SiC FETの選択肢が増えたことで、コスト効率の高いソリューションの柔軟性が向上

なにごともバランスが大切で、それが決断を難しくしています。もしお金が絡んでいれば、別の次元の話になります。どのくらいの期間で回収できるのか?CO2排出量削減の価値は?CO2排出量の削減効果は?決定要因は主観的でダイナミックに変化するものかもしれませんが、EV用パワーコンバーターの設計で半導体を選択する場合は、もう少し科学的であってほしいものです。

賢明な選択をしてQorvoのワイドバンドギャップSiC FETの使用を決定した場合でも、トレードオフを考慮する必要があります。例えば、並列デバイスの数と定格、スイッチング周波数、動作モード、効率目標、許容可能なジャンクション温度の上昇、導通損失とスイッチング損失の配分、およびコストなどです。デバイスの選択しは外部条件により制約を受けます。例えば、電気自動車の充電器に使用される3.6kWのトーテムポール型力率改善ステージは、通常、400Vの電圧を発生し、60kHzで動作し、連続導通モードではインダクタのリップル電流が約20%になります。このような条件を考慮すると、750VのSiC FETを「高速」レグに使用することは、低損失であり、6mΩのオン抵抗まで利用可能な優れた選択肢となります。しかし現実には、コストが常に問題となります。

そのため、損失を一部犠牲にしても低コストの部品を使用することができるかを検討する必要があります。Qorvoでは、「FET-JET計算機」を使用して、この問題を簡単に評価することができます。幅広い電力変換トポロジーと動作条件から動作条件を選択することができ、さまざまなデバイスのスイッチング損失や導通損失、温度上昇を計算することができます。並列接続された部品の数を選択し、ヒートシンクの性能を指定することができます。

最も幅広い選択肢を提供するために、Qorvoは第4世代の750Vデバイスを拡張し、6~60mΩの合計8つのオン抵抗の製品を提供します。特定の条件でFET-JET計算機で計算すると、以下のようなプロットが得られ、興味深い結果が得られます。

18mΩのデバイス(UJ4C075018K4S)から23mΩのデバイス(UJ4C075023K4S)に変更しても、効率の低下は見られません。これは、導通損失が増加したものの、スイッチング損失がより減少したためです。しかし、デバイスのコストは20%ほど安くなっています。33mΩのデバイス(UJ4C075033K4S)は、効率は0.1%低下し、消費電力は36W増加しますが、スイッチのコストは40%以上削減できます。ジャンクション温度は、同じヒートシンクで約6℃上昇しますが、それでも約102℃にとどまります。60mΩのデバイス(UJ4C075060K4S)は、22Wの余分な損失と122℃のジャンクション温度というペナルティーがありますが、検討された中で最も優れたSiC FETの半分以下のコストです。デバイスの種類と温度上昇によるコストのトレードオフを考慮して、ヒートシンクの改善を検討することができますが、サイズと重量が増えることは、EVアプリケーションでは不利になります。

他にも、60mΩのタイプを2つ並列に並べると、総抵抗値が半分になり、スイッチングロスは増えますが、全体の熱抵抗は減るので、ジャンクション温度の上昇が抑えられ、温度依存性のオン抵抗の増加も抑えられるというオプションも考えられます。「FET-JET計算機」は、オン抵抗のレベルやヒートシンクのオプションを変えて、複数のデバイスを試してみることができます。最も損失の少ないデバイスとコストの高いデバイスの組み合わせにより、例えば水冷を廃止できるレベルまでヒートシンクを削減でき、スイッチの追加コストをはるかに上回るという転換点が見つかるかもしれません。

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