都市部にプロットされているモビリティのアイコン

モビリティ業界において世界的潮流となっているMaaS。国内でも、官民連携のもと各地で実証や実用化を図る動きが加速しており、公共交通をはじめとした従来のモビリティサービスに変化の兆しが見え始めている。

交通事業者をはじめ、多くの産業を巻き込む形で発展を遂げ始めたMaaS。この記事では、MaaSとは何かといった定義からレベル、課題、市場規模、事例に至るまでさまざまな情報を網羅し、MaaSの全貌に迫っていく。

MaaSとは

MaaSの定義

MaaSは「Mobility as a Service」の略で「マース」と読む。直訳すると「サービスとしてのモビリティ」となり、移動のサービス化を意味する。渋滞などの交通課題解決に向け、ITS(高度道路交通システム)を活用した新たな交通政策を進めるフィンランド政府の取り組みの中で2014年ごろに生まれた概念とされている。

定義としてはあいまいだが、広義には地域課題や交通課題の解決に向け、移動に利便性をもたらす取り組み全般を指す。2015年のITS世界会議を機に設立された公民連携機関「MaaS Alliance」は、MaaSを「さまざまな形式の移動サービスをオンデマンドでアクセス可能な単一のモビリティサービスに統合したもの」と説明しており、多くの場合、この定義に沿った意味で用いられている。

具体的には、自動車やバス、タクシー、鉄道といったさまざまな交通サービスを円滑に結び付け、移動にかかるコストや時間、労力などを低減していく取り組みで、複数の交通サービスを連携・統合し、特定エリアにおける移動全体のスマート化を図るイメージだ。

近年世界各地で開発や導入が進められているMaaSアプリは、こうして連携・統合された各移動サービスの検索や予約、決済などの機能を1つのアプリで利用できるようにしたものだ。

MaaSの構成要素

MaaSを構成する移動サービスは、バスやタクシー、鉄道、地下鉄といった公共性の高い交通サービスを主体に、カーシェアやサイクルシェア、レンタカー、ライドシェアなどあらゆるサービスが含まれる。

自動運転技術を活用した新サービスやパーソナルモビリティなど、将来導入を見込む移動サービスを交える形で実証を進めるケースもある。

また、近年では移動に異業種サービスを結び付ける形でMaaSを構成するケースが増加傾向にある。分かりやすい例としては、飲食業や観光業などが挙げられる。エリア内の飲食店や観光地などと移動を結び付け、MaaSアプリを介して割引クーポンを発行することで相乗効果を得る取り組みなどが各地で広がっている。

このほか、後述するが不動産や医療などと移動を結び付け、地域課題の解決や利便性の向上を図る取り組みも見られる。「移動」は社会生活において欠かすことができない行動であり、この移動に付加価値を見出すことで新たなビジネスを創出する取り組みは今後も拡大していくものと思われる。

元祖MaaSの「Whim」

MaaSアプリの代表例としては、フィンランドのMaaS Global(マース・グローバル)社が展開する「Whim(ウィム)」が挙げられる。「MaaS」という言葉の生みの親とされ、さまざまな移動サービスを高次元で統合している。本拠地ヘルシンキでは、各種公共交通やタクシー、シティバイク(電動自転車)、レンタカー、電動キックボードといった移動サービスを月定額で利用することができる。

MaaSアプリWhimのユーザー画面

MaaS Global社のMaaSアプリ「Whim」(出典:Whim

料金プランは複数用意されており、30日間で34.40ユーロ(約4,500円)の学生向けプランでは、30日分の公共交通チケットやシティバイクのシーズンパスなどが提供されている。タクシーなどは利用した分だけ別途課金される。

一方、30日間699ユーロ(約9万円)の無制限プランでは、公共交通やレンタカー、シティバイクがほぼ乗り放題で、タクシーも80回まで月額に含まれる。月額9万円は決して安いものではないが、自家用車を持つことなくエリア内を自由に移動することが可能になる。

