警備会社との連携による現場への確実な実装を推進する
ことで、フィジカルセキュリティを起点とした社会課題・経営課題の解決に継続的に貢献していきます。
私たちは単なる製品提供者ではなく、フィジカルセキュリティの進化を「構造」と「現場」の両面から読み解き、市場にとって意味のある選択肢を提示し続ける存在でありたいと考えています。
今後もマクニカは、ISC Westをはじめとするグローバルな技術動向を踏まえ、価値ある情報を継続的に発信していきます。