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EV化やゾーンアーキテクチャ化が進む車載電源設計では、配線長の増加や短絡時エネルギーの増大、診断要求の高度化などにより、従来のヒューズでは遮断精度や再現性、診断性の面で対応が難しいケースが増えています。

本記事では、車載eFuseとヒューズとの基礎の技術的な違いに加え、I²tに基づくワイヤー熱保護の考え方、ならびにインフィニオン社のPROFET Wire Guardが車載電源設計にもたらす具体的な設計上のメリットについて、技術者視点で解説します。

eFuseとは?

eFuseElectronic Fuse)は、半導体スイッチと保護ロジックにより、過電流・短絡・(IC内部の)過熱などの異常を検出して出力を制御し、負荷や配線を保護するデバイスです。従来のヒューズが「溶断」による受動保護であるのに対し、eFuseは電流モニタリング、電流制限(方式は製品により異なる)、短絡時の遮断、再投入(リトライ)や診断出力などの機能を備え、遮断条件や状態を設計・把握しやすい点が特長です。

特に車載分野では、ゾーンアーキテクチャ化やEV化に伴う配電の複雑化に加え、機能安全の観点で診断・故障検出の要求が高まっていること、また遠隔診断・サービス性向上のニーズから、eFuseを用いた配電保護への置き換えが進みつつあります。

ヒューズとeFuseの違い

従来のヒューズは、過電流が流れると内部エレメントが発熱し、物理的に溶断することで回路を保護する受動部品です。構造がシンプルで低コストというメリットがありますが、一度溶断すると交換が必要であり、遮断までの電流やエネルギーを細かく制御することはできません。

一方、eFuse(電子ヒューズ)は半導体デバイスを用いて電流を監視し、過電流や短絡を検出すると能動的に電流制限や高速遮断を行います。リセットが可能で、電流値やエネルギー(I²t)を制御できるほか、診断情報を出力できる点が大きな特長です。

項目 従来のヒューズ eFuse
保護方式 溶断(熱) 電子制御
応答時間 msオーダー μsオーダー
リセット
診断
過電流閾値の変更
I2t特性の変更
メリット

低コスト

シンプルな構成

長年の実績

高速な保護

診断・リセット機能

エネルギー制御が可能

デメリット

交換が必要

診断が不可

ワイヤー最適化が困難

回路設計が必要

部品のコストが高め

簡単な比較表でまとめていますが、つまり、ヒューズは「溶けて守る」受動保護、eFuseは「監視して制御する」能動保護、という点が本質的な違いです。

インフィニオン社では長年のIPDの開発と実績のノウハウを踏襲し、eFuseのPROFET™ Wire Guardシリーズをラインナップとして拡充しています。

PROFET™ Wire Guardの特長

PROFET™ Wire Guardは、ワイヤーハーネスを高精度に保護するために、I²tベースのワイヤー保護機能と調整可能な過電流保護機能を組み合わせたインテリジェントなeFuseです。

1. 外付け抵抗で選択可能な I²tワイヤー保護機能

本デバイスは、外付け抵抗により選択可能な 6種類のI²t保護曲線 を備えており、ワイヤー径に応じた熱特性を模擬した保護制御を実現します。これにより、ワイヤーに加わる熱ストレスを正確に監視し、あらかじめ設定された臨界しきい値に達すると自動的にスイッチを遮断します。

また、ワイヤー温度の低下に応じて再アクティブ化が可能なため、ヒューズのような物理交換が不要になります。

加えて、保護機能はハードウェアで動作するため、マイクロコントローラ(µC)の制御なしでも利用でき、開発・検証負荷の低減やワイヤーハーネスの軽量化・コスト削減に貢献します。

2. 低消費電流の自動IDLEモード

PROFET™ Wire Guardは、負荷電流が一定条件を満たすと自動的にIDLEモードへ移行し、消費電流を約50µA(標準)まで低減します。このモードでも出力はアクティブ状態を維持し、電源供給と保護機能を継続します。負荷電流が増加すると自動的に通常モードへ復帰し、IDLピンを通じてマイクロコントローラへ状態を通知するため、パーキング時などの低消費電力運用に適しています。

3. シーケンシャル診断による高度なモニタリング

シーケンシャル診断機能により、一本のアナログ電流センス出力を介して様々なデバイス状態を読み出すことができます。

電流値、故障状態、I²t設定やステータス、過電流設定などの情報を取得でき、電源管理やシステム監視の高度化を支援し、これにより、電源配分の最適化やフェイルオペレーショナルアーキテクチャにおける安全設計をサポートします。

4. 外付け抵抗による調整可能な過電流保護

過電流閾値(OCT)は外付け抵抗によって設定可能で、公称電流から最大過電流レベルの範囲で調整できます。これにより、システム要件に合わせた柔軟な過電流保護設計が可能になります。また、高速な故障検出と電源ラインからの迅速な障害隔離により、電源系統を高い故障電流から保護します。

5. 容量性負荷スイッチング(CLS)機能

容量性負荷スイッチング(CLS:Capacitive Load Switching)モードにより、大容量入力コンデンサを持つ負荷でも突入電流による過電流保護を誤作動させることなく安全に起動できます。突入電流を抑制しながらコンデンサを充電できるため、システム電源へのストレスを低減し、外部プリチャージ回路が不要となるため、部品点数削減やPCB面積の削減にも貢献します。

製品ラインナップ

PROFET™ Wire Guardシリーズは、6種類のラインナップを取り揃えております。一部の製品のパッケージを共通化することにより、スペックをアップグレード、ダウングレードしてもピンコンパチでご検討が可能です。

Product IL Nominal Current
@Ta=85°C [A]
I²t Protection (A) RDS(on) Infineon Package name
BTG70008A-1ESW 36.5A 5 - 20A 0.9mΩ PG-TSDSO-24
BTG70013A-1ESW 26.6A 5 - 20A 1.5mΩ PG-TSDSO-24
BTG70020A-1ESW 21.5A 14.1 - 23.9A 2.2mΩ PG-TSDSO-24
BTG7003A-1EPW 15.7A 10.3 - 17.4A 3.6mΩ PG-TSDSO-14
BTG7007A-1EPW 10.3A 6.7 - 11.4A 8.0mΩ PG-TSDSO-14
BTG7016A-1EPW 6.8A 4.4 - 7.5A 18.0mΩ PG-TSDSO-14

開発環境

インフィニオン社では各製品の性能をすぐに確認できる評価ボードをご用意しております。

Motherboard

Daughterboard

μIO-Stick

まとめ

従来ヒューズは「電流値」で選定する受動部品ですが、PROFET™ Wire Guardは「エネルギー」で守る能動制御デバイスです。ゾーンECU化・EV化・高機能化が進む現代車両において、保護デバイスも進化が求められています。

ゾーンアーキテクチャ・EV化・機能安全要求が高まる中、配電保護も進化が求められています。PROFET™ Wire Guardは、軽量化、診断高度化、安全設計簡素化、サービス性向上を同時に実現する次世代ワイヤー保護ソリューションです。是非一度、PROFET™ Wire Guardをご検討ください。

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