MaaS Global社は、Whimをヘルシンキのほか同国のトゥルク、オーストリア(ウィーン)、英国(バーミンガム)、ベルギー(アントワープ)、シンガポールで展開している。日本でも三井不動産と提携し、同社がスマートシティ化などに取り組む千葉県柏市などで「マンション住民向け複数交通機関のサブスクリプションサービス」実証に導入されている。

MaaSのメリット

MaaSによってさまざまな移動サービスの利便性が向上することで自家用車への依存度が低下し、渋滞解消や排気ガスの減少による環境改善効果に高い期待が寄せられている。

特に渋滞が慢性化している都市部では、交通キャパシティそのものが飽和状態にあるため、利用者が集中する移動サービスに代わる交通手段を確立することで、個々の移動サービスの混雑緩和を図る取り組みも目立つ。また、大都市では土地も飽和状態となっているため、自家用車の減少が駐車場需要の減少につながり、土地のさらなる有効活用を図る可能性も出てきそうだ。

一方、地方では赤字が慢性化している公共交通が多く、事業に継続性を持たせることが大きな課題となっているが、MaaS導入によって効率的・効果的に住民の足を確保することが可能になる点に注目が集まっている。自家用車に依存せざるを得ない高齢者らの足を確保することで、安心安全な地域づくりにも貢献する。

また、観光地や商業地への交通手段を確保することで、地域経済活性化を図る取り組みも各地で進められている。

利用者ベースでは、移動サービスの向上が自家用車離れにつながっていくことで、今まで自家用車に向けられていた支出が各移動サービスや他の経済活動などに向けられていくことになる。近年、自動車メーカーが既存のビジネスモデルから脱却し、モビリティサービス分野に力を入れ始めているのも、こうした社会変化を見越した戦略と言える。

上空からの地方交通

MaaSにより渋滞の解消や排気ガスの減少、地方交通の拡充や地域経済の活性などの効果が期待される

MaaSのレベル

MaaSは、各移動サービスの連携・統合の深度によって5段階にレベル分けすることができる。スウェーデンのチャルマース工科大学の研究者が発表したもので、MaaS開発における指標として有用なことから、日本でも国土交通省などが採用している。

MaaSレベル

概要

0

統合なし

1

情報の統合

2

予約・決済の統合

3

サービス提供の統合

4

政策の統合

MaaSのレベル分け

レベル0は「統合なし」で、各移動サービスが統合されずばらばらにサービスを展開している段階を指す。現在の交通システムのほとんどがこれにあたる。

レベル1は「情報の統合」で、各移動サービスの料金や所要時間、時刻表、輸送エリア、距離などさまざまな情報を同一プラットフォーム上で統合した状態を指す。ジョルダンやナビタイムジャパンなどが手掛ける経路検索・乗換案内サービスなどがレベル1の代表例となる。

レベル2は「予約・決済の統合」で、同一プラットフォーム上で複数の移動サービスの検索をはじめ予約や決済も可能となる。例えば、A地点からB地点まで移動する際、MaaSアプリで経路を検索するとさまざまな移動サービスを交えた経路が提案されるが、その1つを選択すると、複数の移動サービスを組み合わせたまま予約や決済などができるようになるイメージだ。複数の移動サービスをワンストップで予約・決済することが可能となり、利便性が大幅に向上する。

レベル3は「サービス提供の統合」を指す。各移動サービスがプラットフォーム上で一元化され、1つのサービスとして扱われる段階となる。A地点からB地点まで移動する際、さまざまな移動サービスを組み合わせて経路を選択することができるが、いずれの手段を選択しても同一料金が適用されるなど、エリア内のすべての移動サービスが1つの事業者によって統合され、運営されているかのようなサービスが提供される。

個々の移動サービス単位の料金設定ではなく、移動する経路ごとに一括料金が提示されるイメージだ。この段階に達するとサブスクリプションサービスを導入することが可能となり、月定額でエリア内のさまざまな移動サービスを乗り放題にすることもできるようになる。Whimはこのレベルに相当する。

