AIをビジネス活用する企業のリーダーが必ず持っている知識とは

2019年10月9日~11日に開催された、日経xTECH EXPO 2019人工知能ビジネスAI2019内のディープラーニングパビリオンに「NVIDIA/マクニカ」ブースを出展し、NVIDIA DGXシリーズとAIインフラ環境構築支援について展示を行いました。ブースにお立ち寄りいただいたお客様のほとんどが、AIへの関心をお持ちで、ビジネスへ取り込む方法について真剣に検討されている印象が強かったです。

来場者アンケート結果でも、今話題のテーマの展示が同時開催される中、「AI(人工知能)・ディープラーニング」への関心がある方は来場者の70%以上で、もっとも高い結果だったようです。

 

一方で、AIへの期待は高いのですが、具体的な活用イメージをお持ちでいない方も多く、我々もまずはAIやディープラーニングを活用した事例やその技術の背景からお話する場面が多く見られました。今回は「AIをビジネス活用する企業のリーダーが必ず持っている知識とは」と題して、本格的にビジネスへAIの活用を検討されている方に知っていただきたい基礎知識をご紹介します。

AI・機械学習・ディープラーニングとは

AIとは、人工的に人間の知能を模倣するための概念および技術のことを指します。1950年代に概念が提唱され、特定の問題に対してコンピューターによって解を提示できるようになりました。ただし、明確に定義されたルールの中、すなわち人によって作られたアルゴリズムがないと解を求めることはできませんでした。

 

機械学習とは、人間が経験し学習することを機械で実現する技術のことを指します。つまり、機械が入力された大量の情報(=データ)を解析し、そのデータからルール、判断基準などを見つけ出し、未知のデータに対して予測(推論)を行うことです。ただし、学習の過程の「データの特徴を見つける」工程をコンピューターにさせると、不安定でエラーを起こしやすく、その結果、人間の手で特徴抽出のための条件を設定する必要がありました。

 

ディープラーニング(深層学習)とは、人が介在することなく機械が自動的にデータの特徴量を抽出するディープニューラルネットワーク(人工ニューロンと呼ばれる人間の神経細胞を模した構造を何層も重ね合わせたネットワーク)を用いた学習のことです。つまり、ディープラーニングでは機械学習における特徴量抽出の工程を、コンピューター自ら習得することが可能になりました。

 

ここ数年、大量のデータを収集するIoT(Internet of Things)と、そのデータを処理する演算能力の高いGPU(Graphic Processor Unit)が普及し、さらに機械学習のアルゴリズムの進化が進み、これらの要因がディープラーニングの進化を加速させ、昨今では画像認識分野においては人の目を超えたとも言われております。

 

AIの定義と歴史を詳しく知りたいかたはこちらの記事をご覧ください。

https://lab.fujiele.co.jp/articles/4857/

AI・機械学習・ディープラーニングとは

AI技術をビジネスへどう活用するか

機械学習を活用した例では、購入履歴と顧客情報を組み合わせて、興味がありそうな顧客層へ商品を推奨し、購入を促すようなリコメンデーションシステムがあります。また閲覧した記事・ニュースなどのデータから興味や好みを見つけ、オススメの記事を表示するような機能などマーケティング分野での活用があげられます。

 

ディープラーニングを活用した例では、製造現場での生産、組立、検査または設備の保守管理など、これまで人の五感に頼っていた工程を、ディープラーニングを搭載したロボットに置き換えることが可能となりました。製造現場での一つのタスク/工程での小さな改善は、年単位に換算すると非常に大きな利益につながります。その改善で得られた貴重な人的リソースは、より付加価値の高い工程へシフトする取り組みが世界でも広まっています。

また、顔認証技術も高度化し、人物の動画や遠く離れた人の写真からでも人の特徴を判別できるようになりました。マスクやサングラスをしていても指名手配犯を見つけ出したり、性別や年齢の属性を推測し、そのデータをマーケティングに活用したりと、あらゆる場面での活用が期待されています。

