「検査員を呼びたいのに、誰が空いているかわからない」
「一人ずつPHSで確認していたら、それだけで何分もかかってしまう」
現場で頻発するこのような「担当者を探す・待つ時間」は、工場の稼働率を低下させる大きな要因です。本記事では、大手製薬会社の工場で実際に導入された「BLEビーコンを活用した空き状況の見える化」で、検査員手配時間を数分→数秒へ短縮した事例をご紹介します。課題の背景からシステム構成、導入効果までを詳しく解説します。
「あの検査員、今どこにいる?」 製造現場の人探し問題
製造業の工場では、品質管理や設備保全のために「特定のスキルを持った人」が必要になる場面が多々あります。しかし、その人が今空いているかどうかがわからない。これは多くの工場が抱える共通の課題です。
具体的には、次のような状況が日常的に発生しています。
・設備がチョコ停(一時停止)したのに、保全担当者がどこにいるか分からず探し回っている。
・検査員を呼びたいのに、誰が空いているかわからない。
・PHSをかけても『ただいまライン対応中です』。次の担当者に連絡、またつながらない。
経済産業省の調査によれば、製造業の就業者数は過去20年間で約157万人減少(2002年~2021年)しており、限られた人員でいかに効率よく工場を運営するかが全ての製造業にとっての喫緊の課題となっています。
製薬会社K社での導入事例:相談から1ヶ月で実証実験システムを納入
【導入企業プロフィール】
| 業種 | 消費財メーカー(化粧品・日用品・食品・医薬品を幅広く展開) |
| 導入拠点 | 製薬工場の梱包・検査工程 |
| 従業員規模 | グループ全体で約2,000名規模 |
| 課題 | 検査員の空き状況がリアルタイムで把握できず、手配に時間がかかっていた |
直面していた課題:「PHSで検査員を一人ずつ探す」非効率
K社様は、化粧品・日用品・食品・医薬品などを手がける大手消費財メーカーです。同社の製薬工場では、梱包工程で検査員によるチェックが必要ですが、従来は「PHSで一人ずつ電話して空き状況を確認する」という運用でした。
この方法には、以下の構造的な問題がありました。
- 電話をかけても応答がないことが多く、次の検査員にかけ直す必要があった
- 複数回のかけ直しで、手が空いた検査員を見つけるまでに数分かかることがあった
- その間、製造ラインの工程が止まり、生産性が低下していた
- 検査員側も「電話に出られないだけで重要な検査が遅れる」状態が常態化していた
K社様の製造部門担当者は、「PHSで1人ずつ確認するのは限界があった。リアルタイムで全員のステータスが見えるような仕組みが欲しかった。」とおっしゃっていました。
IoTで解決:BLEビーコン×クラウドによる稼働見える化
仕組みはシンプルです。
- 検査員・保全員が、Bluetooth搭載の小型ボタン(BLEタグ)を携帯
- 「手が空いた」ときにボタンを押してステータスを変更(緑=空き、赤=対応不可)
- 各エリアのゲートウェイが信号を収集し、Webサーバーへ送信
- ライン側PCのブラウザアプリで、全員の空き状況をリアルタイム表示
ポイントは、インターネットを経由しない独立ネットワークを構築していることです。工場の情報が外部に出ないため、情報セキュリティ面でも安心です。製薬工場をはじめ、情報管理が厳格な業界でも導入しやすい設計になっています。
導入のポイントと成果
本ソリューションの導入により、以下の効果が得られました。
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項目 |
導入前 |
導入後 |
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検査員手配の方法 |
PHSで一人ずつ電話 |
画面で全員の空き状況を確認 |
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手配にかかる時間 |
数分(複数回のかけ直し) |
数秒(画面を見るだけ) |
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情報セキュリティ |
PHS通話(標準的) |
インターネット非経由の独立ネットワーク |
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相談から納入まで |
— |
約1ヶ月(HW+クラウド含む) |
相談から約1ヶ月で納入できた理由
本ソリューションは、ご相談いただいてから約1ヶ月という短期間で、ハードウェアもクラウドも含めた実証実験システムを納入しました。