レベル4は「政策の統合」を指す。国や自治体、事業者らが都市計画や政策レベルで交通の在り方について協調していく段階となる。例えば、各移動サービスの乗り継ぎに必要となる交通結節点・ターミナルを再配置して利便性を高めたり、まちづくりと連動させる形で新たな商業地や住宅地を形成したりするなど、エリア全体の政策と結び付けた取り組みが行われることになる。

MaaSの市場規模

MaaS関連市場はすでに目に見えるレベルで右肩上がりを続けている。富士経済が2020年3月に発表したMaaS の国内市場調査結果によると、MaaS市場は2019年の8,673億円(見込み)から、2030年には2兆8,658億円まで成長すると予測している。

MaaSの国内市場規模の調査結果レポート

MaaSの国内市場規模の調査結果(出典:富士経済「MaaSの国内市場を調査」

個別のモビリティサービスでは、カーシェアが2019年見込み482億円から2030年に4,555億円、配車サービスが同3,110億円から同1兆2,000億円、レンタカーが同4,937億円から同1兆1,545億円など、それぞれ規模を拡大していくとしている。

また、カーシェア車両数は2019年の4万台から2030年に32万台、レンタカーも同38万台から同86万台へ増加し、乗用車全体に占める割合もカーシェアが同0.1%から同0.5%へ、レンタカーは同0.6%から同1.4%と数字を伸ばす見込みのようだ。自動車の所有から利用への流れを物語る予測と言えるだろう。

一方、英国を拠点とするコンサルティング企業のPwC(プライスウォーターハウスクーパース)は「デジタル自動車レポート2018」の中で、米国・欧州・中国におけるMaaS市場規模(オンデマンドシェアサービス)は2017年から2030年の間年平均25%で成長し、2017年の870億ドル(約9兆6,000億円)から1兆4,000億ドル(約155兆円)に到達すると予測している。

また、米コンサルティング企業のMarketsandMarketsが2020年に発表した予測によると、モビリティサービス市場は2020年の47億ドル(約5,000億円)から2030年までに704億ドル(約7兆4,400億円)に達するとしている。

米・欧・中におけるMaaS市場規模の予測

PwCのMaaS市場規模の予測(出典:PwC「デジタル自動車レポート2018」

2030年のグローバルでのMaaS市場規模の予測

MarketsandMarketsのMaaS市場規模の予測(出典:MarketsandMarkets

算出方法が異なるため額に大きな違いがあるものの、2020年代に10倍以上の規模に膨れ上がる予測は共通している。MaaSの観念が個々のモビリティサービスの成長を促し、また個々のモビリティサービスの進化がMaaSをいっそう発展させていくことになりそうだ。

MaaSの実現時期

国はMaaSをはじめとした新たなモビリティサービスの社会実装により移動課題の解決や地域活性化を目指す方針だ。各地域におけるMaaS構築を推進するため、国土交通省と経済産業省が2019年度に地域と企業の協働を促進するプロジェクト「スマートモビリティチャレンジ」を開始するなど、国を挙げた取り組みが全国各地で進められている。

官民ITS構想・ロードマップ2020によると、日本版MaaSの進展に向け、2022年度までにMaaSの事業モデル構築や普及に向けた基盤整備、関係者間のデータ連携の推進を図っていくこととしている。

特に、MaaSに必須となるデータ連携基盤の整備など協調領域に関しては、新しいモビリティサービスの実現に向けた交通関連データの利活用として、モビリティアーキテクチャの検討を2021年度までに行う。

日本版MaaS推進のロードマップ

日本版MaaSの推進、スマートシティとの連携に向けたデータ整備(出典:国土交通省「官民ITS構想・ロードマップ2020」

一方、国の未来投資会議の中で示された「令和2年度革新的事業活動に関する実行計画案」によると、2020年3月に策定した「MaaS関連データの連携に関するガイドライン」の周知を進め、ガイドラインに基づくアプリ・データ連携やAPI標準化の実証を2020年度中に進めるほか、2021年度にかけて交通事業者やサービス事業者との連携を容易にする共通データプラットフォームの実現に向けた検討や、オープンデータを活用した情報提供の本格実施を進めていく。

