ニューヨーク市街を走行する鉄道

新型コロナウイルスが猛威を振るい始めてから早半年以上が経過し、テレワークの定常化等ニューノーマルという言葉も定着しつつある状況かと思いますが、皆様いかがお過ごしでしょうか?

マクニカ イノベーション戦略事業本部 モビリティソリューション事業部では、「自動運転」というキーワードを切り口にビジネスを構築していますが、コロナウイルスの影響を受け、モビリティの自動化に対する需要は一部増加傾向にあることも感じています。自動車の自動運転化の動きも目立ちますが、鉄道や建設機械など自動車以外のモビリティの自動化も開発が加速しています。また、モビリティに限らず、セキュリティ用途などにも自動運転向けに開発された技術の転用が進んでおります。

本コラムでは、「自動運転」をキーワードに開発されたテクノロジーが、自動車以外のユースケースやマーケットにおいてどのように活用されているのか、連載コラムとしてご紹介していきます。今回は、連載コラム第1弾として、鉄道業界向けに弊社が提供するテクノロジーについてご紹介します。

鉄道業界向け自動運転関連ソリューション

鉄道業界向けのテクノロジーとしては、下記4つのカテゴリに分類されます。早速、それぞれの特徴についてみていきましょう。

鉄道業界向けテクノロジーの4分類

前方監視センサーソリューション

自動運転を実現するためには、周辺の物体の正確な検出、認識が必要不可欠となっており、そのために必要になる3Dセンサーの開発が加速していますが、このような3Dセンサーの鉄道への転用が進んでいます。鉄道において、特に前方監視の自動化が重要な研究課題となっています。この時にいかに長距離で物体を検出できるかということが重要になってきますが、上記ご要望に対し、弊社としてはLiDAR+ステレオカメラのご提案をしています。


Baraja(LiDAR)とITD Lab(ステレオカメラ)は代表的なセンサー製品となりますが、お客様のご要望に応じて、最適なセンサーの組み合わせをご提案します。また、検出だけでなく、検出した物体が人なのか、自転車なのかなどの物体認識のアルゴリズムも必要に応じて開発が可能となっておりますので、ご興味ございましたら、ぜひお問合せください。

BarajaのLiDAR製品

BarajaのLiDAR

ITD Labのステレオカメラ製品

ITD Labのステレオカメラ

プラットフォーム、踏切等の監視ソリューション

プラットフォームや踏切などの「監視」について、現状ではカメラの活用が一般的ですが、これらの監視用途にLiDARが活用されるケースが増えてきています。LiDARをセキュリティ用途に活用するメリットとして、下記項目を挙げることができます。

①正確な行動データが取得可能
・一定のエリアへの侵入者等の認識、カウントが可能
・トラッキングする人物の軌跡を分析可能
②光の影響をほぼ受けないため、夜間など光がない環境でも設置が可能
③顔等は捉えることができないので、プライバシーの保護が可能

LiDARとアルゴリズムによる監視ソリューション
提供: Ouster & Seoul Robotics

例えば、上記はスーパーマーケットの入り口にLiDARを設置し、何人が入店しているのかカウントするアルゴリズムを構築した例になります。また、それぞれの歩行者がどのような軌跡をたどっているのかも緑の線で表しています。
弊社ではこのようなアルゴリズムとLiDARをセットにてご提案しています。

自動運転プラットフォーム向けソリューション

ECU

鉄道向けECUも年々進化しています。その背景はドメインECU、統合ECU、デジタルコックビット、自動運転ECUなどECUに対してより複雑、マルチな機能が要求されるためです。特にAIの普及により、NVIDIAをはじめ、GPUなど並列処理を得意とするアーキテクチャもECUに実装する必要が出てきました。しかし、NVIDIAなど半導体ベンダーは、チップの供給は行いますが、量産グレード対応のECUの提供をしていません。つまり、鉄道メーカーはNVIDIAからチップを調達し、自力でECUを起こす必要があるため、莫大な開発費をかかります。また、かなり複雑の基板実装になるため、高度な製造技術が必要になります。

弊社ではQuanta computerの鉄道向け量産対応製品を提供することで、開発コスト及び開発期間の大幅な削減を支援します。Quanta computer製品はASIL D, AEC-Q100量産・車載グレード、温度範囲-40度から85度まで対応、さらに鉄道向けのカスタム品質対応も検討可能です。