それが可能だったのは、マクニカが「ものづくりコンサルティング(ものコン®)」として、半導体技術で培ったハードウェア設計・クラウド開発・システムインテグレーションをワンストップで提供できる体制を持っているからです。「該当する既製品がない」「センサーとクラウドをつなぐノウハウがない」といった課題にも柔軟に対応できます。
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手法 |
初期コスト |
リアルタイム性 |
セキュリティ |
導入期間 |
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PHS(現行) |
低 |
✖ |
標準 |
― |
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BLEビーコン(本ソリューション) |
中 |
◎ |
◎(独立ネットワーク) |
約1カ月 |
|
カメラ型AI |
高 |
◎ |
△(映像データ) |
3~6カ月 |
製薬工場だけじゃない、さまざまな現場への応用可能性
このソリューションは、「特定のスキルを持つ人材の稼働状況を、他のメンバーがリアルタイムで把握したい」というニーズがある場所ならば、業種を問わず展開できます。
▼ 業種別の活用シナリオ
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適用業種・現場 |
課題・ニーズ |
期待される効果 |
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各種製造工場・食品工場 |
人の目による品質検査が必要な工程での稼働管理 |
検査員の稼働状況リアルタイム把握で、呼び出し待ち時間を削減 |
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建設・土木作業現場 |
特殊資格・技能を持つ作業者の配置管理 |
現場監督や有資格者の在席確認を即座に実施 |
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農業施設・植物工場 |
少人数スタッフによる広域管理 |
大型施設内でのスタッフ位置・稼働状況の把握 |
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病院・介護施設 |
医師・看護師・介護士の対応状況管理 |
患者対応中/待機中のステータスをナースステーションで一元管理 |
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学習塾・教育施設 |
講師の授業対応・面談状況の共有 |
生徒の理解度ステータスをリアルタイムで講師が把握、授業の柔軟調整 |
よくある質問(FAQ)
Q. 導入費用の目安を教えてください。
A. 規模や対象人数により異なりますが、まずはPoC(概念実証)で実証実験から始めることが可能です。K社様の事例では、相談から約1ヶ月でハードウェアもクラウドも含めた実証実験システムを安価に実現しました。まずはお気軽にご相談ください。
Q. 工場のセキュリティ規定が厳しいのですが、導入できますか?
A. はい。本ソリューションはインターネットを経由しない独立ネットワークで構築しており、工場の情報が外部に出ることはありません。製薬工場のように情報管理が厳格な環境でも安心して導入いただけます。
Q. ITに不慣れな現場スタッフでも使えますか?
A. はい。保全者・検査員の操作は「ボタンを押す」だけです。専用アプリのインストールやスマートフォン操作は不要です。現場作業者側もWebブラウザでダッシュボードを閲覧するだけですので、ITリテラシーを問わず全員が利用できます。
Q. 導入にどのくらいの期間がかかりますか?
A. 小規模な実証実験であれば、約1ヶ月での納入実績があります。マクニカではハードウェア設計からクラウド開発までをワンストップで対応できるため、他社よりもスピーディーな納入が可能です。
まとめ:工場の人手不足をIoTで解決する第一歩
工場の人手不足は、単に「人を増やす」だけでは解決できません。今いる人員をいかに効率よく活用するかが鍵です。K社様の事例のように、「誰が空いているか」を見える化するだけで、現場の効率は劇的に変わります。
マクニカの「ものづくりコンサルティング(ものコン®)」では、お客様の課題に合わせたオーダーメイドのソリューションを、実証実験から本導入まで一気通貫でサポートします。
「うちの工場でも使えるか?」というご質問だけでもお気軽にご相談ください。