また、2025年度までの目標として、全ての都道府県で相互利用可能な交通ICカードの導入への取り組みを進めキャッシュレス化も促進していくこととしている。

すでに民間主導のMaaSやエリアごとに実証が進められているMaaSの一部は一定レベルの完成度に達している印象だが、事業モデルやデータ連携の在り方など各基盤が整備されることで、MaaS導入に本格着手する自治体などが飛躍的に増加する可能性が考えられる。

MaaSの事例

実証実験

国土交通省と経済産業省が2019年度に開始した、新しいモビリティサービスの社会実装を目指すプロジェクト「スマートモビリティチャレンジ」事業において、国土交通省の「新モビリティサービス推進事業」に19地域、経済産業省の「パイロット地域分析事業」に13地域の計28地域(重複4地域)が選定され、各地で実証が進められている。

2020年度には、地域の課題解決に資するMaaSのモデル構築を図る国土交通省の「日本版MaaS推進・支援事業」に38地域、経済産業省の「先進パイロット地域」に16地域がそれぞれ選定されており、MaaS実装に取り組む地域は拡大傾向にある。

2019年度新モビリティサービス推進事業では、茨城県つくば市が顔認証やアプリを活用したキャンパスMaaS、及び医療MaaSの実証実験を行っている。顔認証を可能とするサイネージポストを活用したバス乗降時のキャッシュレス決済の実証実験や、AI(人工知能)の利活用による人流予測・匿名化した移動実態調査などを実現するアプリの開発、バス乗降時の顔認証による病院受付や診療費会計処理サービスなど、モビリティサービスに新たな技術を組み合わせて利便性向上を図る取り組みを進めているようだ。

茨城県つくば市のMaaS実証実験の概要

茨城県つくば市のMaaS実証実験の概要(出典:国土交通省「先行モデル事業概要」

一方、群馬県前橋市は、自動運転バスを含む多くの交通モードを統合したMaaSアプリの開発を進めている。AIオンデマンド交通の導入や公共交通利用ポイントなどの付加価値創出を図り、2020年度もマイナンバーカード認証基盤との連携や商業分野・医療分野との連携、バスの等間隔運行や定額運賃の推進など、取り組みを拡大しているようだ。

京都府舞鶴市ではオムロンソーシアルソリューションズなどの協力のもと、公共交通の維持に向け、住民同士の助け合いによる送迎とバスやタクシーなど既存の公共交通を組み合わせた新しいMaaSの導入によって地域の足の維持を図る取り組みを進めている。

サービス

トヨタの「my route」

実用化が進んでいるMaaSアプリの代表格は、トヨタの「my route」だ。トヨタは2018年11月、西日本鉄道と福岡県福岡市で実証実験に着手し、1年後の2019年11月にJR九州を交え福岡市・北九州市で本格サービスを開始した。

その後も2020年に神奈川県横浜市、宮崎県宮崎市と日南市、福岡県糸島市、2021年に富山県富山市とサービスエリアの拡大を図っている。自動車メーカーが主導することによって全国各地が対象エリアとなり得る点が1つのポイントで、全国展開を明確に推進している唯一のMaaSだ。

各エリアで鉄道やバス、タクシー事業者、カーシェアなどの地域交通パートナーをそれぞれ交えるほか、JTBパブリッシングが提供する観光データベース「るるぶDATA」と連携するなどし、地域の観光情報の発信にも努めている。

スマートフォンとmy routeの機能アイコン

トヨタのMaaSアプリ「my route」(出典:my route

東急、JR東日本、伊豆急行の「Izuko」

東急、JR東日本、伊豆急行が展開する観光型MaaS「Izuko」も実証を重ね、質を高めたサービスの開発・提供に積極的に取り組んでいる。

各社は静岡県東部の伊豆エリアにおける観光型MaaSの本格実用化に向け、2019年4月1日からフェーズ1、同年12月からフェーズ2、2020年11月からフェーズ3と段階を区切って実証を進めており、交通デジタルフリーパスをはじめ、観光施設や飲食施設と連携したデジタルパスの発行など地域を巻き込みながらサービス強化を図っている。

