WELL認証とは?健康経営を証明し、企業価値を高める新指標

企業価値を向上させるために、健康経営や人的資本経営、ESG経営が不可欠となり、従業員が働きやすい環境づくりが重要になっています。「社員が安心して働ける環境をどのように構築すればよいのか」とお悩みの経営層や総務・人事部門の方、あるいは「自社が提供するオフィスの競争力を高めるには、どのような具体策があるのか」とお困りのデベロッパーの方は多いのではないでしょうか。

そこで、今注目を集めているのが「WELL認証」という、人の健康や快適さに配慮した建物の認証制度です。

WELL認証には、どのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、WELL認証の概要やメリットについて紹介します。

健康経営による企業価値の向上~WELL認証が求められる背景~

近年、企業では人手不足やSDGsへの対応が重要な課題となり、「人への投資」が求められています。その代表的な取り組みの1つが、経済産業省が推進する「健康経営」です。健康経営とは、企業が従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組むことです。従業員の健康に「投資」することは、職場の活性化や生産性向上、業績向上などにつながります。

健康経営が企業価値を高めることは、株価にも現れています。経済産業省は、健康経営に優れた企業の中から、「健康経営銘柄」や「健康経営優良法人」を選定しています。2023年度の健康経営銘柄に選定された企業の平均株価は、過去10年間にわたり、東証株価指数(TOPIX)を上回る推移を見せています(※1)。

人への投資が企業価値向上へ
出典:経済産業省「健康経営の推進について」

人は多くの時間を職場で過ごすため、働きやすい環境を整えることが健康経営の重要な要素です。そこで、働きやすい環境を示す国際的な指標として、WELL認証への注目度が高まっています。

WELL認証とは?~健康経営を示す建物認証で企業価値が高まる~

WELL認証(WELL Building Standard)とは、建物内で過ごす人の健康や快適さを重視した、建築物の認証制度です。2014年に米国のDelos社が開発しました。健康やウェルビーイング(身体的・精神的・社会的に良好な状態にあること)の観点から、建物や空間をさまざまな項目で審査し、その性能を評価します。WELL認証の取得は、働きやすい環境であることの客観的な証明となり、企業価値の向上につながります。

WELL認証は、米国や英国、中国などを中心に、世界で普及しています。国内でも、健康経営に取り組む企業が増えるにつれて、関心が高まっています。WELL認証を取得済みまたは審査中のプロジェクトの合計数は、2024年7月時点で、世界で約27,200件、国内は約200件に達しています(※2)。

WELL認証 プロジェクト件数の推移
出典:https://account.wellcertified.com/directories/projects

WELL認証の取得メリットとは?~企業価値の多角的な向上(健康経営から不動産価値まで)~

WELL認証の取得には、どのようなメリットがあるのでしょうか。代表的なものを紹介します。

健康経営による企業価値向上

近年の投資家は、SDGsESG経営を重視しています。WELL認証を取得することで、企業のSDGsESG経営への姿勢を具体的に示せるため、投資家に対して効果的なアピールが可能です。また、経済産業省の「健康経営銘柄」や「健康経営優良法人」の指定に向けて、取り組みの信頼性を高めることができます。

従業員の健康促進

快適な職場環境を整えることで、従業員の健康が促進され、生産性向上が見込まれます。また、健康に配慮する企業であることは、人材確保や離職率の減少に有効です。就職活動を行う学生とその親を対象にした調査によると、就職先に望む勤務条件として「従業員の健康や働き方への配慮」が高い支持を集めています(※3)。WELL認証の取得によって、企業の魅力が高まり、優秀な人材の確保が期待できます。

不動産価値の向上

環境認証を取得することで、不動産の評価が向上します。国土交通省が公表している資料によると、環境認証を取得した中規模オフィスビルは、未取得のビルに比べて10%近くも新規成約賃料が高いという分析もあります(※4)。WELL認証の取得は、自社の所有する不動産の価値向上や、テナント募集における優位性につながります。

Green Buildingの評価システム WELL認証導入のメリット
出典:2022 Green Building Japan.

WELL認証を取得するには?~企業価値を高める健康経営を実践~

WELL認証には、どのような種類があり、評価項目や審査方法はどのように構成されているのでしょうか。ここでは、その概要を紹介します。

WELL認証の種類~企業価値を高めるには「ゴールド」 「プラチナ」を狙う~

■WELL認証の認証タイプ
 WELL認証には、2種類の認証タイプがあり、建物の用途に合わせて選択できます。
  ・WELL Certification:建物全体が対象。主に自社ビル向け
  ・WELL Core Certification:共用部や管理室が対象。主にテナントビル向け