AIで何を解決したいのか、目標を設定することから始める

AIを活用にするにあたって最も需要なのがAI技術によって何を実現し、どんな課題を解決したいのか、という目標設定が重要となります。「AIを導入したら、人の手を借りずにこんなこともあんなことも簡単に実現できる」わけではありません。具体的なビジネスの課題をAIの技術を活用していかに解決できるのか道筋を立てる必要があります。

「AIにさせたいこと」を具体的に実現するものは「AIモデル」です。AIモデルができるまでにはいくつかの工程があり、専門的なエンジニアスキルが求められます。

核となるAIモデルができるまで

機械学習では膨大なデータから、特徴を見つけて、識別するための法則を見つけ出します。この法則を「学習モデル」と呼びます。学習モデルは入力値から出力値を導き出す、いわばAIの頭脳となります。学習モデルの生成には、大量の学習用データを使って演算を行います。

 

また、この学習モデルは一度作れば完成というわけではありません。精度を上げるためには、学習モデルに入力するデータも重要となります。どのようなデータをどのくらい数準備し、人手が介在する必要のあるパラメーターを調整し、学習モデルの作成を何度も繰り返します。加えて、1つの学習モデルだけであるタスクを実行する場合もありますが、実際には複数の学習モデルを組み合わせて、最終的な課題を解決する「AIモデル」を開発します。

 

このようにAIモデルができて初めて、「AIにさせたいこと」が実現できるようになるのです。

AI導入・AI開発ってすぐ始められるの?

AI導入・開発は、企画、検証/本開発、運用と大きく分けて3つのフェーズに分けられます。先ほどもご説明した通り、まず導入・開発を始めるにあたり重要となる作業は、目標設定とAIモデル開発の準備です。

AI導入・開発の流れ

目標設定は、社内の課題を抽出しビジネスにAI技術をどう活用するか議論する場があれば進められます。一方AIモデル開発をすぐに始めたくても、学習のためのデータが無ければ始められず、またそのAI開発をするための環境がなければ何もできません。ここからはAI開発のために必要な環境を、どのように準備すべきか、あらかじめ知っておくと助かる賢い備え方についてご紹介します。

AI開発に必要な環境

必要な環境は、ハードウェア、ソフトウェアと2つに分けられます。AI開発には膨大なデータを取り扱うため高速処理が必須となりますので、ハードウェアとしてはGPU(Graphic Processor Unit)と呼ばれる高速演算処理用のプロセッサーが必要となります。そのGPUは性能によって価格が大きく異なりますので、ご自身の環境にあうGPUを選定する必要があります。

一方ソフトウェアの開発環境としてはAIモデル開発に欠かせないフレームワークやライブラリーを入手したり、昨今は環境が一式簡単に揃うコンテナ技術を活用した開発が盛んになっており、この辺りの専門知識を習得し、環境を構築しておく必要があります。

 

AI開発を進めたいのに開発環境が敷居となり、いつまでたっても開発に着手できないという事態をさけるためには、必要な環境をそれぞれに合わせて用意してくれるサービスを活用することが賢い選択と言えます。

 

近年、開発する環境はクラウドやハウジングサービスを活用するなど、要望や用途に応じた様々な選択肢が増えました。しかし、以下の例に心当たりがある企業は自社(オンプレミス)でAI開発のための環境をご用意されることを検討されているかと思います。

 

■学習用データを外部に開示できない

■学習させる度にデータを移動させると開発効率が悪い

■クラウド利用に制限がかかっている

いざ!AI開発を始めよう

本記事ではAI導入・AI開発を始める前に知っていただきたいことをご紹介しましたがいかがでしたでしょうか。

AIをビジネスに活用したいと感じられて、今すぐ自社のエンジニアに始めさせたい、自分たちで始めたいという方にとって、環境構築がボトルネックになることがあります。続く記事では初心者向けのAI開発環境の作り方をご紹介します。

 

AI学習環境の構築サービスもおこなっています

マクニカではAI開発に必要なGPUの販売だけでなく、すぐ開発に着手していただけるよう環境を構築する支援サービスをおこなっています。 AI開発を始められるにあたり何かお困りのことがあれば、お気軽にお問い合わせください。

お問い合わせはこちら