フェーズ3では、静岡エリアや静岡空港までサービスエリアを拡大し、2日間有効のデジタルフリーパスを全16種類、観光商品のメニュー数も125種類まで拡大している。手まり寿司作りなどの観光体験も35メニュー用意するなど、オリジナルの体験コンテンツも開発し観光色を強めている印象だ。

小田急電鉄の「EMot」

小田急電鉄は2019年10月、オープンデータプラットフォーム「MaaS Japan」を活用したMaaSアプリ「EMot」をサービスインした。観光型MaaSや郊外型MaaSとして、東京・神奈川エリアや静岡箱根エリアでサービスを提供している。

デジタルチケットの販売をはじめ、代表者がまとめて購入したデジタルチケットを各利用者に渡すチケット譲渡機能や、AIを活用した旅のプランニング機能といった独自の機能を備えているのが特徴だ。

MaaSの課題

データ連携

さまざまなデータをデジタル化し、同一プラットフォームで結び付けるMaaSにおいては、データ連携が重要な地位を占める。MaaSに参加する交通事業者らは必要な情報・データをデジタル化し、同一プラットフォームで連携させていくことになるが、あらかじめデータ形式などを統一しておく必要がある。

また、自社情報の扱いに関してクローズな環境を望む事業者も少なくないようだ。情報が価値を生み出す時代において、安易にその価値を提供したくないといった考え方も理解できるが、MaaSはこうしたデータを共有することでその価値を膨らませることに意義がある。

データの規格化やオープン化を促進し、API連携を前提にプラットフォームを構築していくことが何よりも大事なのだ。

国土交通省は、MaaSに関連するプレイヤーがデータ連携を円滑に行うために留意すべき事項を整理した「MaaS関連データの連携に関するガイドライン」を策定している。全国各地でMaaSに取組む事業者が共通認識を持つことで、円滑なデータ連携が促進されることに期待される。

MaaS関連データの連携に関するガイドラインの概要説明

MaaS関連データの連携に関するガイドライン(出典:国土交通省「MaaS関連データの連携に関するガイドラインVer.2.0」

決済手段のデジタル化

スマートフォンなどで利用されることが前提となるMaaSでは、キャッシュレス決済対応も必然となる。スマートフォンで予約を行い、現金で決済するのは効率性を失うことになる。自動運転車であれば、柔軟に対応する車掌なども存在しない。

現状、キャッシュレス決済と現金決済を併用している移動サービスも多いが、これをキャッシュレス決済オンリーへと変えていく取り組みが必要だ。スマートフォンを持たない利用者に対しては、交通系ICカードの利用を前提とするなど強硬的に環境を変えていかなければ、いつまでたっても現金決済がつきまとうことになる。

交通機関の集約

MaaSにおいて最も基本となる要素だが、従来競合関係にある交通事業者をいかに取りまとめていくかも大きな課題となる。移動サービスを手掛ける仲間として、個々の移動サービスではなくエリア内の移動サービス総体としていかに利便性を高め利用者を増加させるか、全体最適化を図っていく考え方を浸透させていかなければならない。

MaaSが高度化すると、料金体系なども統一されることになるため、運命共同体としての意識を醸成していくほどの気概が求められるケースもありそうだ。

MaaSと自動運転

次世代を代表するモビリティサービスとして自動運転車への注目度も高まっている。海外では自動運転タクシーの実用化が始まり、国内でも自動運転バスの定路線運行がスタートするなど、現実のサービスとして社会実装は本格化し始めている。

自動運転技術を導入するメリットは、交通事故の減少のほかドライバーレスによるコスト削減効果などが挙げられる。ドライバーにかかる年間数百万円の人件費節約効果は大きく、特に地方における公共交通復活の起爆剤となる可能性がある。