■WELL認証の認証レベル
 
WELL認証には、以下の4種類の認証レベルがあります。
  ・プラチナ
  ・ゴールド
  ・シルバー
  ・ブロンズ

国内では、認証を取得したプロジェクトの90%がゴールド以上を取得しています(2024年2月時点)(※5)。

WELL認証の取得要件~健康経営を10のコンセプトで実現~

■WELL認証の評価項目
 WELL認証の評価項目は、以下の10個のコンセプトに分かれています。
  ・空気
  ・水
  ・栄養
  ・光
  ・運動
  ・温熱快適性
  ・音
  ・材料
  ・心
  ・コミュニティ

■WELL認証の取得要件
 それぞれのコンセプトについて、必須項目と加点項目があります。認証取得には、すべての必須項目を満たさなくてはなりません。
 加点項目の得点に応じて、認証レベルが決まります。
  ・プラチナ:80点以上
  ・ゴールド:60~79点
  ・シルバー:50~59点
  ・ブロンズ:40~49点

■WELL認証の審査方法
 書類審査と現地審査があります。現地審査では、空気質・水質・光・音・温熱快適性などの測定が行われます。

WELL認証の取得要件~健康経営を10のコンセプトで実現~

WELL認証と「空気質」~企業価値向上のための最新要件とは~

WELL認証を取得するために重要なのが「空気質」です。116の評価項目のうち、14項目が「空気」に関連しています。

特に、最新バージョンの「WELL v2」では、一部の要件が厳しくなりました。以前は、オフィスの什器の交換や換気システムの導入といった新たな設備投資を避けて認証を取得することが可能でした。しかし、現在は、高い認証レベルを目指すのであれば、そうした回避策が使えない可能性が高まっています。

そのため、これからゴールド認証やプラチナ認証を取得するには、「空気」の加点項目で確実に得点しなくてはなりません。高精度な空気質モニタリングを行い、空気の状態やさまざまな成分を監視することが求められます。

マクニカでは、空気質モニタリングソリューション「AiryQonnect(エアリーコネクト)」を提供しています。
AiryQonnectは、WELL認証で求められる高精度な空気質モニタリングはもちろん、加点項目である「空気質モニタリングと認識(A08)」、「温熱快適性の監視(T06)」などにも対応可能です。

2024年5月に「WELL Core」のプラチナレベルの本認証を取得した「麻布台ヒルズ 森JPタワー」(港区麻布台1)(※6)など、国内の認証取得プロジェクトにてAiryQonnectが多く採用されています。

麻布台ヒルズの空気質モニタリングについて、詳しくは以下のプレスリリースをご参照ください。
KDDIとマクニカ、麻布台ヒルズのWELL認証取得を支援、空気質のモニタリングソリューションを提供~快適なオフィス空間を提供し、働く人の健康・快適性をサポート~

まとめ

今回は、国際的に関心が高まっている「WELL認証」について紹介しました。WELL認証の取得は、「健康経営」の客観的な証明となり、企業価値の向上に有効です。
WELL認証において、「空気」は重要な評価項目です。ゴールド以上の認証を取得するためには、空気質モニタリングを行い、確実に得点することが不可欠です。
マクニカが提供する空気質モニタリングソリューション「AiryQonnect」は、WELL認証の厳格な精度要件に対応しています。WELL認証に必要な空気質モニタリングを実現できます。

■参照資料:
(※1)経済産業省 商務・サービスグループ ヘルスケア産業課「健康経営の推進について(令和6年3月)」(経済産業省)
    https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/240328kenkoukeieigaiyou.pdf , (参照2024-08-09
(※2International WELL Building InstituteWELL Projects」(International WELL Building Institute
    https://account.wellcertified.com/directories/projects , (参照2024-07-31
(※3)株式会社日本総合研究所「平成28年度健康寿命延伸産業創出推進事業(健康経営・健康投資普及推進等事業)調査報告書(平成293月)」
   (経済産業省)
    https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/H28_houkokusyo_kenkoukeiei.pdf , (参照2024-08-09
(※4)環境不動産普及促進検討委員会・株式会社ザイマックス不動産総合研究所 吉田淳 大西順一郎「環境マネジメントの経済性分析
   (2015716日)」(国土交通省 環境不動産普及促進検討委員会資料)
    https://www.mlit.go.jp/common/001206929.pdf , (参照2024-08-09
(※5Green Building JapanWELLとは」(一般社団法人グリーンビルディングジャパン)
    https://www.gbj.or.jp/well/about_well/ , (参照2024-08-09
(※6)森ビル株式会社「『麻布台ヒルズ 森JPタワー』『虎ノ門ヒルズ ステーションタワー』『JAKARTA MORI TOWER』が
    『WELL Core』で最高ランクのプラチナ本認証を取得」(森ビル株式会社2024527日ニュースリリース)
    https://www.mori.co.jp/company/press/release/2024/05/20240527120000004681.html , (参照2024-08-09) 

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