なぜ組み込みシステムにNANDフラッシュメモリーが注目されるのか、その理由と実装の注意点(1)

はじめに

高機能化する組み込みシステムに大容量のメモリーが求められるようになり、NORフラッシュメモリーからNANDフラッシュメモリーの置き換えが始まっています。組み込みシステムでシリアルNANDフラッシュメモリーが選ばれ始めた理由と実装時の注意点を、ウィンボンドの「W25N01GVZEIT」を例に解説します。

転換期を迎えた組み込みシステム向け不揮発メモリーのトレンド

近年、組み込みシステムに実装されるソフトウェアが急激に大規模化しています。IoTを背景として、これに必要不可欠なネットワーク接続機能、高精細なGUI、さらには音声/画像認識をはじめとしたAIの導入などが主な理由です。従って、組み込みシステムのソフトウェアが格納される不揮発メモリーには、さらなる大容量化が求められています。その結果、NORフラッシュメモリーからNANDフラッシュメモリーへ置き換える動きが始まっています。

組み込みシステムでNANDフラッシュメモリーを使う場合、これまではパラレルインターフェースのONFI(Open NAND Flash Interface)に準拠したONFI NANDフラッシュメモリーが一般的でした。しかし、最近ではMCU/SoCの内部にONFIインタフェースが搭載されていないものもあります。

この場合、eMMCが候補に挙がりますが、一般的に、ローエンド/ミドルエンドモデルのMCU/SoCはeMMCインターフェースが搭載されていない製品もあり接続できないことがあります。また、eMMCは複数のチップをパッケージ化して構成する都合上、ONFI NANDフラッシュメモリーと比較して価格や消費電力が高くなります。従って、eMMCは組み込みシステム向けに最適化されているとはいえません。

そこで今、注目されているのがシリアルNANDフラッシュメモリーです。写真1に示すのは、ウィンボンドのシリアルNANDフラッシュメモリー「W25N01GVZEIT」です。インターフェースはSPIに準拠しており、ピン数は8個と少なく、パッケージは8×6mmと小型です。

シリアルNANDフラッシュメモリーは、eMMCと異なりコントローラーICが実装されていません。従って、シリアルNANDフラッシュメモリーを使いこなすには、ECC(Error Checking & Correction)、Bad Blockといった処理をMCU/SoC側で行う必要があります。ここではシリアルNANDフラッシュメモリーの使い方を解説します。

シリアルNANDフラッシュメモリーが組み込みシステムに最適な3つの理由

図1に示すのは、ウィンボンドのフラッシュメモリー製品における仕様の比較です。他のフラッシュメモリー製品と比較することで、シリアルNANDフラッシュメモリーが近頃の組み込みシステムに最適な理由を見てみましょう。

1. 8ピン8×6MMの少ピン小サイズ・パッケージ

組み込みシステムにおいて大容量の不揮発メモリーが必要な場合、これまではONFI NANDフラッシュメモリーを使うことが一般的でした。しかし、ONFI NANDフラッシュメモリーの標準パッケージは20×12mmのTSOPパッケージで、ピン数が48本であり、部品の実装面積が厳しく制限された組み込みシステムには向いていません。図2に示すように、シリアルNANDフラッシュメモリーは、8×6mmのWSONパッケージで、ピン数は8本と小型です。

2. 最大52MB/Sの高速読み出し

シリアルNANDフラッシュメモリーは、ONFI NANDフラッシュメモリーと異なり、高速読出しを行うための仕組みが実装されています。ウィンボンドのシリアルNANDフラッシュメモリー「W25N01GVZEIT」は最大で104MHzのクロックで動作させることができます。また、4本の信号線を使ってデータの読書きを行うQuad SPI動作も可能です。さらに、指定アドレスを一度入力すると最終アドレスまで自動でデータの読み出しを行うことで、コマンドとアドレスの入力回数を減らすContinuous Readという仕組みも実装されています。図3に示すように、これら全てを併用することで、最大52MB/sのスループットを実現可能です。

3. ECCと不良ブロック管理補助機能を搭載

シリアルNANDフラッシュメモリーとシリアルNORフラッシュメモリーを比較すると、読み書きのコマンドシーケンスなど細かな差異はありますが、容量以外に大きな差異はありません。これは、シリアルNORフラッシュメモリーからシリアルNANDフラッシュメモリーへの置き換えができるように互換性を持たせた仕様となっているためです。

しかし、NANDフラッシュメモリーを正しく使いこなすには、ビットエラーの検出と訂正(ECC)、不良ブロックの検出と管理といった処理が必要です。ウィンボンドのシリアルNANDフラッシュメモリー「W25N01GVZEIT」は、ハードウェアロジックによるECCを搭載しており、ビットエラーの心配がありません。また、不良ブロックのアドレスを管理するための専用不揮発領域を持っており、NANDフラッシュメモリーを安心して使うための機能が実装されています。

ビットエラーと不良ブロックは、NORフラッシュメモリーでは発生せず、NANDフラッシュメモリー特有の現象です。

次の記事では、それぞれどのような現象なのか、どう対策すればよいのかを解説します。

関連リンクはこちら

お問い合わせ / お見積もり

本製品に関してご質問、サンプル、見積もりなどのご要望がございましたら以下より問い合わせください。

Winbond メーカー情報Topに戻る

Winbondのメーカー情報Top ページに戻りたい方は以下をクリックください。