また、自動運転車を移動サービスに導入することで、自動運転技術の進化に欠かせない大量のセンサーデータなどを収集・蓄積することも可能となる。導入されればされるほど収集できるデータ量も増加し、技術の進化につながる。そして進化した自動運転車がより高度なサービスを提供するといった具合に好循環を生み出す関係にあるのだ。

縦列する3台の自動運転バス

茨城県境町で定路線運行する自動運転バス

点群データと街の様子

自動運転のセンサーデータ

MaaSの分野

物流MaaS

MaaSの観念は、物流分野にも応用される。各輸送事業者が連携し、荷物や商品の配送効率化を図っていくイメージだ。

物流MaaS実現に向けた経済産業省の取り組みでは、2020年度に①トラックデータ連携の仕組み確立②見える化・混載による輸配送効率化③電動商用車活用・エネルギーマネジメントに係る検証を進めていくとしている。

①では、日本版FMS標準(車両運行管理に必要となるトラックデータの標準仕様)の活用が期待できるユースケースを検討し、複数商用車メーカーのトラックデータを連携する仕組みや運行管理データ項目の特定、形式などの標準API仕様の検討などを進めている。

②では、庫内の荷物量や空きスペースを見える化をはじめ、配送計画ルート上の積載効率変化も見える化し、輸配送効率化の検討などを行うこととしている。

このほか、同一車両で人の移動とモノの輸送を同時に行う貨客混載の取り組みなども各地で進められている。

物流MaaSの現状と課題や取組の方向性

物流MaaSの取り組み(出典:経済産業省「物流MaaS実証事業概要」

医療MaaS

MaaSと医療を結び付けた取り組みも増加傾向にあるようだ。長野県伊那市では、MONET Technologiesやフィリップス・ジャパンの協力のもと、ヘルスケアモビリティが患者のもとにやってくる「モバイルクリニック実証事業」を実施している。

また、静岡県浜松市では、往診患者を対象に移動診療車を用いたオンライン診療や、医師や薬剤師と連携したオンライン服薬指導などの取り組みに着手した。ドローンを活用した薬剤配送をはじめ、将来的にはウェルネスデータの蓄積や域外診療所との連携も図り、「医療を届ける」将来モデルの構築を進める構えだ。

ヘルスケアモビリティ車両の各種機能説明

ヘルスケアモビリティ車両の機能(出典:伊那市「モバイルクリニック実証事業」

不動産MaaS

不動産関連では、三井不動産がフィンランドのMaaS Globalと提携し、マンション居住向けのサブスクリプション型MaaSの実証に取り組んでいる。

また、日鉄興和不動産も分譲マンション向けのMaaS「FRECRU(フリクル)」の実証実験に着手しており、オンデマンドバスの運行などを実施している。

移動の利便性向上は、不動産の立地に対する価値に影響を及ぼす。マンションのほか、ニュータウンにおけるモビリティ導入など、不動産・ディベロッパー系によるMaaS実証も今後増加しそうだ。

小売りMaaS

三井不動産は、「移動商業店舗プロジェクト」を掲げ、移動販売車を活用した小売りMaaSにも取り組んでいる。自宅やオフィスなど身近な場所で買い物をできる機会や環境を提供し、新たな買い物体験の創出を図っていく構えのようだ。

一方、MONET Technologiesもスーパーマーケットなどと連携した小売りMaaSを自動運転車で実現するプロジェクトに着手している。

MaaSは人の移動だけではなく、移動目的となる医療や買い物などのサービスを移動させることも可能にするのだ。

最後に

すでに実用段階を迎えているMaaSだが、そのポテンシャルは高く、今後もより多くの交通事業者や産業を巻き込みながら拡大と進化を続けていきそうだ。

国や自治体を中心に各地で進められている実証がどのような成果を上げるのか。また、民間主導のMaaSがどのような発展を遂げるのか、要注目だ。

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