アイシン・エィ・ダブリュ株式会社様 AI活用事例
カーナビゲーションシステム評価工程における目視確認を、AIの活用により自働化
アイシン・エィ・ダブリュ株式会社は、品質至上主義の徹底・働き方改革の視点から、AI、IoT等の積極活用による定型業務の自働化を実施している。
上記取り組みとして、2018年よりAIを活用したナビ評価工程の自働化を推進。
人の目による確認をAIで補完するため、どのような評価項目でも異常検知可能な高精度AIの開発を進めている。
USER PROFILE
■企業情報:アイシン・エィ・ダブリュ株式会社
■事業内容:
「お客様へ感動を!」
“意のままに駆れる馬のようなクルマ”をつくりたい。“ドライバーの心を揺さぶるクルマ”をつくりたい。
という想いをもとに社会との調和を目指し、「お客様の新たな感動」に挑戦し続けているアイシン・エィ・ダブリュ株式会社。自動車に欠かすことのできないトランスミッションとカーナビゲーションシステムを軸に時代をリードする製品開発に取り組んでいる。
サマリー
背景
・品質確保期間の短納期化
・属人的な目視での品質評価
・テスターのノウハウ伝承
目的
・テスターの高負荷作業の軽減
・品質判断水準の一定化
課題
・適切なAI開発アプローチ
・データサイエンティスト不足
・AI判定根拠の説明性
取り組み
・AI開発アプローチの見直し
・可視化手法の調査と評価
・Deep Learningと従来手法を組み合わせた異常検知モデルの開発
背景
世界No.1ナビを創出し続けるために、業務効率化に取り組む
同社のナビ評価工程は、開発の最終工程であり、数十人体制でシステム評価を行っている。
エンドユーザと同等の利用環境を構築し、テスターがナビを操作し、目視確認を実施している。
特に描画異常の検出においては、描画異常のサイズの小ささや種類の多さなどにより、非常に高度な検出スキルが必要とされる。
そのため対応可能な人材が限られ、テスターの昼夜二直勤務など長時間の身体的な高負荷作業の解消、ノウハウの伝承などが課題とされている。
また自動車業界に限らず製造業全体において、商品の多様化、ライフサイクルの短期化による短納期生産が求められており、同社においても評価対象となるソフトウェアのリリース数は年々増加、また品質確保期間も非常に短納期化している。
そこで2018年より、AIを活用した評価工程の自働化にむけ取り組みを開始。
人の目による確認をAIで補完するため、どのような評価項目でも異常検知可能な高精度AIの開発を進めている。
ナビシステム評価環境
課題
進歩の早いAI業界における開発・検証・情報収集の難易度の高さ
信頼性評価項目の一つである“描画異常”に対する検出自働化にむけ、蓄積してきた画像データを分析し、異常検知モデルの開発に取り組んできた同社。
さまざまなアルゴリズムを活用し、検証を実施していく中で以下が課題となっていた。
- 適切なAI開発アプローチ
データの活用方法や使用するアルゴリズム等、AIモデル構築・検証におけるアプローチが適切かどうかを判断できない。 - データサイエンティスト不足
少数精鋭で取り組んでいるものの、技術の進化が早いため情報収集が追い付かない。 - AI判定根拠の説明性
さまざまな手法が存在する中で、どの手法を取り入れることが最適か選択することが難しい。
上記課題に対する取り組みを次項で紹介する。
取り組み
最適なアプローチと手段で、現実解を探る
同社は、CNNアルゴリズムをベースに、複数の高精度な異常検知モデルの自社開発・検証に取り組んでいる。
高い技術力により既に高精度なモデルを構築しているものの、開発した各モデルのパフォーマンスに差分があり、その検証に時間を要していた。
また、製造業で人工知能を積極的に活用していく上で必要となる「AI判定根拠の説明性」についても調査を進めていたが、膨大な情報の中から最適な手法を見つけ出すことに苦戦していた。
そこでマクニカをパートナーとして「精度検証」および「AI可視化手法検証」への取り組みを加速。
実務へ適用可能なモデルの開発を進めている。
マクニカのサポート内容
1.AI開発アプローチの見直し
はじめに、前提となるデータの信頼性から調査を開始。
学習・テストの正常・異常データを分析したところ、重複データが発見された。重複データによる過学習や、正確な汎化性検証ができていない可能性があることから、改めてデータの精査を実施。
再度AIモデルを構築し、検証を行った。
2.可視化手法の調査と評価
最新AIのトレンドや論文の調査を行っているAI Research & Innovation Hubにて、DNN(Deep Neural Network)が学習した内容を可視化する最先端ソリューションを調査。
可視化手法についてはさまざまな業界でニーズが高まってきているため論文数も非常に多く、また手法によっては判定根拠を正しく提示できないものが存在するなど、適切な手法を選択することが困難とされている。
今回、年間300件の論文を調査し国際学会にも定期参加しているAI Research & Innovation Hubで検討を進め、本案件に適すると考えられる手法「SHAP」を用いて検証を実施。
最先端論文で公開されているコードについては、Keras/Tensorflowを使用したものが多いため、手法を取り入れやすくするために、Chainerの書き換えも行った上で、SHAPによる説明性を検証。実務への適用可否の評価を実施した。
3.Deep Learningと従来手法を組み合わせたモデル構築
Deep Learningを活用したモデル構築とあわせて、オープンソースの画像処理ライブラリ「Open CV」を用いた異常検知についても検証を実施。
数値計算による判定を行う従来手法をDeep Learningモデルと併用することによって、説明性を確保することが容易となり、実務への適用メリットを生むと見込んだことが背景である。
Deep Learningモデルについては、さらなる精度の向上に取り組んでいる。
今後
目指しているのは、人×デジタルによるさらなる品質向上
今回の取り組みにより、Deep Learningモデルの検証・可視化手法を具体化し、あわせて従来手法を用いたモデルも構築した。
今後は、描画異常に加え、文字や音声などスコープを広げて自働化に取り組むことを検討している。
業務プロセスがデジタル化されていく未来を見据え人とデジタルの共存・協働による、さらなる品質向上と働き方改革をすすめていく。
音声波形解析の様子
※本文中に記載のある情報、および会社名は2019年12月時点のものです。
マクニカでは、企業の抱える課題を解決するため、現場に近いリサーチャーが最もふさわしいAI技術を組み合わせた知見を提供しています。
AI Research & Innovation Hub(ARIH)の詳細は下記よりご覧ください。