OS

鉄道機器は何十年にもわたって高い信頼性・安全性を担保して動作しなければなりませんが、現代の鉄道コックピットシステムはますます複雑、かつ高度になり、適切な動作だけではなくサイバー攻撃への対処という新しいリスクへの対応も求められています。こうした事象に対応するため、今後ますます試験や認証取得の負担が増加することが予想されます。こうした現代の鉄道コクピットの課題を解決するのが、高い信頼性と安全性を担保したQNX社のリアルタイムOSです。

進化する技術に対応する適切な機能安全規格の認証を取得することは膨大な労力を要する作業で、機能安全と適切な認証の取得はプロジェクトの成功を決定する最も重要な要素の一つです。Linux®で構築された安全性が要求される鉄道機器の認証は、多くの開発者が予想しているよりもはるかに困難です。一般的には、機能安全認証の要件があるプロジェクトは、機能安全認証の要件がないプロジェクトの2倍から3倍の時間がかかると言われています。そのため、認証活動に投資する労力は、通常の開発に比べてはるかに大きくなることが多くあります。また、多くの企業ではOSを含むレガシーな自作コンポーネントを持っていますが、ほとんどの場合、これらの自社開発コンポーネントの認証にかかるコストは、規模の経済性を理由に、QNXのような事前認証済みのソリューションの価格を上回ることになります。

これらの課題を解決するために、QNX® OS for Safety は、IEC 61508 や市場固有の規格といった各種機能安全規格に準拠し、かつ実績のある信頼性の高い技術をベースとしてシステム全体のリスクを低減するよう特別に設計されています。

管理資産可視化ソリューション

鉄道では乗車されているお客様や貨物の情報に加え、天候や踏切を渡る車、さらにはセキュリティのための防犯カメラの映像といったように様々なデータが存在し、情報管理が煩雑になり迅速な状況把握を難しくしています。そこで、様々な場所に点在する情報/データを一元化し、インタラクティブなマップ上でリアルタイムに表示すことができるGIS(Geographic Information System/地理情報システム)プラットフォームというソリューションをご紹介します。

 GISプラットフォームには大きく3つの機能があります。1つ目は天候、線路、貨物、監視カメラの情報、車、列車の運行情報など、様々な公共データを可視化できる機能。2つ目は事前に条件や環境を設定し、マップ上や電子メールでの通知を行えるアラート機能。最後にレンダリングや高速シナリオ構築のためのVMS(video management system)を活用することにより、数分から数日単位のデータを保存・再生することができます。

GISプラットフォームのシステム構成

GISプラットフォーム

これにより、不足の事態が発生した場合などにおいても、可視化されたマップから列車やお客様、各拠点の状況などがどのような影響を受けるのか予測・確認できます。そして、情報管理工数の削減やリアルタイムな状況把握が可能になり、迅速かつ適切な意思決定や施策が実施できるようになります。

オンラインセミナーのご案内

マクニカでは本コラムに関連するオンラインセミナーの開催を予定しています。鉄道業界における自動運転技術のトレンドやソリューションについてご紹介しますので、ぜひお気軽にお申込み、ご参加ください。

鉄道業界の革新を加速する マクニカの自動運転ソリューション
~鉄道業界における「自動運転」向けテクノロジーの活用について~

【日時】2020年9月9日(水)10:00~11:00
【参加】オンライン(無料/Zoom利用)
【概要】
LiDARやステレオカメラ等の3Dセンサ、検出・認識アルゴリズム、ECU、OSに至るまで、「自動運転」をキーワードに進化するテクノロジーが鉄道業界に活用されるケースが多くなってきています。本セミナーでは車両前方監視、プラットフォームや踏切監視、車両運転自動化、管理資産可視化等、ユースケースごとに最適なソリューションをご紹介します。

 

最後に、これらのように「自動運転」をキーワードに開発されたテクノロジーが、鉄道業界でも様々なのユースケースにおいて活用されていることがご理解いただけたかと思います。弊社では、今度も自動運転関連技術の活用について、お客様にとって最適なソリューションを提供していきます。本コラムにてご紹介した製品やサービスに関するご質問やご興味がございましたら、お気軽にお問い合わせください。